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2017年4月17日更新
[GW特集]|妖怪街歩き ヒンヤリスポットを訪ねて
今年もやってくる、ゴールデンウィーク!! いつもよりも思い切ったお出かけを計画してみませんか? 県内のトレッキングスポットや公園、工場見学、リフレッシュも兼ねた温浴施設、番外編まで?!、親子で出かけられるスポットのご紹介します。
伝統的な幽霊スポット 美栄橋 潮渡橋
「飴買い幽霊」の伝説8月上旬、暑さ厳しい中、那覇市前島、若狭周辺にあるユーリー(幽霊)処を訪れた。案内人はボーダーインクの編集者、新城和博さん(53)。今月上旬に同社から発刊したばかりの新書「琉球怪談作家、マジムン・パラダイスを行く」(小原猛・著)を携えて、那覇の「妖怪」街歩きがスタート!
初めは沖縄の伝統的な幽霊スポットの中でも有名な「七つ墓」へ。
伝承によると「七つ墓」とは、ゆいレール美栄橋駅の目の前にある木々に覆われた岩山で、墓が7基あることがその名の由来という。内容は次の通り。
「昔、七つ墓近くの商店に飴を買う女性が現れ、毎晩この女性は商店に飴を買いに訪れるようになった。不審に思った主人が後をつけてみると、女性は墓の中へと入って行った。驚きつつも店主が墓の中に入ると、女性の遺体とその横で飴をなめる赤ん坊の姿があった」。
恐怖より親の子に対する思いが込められたどこかホッとする話だ。
似たような話は全国各地にある。「七つ墓周辺の美栄橋や久茂地には実際お菓子や線香を売るマチヤグヮー(雑貨店)もあったそうで日本から伝わった幽霊話がうまくはまったのでは」と新城さんは推測する。
かつて那覇は“浮島”と呼ばれる小島で港から首里への交通は不便を極めた。王府は1451年、現在の安里から久茂地付近を結ぶ海中道路、長虹堤(ちょうこうてい)を築造。美栄橋はその道路にかかる橋の一つ。つまり七つ墓の岩山は海岸線に連なる岩礁だったことが伺える。
勇気を出して「仲西へーい」
長虹堤ができたことで潮の流れが変わり、美栄橋より西側の海は干潟になったという。那覇市若狭付近だ。古い地図を見ると確かに干潟を示している。そこにポツンと橋の地図記号。この橋の名は潮渡橋(しおわたりばし)。現在では国道58号が通る交通の要所だ。
その潮渡橋には「仲西へーい」なるマジムンが現れるとされている。名前からするとおおらかな響きだが、同書によると「潮渡橋で『仲西へーい』と叫ぶと神隠しに合う」という恐ろしげな伝承が残されている。しかし仲西へーいの正体、姿、由来などは、はっきりしない。
新城さんは「橋は隣町へ渡る重要な場所。人の往来はあるが普段は寂しい場所だった。同時に橋の向こうは異界の地とも考えられてきた。なので橋のたもとには“幽霊”が立つんです」と笑う。美栄橋と潮渡橋に伝わる幽霊話。新城さんの言葉の説得力は十分だ。
【七つ墓】ゆいレール美栄橋駅から七つ墓を眺める。にぎやかな街中にポツンと存在する森が不気味さを際立てている
資料を片手に「ユーリー処」を案内する新城さん。「不思議な話は橋や海岸線など境界線に伝わっていることが多い」と語る
【潮渡橋】「仲西へ―い」と叫ぶ新城さん。無事が確認されているのでご心配なく
マジムンに会えるかも? 若狭・辻
街歩きはさらに幽霊や妖怪の伝承が残る若狭・辻界わいへ向かう。潮渡橋から西へ徒歩5分の所にある「夫婦瀬(ミートゥージ)公園」。園内にある大きな岩=下写真=は前述の通り、この辺りが海だったことを物語っている。
ここには幽霊が出るわけではないが「このあたりで自ら命を絶つ人は少なくないそうです」と新城さんは険しい表情を見せた。
次に辻へと歩を進め、「唐守森(トゥーマムイ)」を目指す。かつて空手の達人、鄭大夫(ていたいふ)が住んでいた場所だ=下写真。ここにもある伝承が残っている。
同書の中でこう説明されている。
「ある夜、外から自分の名前を呼ぶ声がする。鄭大夫が外に出てみると赤い目をした巨大な牛が攻撃してきた。鄭大夫はその牛の角を持ち岩に押し付け、膠着状態のまま朝を迎えた。朝日に照らされたのは巨大な牛ではなく、葬儀の際に死人を運ぶガン(御輿のようなもの)であった」。
牛マジムンと呼ばれ、ガンの供養をおろそかにすると現れる。唐守森の近くに、「ガンヤー」というガンの安置場所があり、古くから幽霊スポットとされていたようである。
新城さんは「辻にはジュリ(遊女)や豚など、数多くのマジムン話があり、まさにマジムンパラダイス」と語る。
今回、美栄橋から若狭、辻へと新城さんの案内で歩いてきた。幽霊処はもちろん、かつての海岸線や町の歴史、成り立ちなども学ぶことができた。幽霊処を知ることはかつての町の姿を知ることでもあった。
【夫婦瀬公園】伝承では、仲の悪い夫婦を心配した村人が当時、沖合にあったこの岩の上に夫婦を置き去りにし仲直りさせたという
【唐守森】
伝統的な幽霊スポット案内人・新城和博さん
数々の県産本を出版するボーダーインク(那覇市)の編集者
編 集/伊東一洋・高良蘭(トラべローグ)・編集部
『週刊ほーむぷらざ』沖縄をあそぼう・第1519号 2016年8月25日掲載