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2020年6月18日更新

読んで、見て、聴いて 平和を考える

6月23日日は、戦後75年目の「慰霊の日」。そこで、本や映画、音楽、それぞれの分野を熟知する3人におすすめの3作品をピックアップしてもらった。読んで、見て、聴いて、戦争や平和について考えてみませんか。

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歴史紡ぐ映画・本・歌 じっくり向き合って


 貴重な映像でつづる歴史的ドキュメンタリー。戦争の愚かさ、醜さを浮き彫りにするノンフィクション。平和の尊さを考えさせられる歌詞とメロディー。各分野のエキスパートがイチオシの作品を紹介します。

【映画】


桜坂劇場
下地久美子さん(40)


映画は感情の記録

第二次世界大戦がなぜ起こり、沖縄がなぜ戦争に巻き込まれたのか…。戦争の背景や本質を知ることができる秀作として「東京裁判」はおすすめ。恋愛を通して戦争の残酷さを描くのは「ラスト、コーション」。大戦中、日本と中国の争いに翻弄された男女の悲恋に涙するはずです。親子で鑑賞するなら「ホテルハイビスカス」。沖縄を舞台にたくましく生きる家族の日常を明るく描きながら、同時に今も残る戦争の残骸を冷静に映し出します。
 
ことし戦後75年目の慰霊の日を迎えますが、戦争体験者が減る中、当時の記録や記憶を残すという意味で映画はとてもいい素材。映画は感情・気持ちを伝えることが大きな役割。歴史の中で生じた感情を後世の人間も共有できるのは、素晴らしいと思います。

 東京裁判 


©講談社2018

日本の戦後の運命を決定づけた極東国際軍事裁判・通称「東京裁判」の全貌が描かれた4時間半にも及ぶ歴史的ドキュメンタリー。戦争責任の所在や国家と個人の関係、勝者が敗者を裁くことの限界など、さまざまな問題を当時の貴重な映像とともに浮き彫りにする。8月1日(土)より桜坂劇場で公開予定。

 ラスト、コーション 


©2007 HAISHANG FILMS

第二次世界大戦中、日本軍の占領下となっていた香港と上海が舞台。抗日組織に身を投じる美しき女スパイ、ワンは、弾圧側のスパイ組織のボス、イーの暗殺をもくろみ色じかけで接近、彼の心をつかむことに成功する。見せかけであったはずの彼らの恋愛がいつしか本物の恋愛に…。

 ホテルハイビスカス 


©2002「ホテル・ハイビスカス」パートナーズ

沖縄を舞台にホテルを営む一家の日常の悲喜こもごもを描いた作品。小学3年生の美恵子は、元気いっぱいの女の子で、森の精霊キジムナーを探すため冒険を続けていく…。ファンタジーの中に沖縄の基地問題や戦争の傷跡などの社会問題をそこはかとなく盛り込んだ奥の深い仕上がり。

※上記の紹介作はDVD化され、CDショップやレンタルショップなどで購入・レンタルできる


【書籍】


㈲ボーダーインク
新城和博さん(57)


戦争の実相 後世に継承

「『艦砲ぬ喰ぇー残さー』物語」は、僕が編集で携わった思い入れのある作品。沖縄戦を生き延びた人たちの心境を歌った曲を巡る話で、その歌詞には当時の厳しい情勢が感じ取れる。歌の誕生が忘れてはならない歴史の継承になっている。「アウシュヴィッツの図書係」は、希望を与える本の力を改めて感じさせられる感動作。「世界の果てのこどもたち」は戦時中の満州で出会った少女たちの物語で、戦後史を体感し人の優しさとは何かを問う感涙作。

戦争経験者が減る中、戦争の愚かさを後世に残し伝える物語や小説など本の力はますます重要になってくると思います。なぜなら事実を踏まえ、調べ尽くさなければ、読む人にうまく伝わらないから。本や表現ってすごく大切だと改めて感じます。
 

 艦砲ぬ喰ぇー残さー」物語 


仲松昌次著
ボーダーインク
1600円(税別)


「艦砲ぬ喰ぇー残さー(私たちはみんな艦砲射撃の食い残し)」は、沖縄民謡4姉妹「でいご娘」が歌う「艦砲の歌」のワンフレーズ。作詞作曲した父・比嘉恒敏さんは、米軍が起こした交通事故で命を奪われたが、歌は「希望をつなぐ歌」として歌われ続けている。沖縄・昭和の名曲を巡るノン・フィクション作。


 アウシュヴィッツの図書係 


アントニオ・G.イトゥルベ著、小原京子訳
集英社
2200円(税別)


極限状態の中でも、本を通して生きる希望を見いだす少女の生きざまを描く事実に基づいた作品。 アウシュヴィッツ強制収容所に囚人たちによりひっそりと作られた秘密の図書館。その図書係に指名されたのは14歳の少女ディタ。本の所持が禁じられる中、少女は命の危険も顧みず、本を隠し持つ…。


 世界の果てのこどもたち 


中脇初枝著
講談社
840円(税別)


戦時中、高知県から満州にやってきた珠子、朝鮮人の美子、恵まれた家庭で育った茉莉。年の近い3人は、あることをきっかけに友情で結ばれる。世界情勢をよそにともに遊び、一つのおむすびを分け合った。だが、そんな日々は日本の敗戦であっけなく終わり…。


【音楽】


タワーレコード那覇リウボウ店
屋良朝三さん(47)

歌通し考える平和

若い世代におすすめなのは、今回取り上げたモンゴル800とHYのアルバム。戦争を知らない彼らが同世代に向けた、平和へのメッセージを込めた曲が収録されていて、当時のことを風化させてはいけないという思いが伝わってきます。個人的に好きなのは、レーズン(さだまさしと吉田政美によるフォークデュオ)のアルバムの1曲「あと1マイル」。戦場で死んだ恋人からの手紙について歌った曲で、ストーリー性があり歌詞の行間から想像をかきたてられます。自分の好きなアーティストのアルバムを聴いていたら、戦争や平和について歌った曲に出合い、考えさせられた。ふとそんな体験ができるのも音楽の魅力だと思います。


 People People 


MONGOL800
TISSUE FREAK RECORDS
「himeyuri~ひめゆりの詩~」ほか12曲を収録


 STORY~HY BEST~ 


HY
ユニバーサルミュージック
「時をこえ」など30曲をセレクトしたベストアルバム


 あの頃について~シーズン・オブ・レーズン~ 


レーズン
ユーキャン
「あと1マイル」をはじめ10曲を収録


【こんな本もおすすめ!】

 風刺マンガで読み解く 米軍占領下の沖縄 


大城冝武著
沖縄タイムス社
2000円(税別)

専門の歴史家による緻密な分析や論考では弾かれたり、こぼれたりする米軍施政下の沖縄の歴史の真実を風刺マンガとともにまとめた一冊。激動の1950年代の政治、大衆運動、世相を当時の風刺画と資料を駆使して論じる。戦前・戦後の沖縄マンガの流れを知ることができ、戦後の激動とその時代を生きた人々の肉声に迫っている。


『週刊ほ〜むぷらざ』エンタメ・映画情報
第1715号 2020年6月18日掲載

 

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