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2020年3月20日更新

ちむぐくる込めて、宿ともの作りと|大城純子さん (宿「あまみく」経営 アクセサリー作家)

ヤマトンチュの沖縄ライフ『楽園の暮らし方』<vol.21>
沖縄に移住した人たちの「職」と「住」から見えてくる沖縄暮らしのさまざまな形を紹介します。

大城純子さん(宿「あまみく」経営 アクセサリー作家)


神奈川県から移り住んだやんばるで、宿の運営、アクセサリー作り、紅茶栽培、師範の腕前を持つ歌三線と、多岐に活躍する大城純子さん。関わる活動を通じて、島人から学んだ“ちむぐくる”を伝えていきたいという


紅茶栽培に三線も。沖縄在住15年、多岐に活躍

沖縄の歌と人情に、大城純子さん(50)が初めて心打たれたのは、この世の楽園のように美しい海と日本一のマングローブ林を見たくて八重山に旅をした22歳の時だ。

「西表島の港から乗ったタクシーで、運転手さんが沖縄民謡のテープをかけていたんです。『いつもこうして民謡を聴いているんですか』と尋ねたら、かけていたテープを取り出して私にくださった。人情味を感じてうれしかったですね」

離島ののどかな空気に乗って心地よく流れて来る「安里屋ユンタ」や「ハイサイおじさん」が耳に染み入った。

「沖縄っていいなと思う気持ちが湧き上がってきました。私が生まれ育った本土には、流行歌ならあるけれど、子どもからお年寄りまで誰もが知っていて口ずさめる歌がそんなにない。沖縄にはあることをうらやましく思いました」

それからは興味と足が沖縄に向いた。住んでいた神奈川県で三線教室に通って琉球古典音楽を学ぶようにもなった。そして15年前、旅人として何度も訪れ、「移住するならここに」と望んでいた本部町の備瀬に移住。現在は、備瀬で創作アクセサリーの店を、今帰仁村の海辺で村出身の夫、浩樹さんと宿を営んでいる。


海に向かって突き出た大きな岩の上に建つ宿「あまみく」。人工物が視界に一つも入らない貴重な立地だ(写真は大城さん提供)


広い方の客室。寝転がって海を眺められるように、二部屋とも琉球畳の畳間を設けている。長期滞在するお客さんも多く、1週間以上連泊する人も


宿の1階では、栽培した紅茶などを販売している。「ティールームも不定休で営業しています。沖縄生まれの紅茶を沖縄の器で沖縄の景色と一緒に楽しんでいただきたい」


輝かしい受賞歴を誇る「やんばる紅茶」。夫の浩樹さんが中心となって栽培から発酵や乾燥までを行っている。収穫時期にちなんで「うりずん」や「夏至南風(かーちべー)」などと名づけた6種類がある
 

あると心にうるおい

学生時代、アルバイト先に宝石問屋を選んだほど、昔からアクセサリーが好きな純子さん。老舗百貨店、三越の宝飾品部門に勤めた後、20年ほど前に自分でアクセサリーを制作し始めた。

「アクセサリーって、生きていく上でなくてもいいものじゃないですか。だけど古今東西、老若男女問わず身につけられてきたし、大切にされてもきました。人は案外、そういうものに引かれるのかもしれません」

なくてもいいけれど、あると心がうるおうもの。不思議と純子さんの元にはそういうものとの縁が引き寄せられてきた。12年前に始めた紅茶栽培もそうだ。元々、体質的にコーヒーを受けつけず、紅茶ばかりを好んで飲んでいたところ、沖縄でも紅茶が育つことを知った。茶所として知られる国頭村奥の畑を地元のお年寄りから譲ってもらい、浩樹さんと二人で土地の開墾から栽培を始めた。

無農薬で育てた茶葉を手摘みして作られる二人の紅茶は、風味が何層にも折り重なった奥行きのある味が特徴だ。全国的にも品質を認められ、国産紅茶グランプリで一昨年、昨年と2年連続で準グランプリに輝いた。


本部町備瀬で開いているアクセサリー店「HUALI(フアリ)」。建物は、以前本土の自動車メーカーでエンジニアとして働いていた浩樹さんが建てた


純子さんのアクセサリーは淡水真珠を多く使う。「よく知られるアコヤ真珠と成分的には同じなのに価格は安く、しかも形や色はアコヤ真珠より豊富です」
 

小さな宿らしいもてなし

紅茶畑で千本の苗を育て始めた数年後、今帰仁の「自然のままの海岸が奇跡のように残る」(純子さん)浜辺で宿泊業もスタートさせた。アマミキヨの別名から「あまみく」と名づけた二部屋だけの小さな宿は、前方に伊平屋島と伊是名島、すぐ両脇にまるでプライベートビーチのように静かで美しい砂浜、後方には今帰仁城、という夢のような絶景をほしいままにする。

「おかげさまで、オフシーズンでも多くのリピーターの方が来てくださいます。一にも二にもここの立地の力だと思います」

「ただいま」と言って戻ってくる人。数カ月おきに泊まりに来る人。この宿で過ごしたくて沖縄行きの飛行機に乗る人。彼らがこの宿を愛するのは、立地の良さだけが理由ではきっとない。「小さな宿だからこそ、大きなホテルにはない家族的なサービスを提供したい」という気持ちでゲストに接する夫妻の人柄が大きな魅力になっているはずだ。

「最近、よく思うんです。宿をするにもものを作るにも、一番大切なのは愛情や情けだなと。目の前の人やものに、心を込めて接することだなと。沖縄に移住してから、島人の人情にいつも助けられてきました。これからは自分が、そういう気持ちを出会う方々に渡していきたい。この年になってやっとそう思うなんて遅いですけれど(笑)」

照れ笑いを浮かべる純子さんを見ていて思った。愛される宿を作るのに一番必要なのは息をのむ景色ではない。愛される魅力を持つ宿主だと。
 

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宿(正面)を建設する前からこの場所にあった建物(右)が一家4人の住まい


住み始める前は4部屋に仕切られていたのを壁を取り払ってワンルームに造り替えたLDK。柱が1本もない広さ50平方メートルの大空間は格別な開放感
 


未完成の楽しみ

大城さん一家が暮らす家は、もとはゲストハウスとして長年使われてきた建物だ。今LDKにしているメインの部屋は、一時期は20人ほどがいっぺんに泊まれる大部屋だった。家族4人で使うにはやや持て余してしまうほど広い。

「広さを生かし切れていないです。これだけ広いのに収納も足りなければ、寝室も一つだけ。そこは子ども部屋にしているので、私たち夫婦はLDKで寝ています(笑)」(純子さん)

夏までの繁忙期は宿の仕事で手いっぱい。家の改修はおのずとオフシーズンの作業になる。キッチンを手作りしたり、雨漏りしていた天井に板を張ったりと、毎年少しずつ家に手を加えている浩樹さんが言う。

「高い天井を生かしてロフトを作りたいし、壁に漆喰(しっくい)も塗りたいしと、やりたいことがたくさん。まだ進行途中です」

「途中」なのは、考えようによってはよいことだ。完成させるまでの楽しみをまだまだたっぷりと味わえるということだから。


文・写真 馬渕和香(ライター)


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1785号・2020年3月20日紙面から掲載

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