泡瀬パラダイス 沖縄の春はアーサ色 |新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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新城和博

2020年3月9日更新

泡瀬パラダイス 沖縄の春はアーサ色 |新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.69|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。


泡瀬パラダイス  沖縄の春はアーサ色
 
例のウイルスのために、とっても楽しみにしていた台北行きを断念した。もちろん台湾が危ないのではなく、感染が拡大している日本(沖縄だけどね)からの旅行というということで、台湾の知り合いから、「どちらかというと今回は断念したほうがいいと思います」という連絡をもらったのだ。しかたない、しかたない。
楽しみにしていたパーシャクラブのライブも、去年から予約していたのに、このウイルスのため中止になっちゃった。ライブハウスが悪いわけでもない。しょうがない、しょうがない。しょうがないのよ、春なのに……。
しかしこう連続して楽しみにしていたことがなくなると、納得していても、なんだが鬱々(うつうつ)してしまい、旅行を断念した週末、やーぐまい(家籠もり)してした。しかし外はいい天気で、感染症のことさえなければ、とってもいい春の一日なのだ。ぼくたちは、人混みをさけて、窓をあけたまま車を走らせて東海岸へ向かった。


何度も通った東海岸のドライブコース。でもあまりなじみのないのが中城湾。いつもは眺めているだけの海岸沿いに車を停めてみた。静かな住宅地のすぐそばの、準開放性の海岸線。干潮らしく、だいぶ沖の方まで浅瀬になって、干上がったイノー(礁池)が見渡せる。浜辺近くには、アーサの養殖のための網が張られて、緑の畑といった案配だ。
しばらく散歩すると、入り江の先にちょっとした奇岩をみつけた。沖縄の海岸近くによくあるキノコ型の岩だけど、小さな島のような存在感。靴の底をぬらしつつ近づくと、風化してなめらかな岩肌に、いい案配の穴があり、ちょっとしたベンチのようである。しばく座って沖を眺める。あとで調べてみたらちゃんと名前がついていて、なんと「豆腐島」というのだ。確かに少し離れてみたらそんなかたちをしていた。



そこからもう少し先の、泡瀬の防波堤まで車を走らせた。泡瀬干潟は埋め立て工事がずっと続いていて、ここを通るたび複雑な気持ちで、車窓ごしに沖合の風景を眺めていた。今日は、まだ行ったことのない防波堤の先の、その先まで歩いてみよう。
通信施設のフェンス越し続く防波堤は、泡瀬の端っこをぐるりとまわっている。静かにふたり歩いていくと、少しずつ街の気配は遠のく。潮干狩りをしている人たちの姿も見えるのだが、蜃気楼(しんきろう)のように遠くの風景だ。それほど泡瀬の海は、びっくりするくらい遠くまで干潟が広がっていた。それもびっしりと緑色なのである。春の海藻の緑だ。海藻はじつに不思議な繁殖をするのだけれど、陸上の我々はほとんどそのことに気がつかない。実は沖縄の海辺の環境を支えているのである(という『沖縄の海藻と海草ものがたり』当間武著という本を去年編集したばかりだったのだ)。

陸と海の境界線から眺める幻想的ともいえる光景に、ぼくは思わず「ここはパラダイスか」とつぶやいた。そうだ、どこにも行けないぼくたちがたどり着いたのは、「泡瀬パラダイス」だったのだ。

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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