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2019年5月17日更新

植栽の力で暮らしを豊かに|葉棚達也さん(造園家)・由真さん夫妻

ヤマトンチュの沖縄ライフ『楽園の暮らし方』<vol.12>
沖縄に移住した人たちの「職」と「住」から見えてくる沖縄暮らしのさまざまな形を紹介します。

葉棚達也さん(造園家)・由真さん夫妻


造園家の葉棚達也さんと妻の由真さん。暮らしをより楽しく豊かにする植栽や造園の提案を二人三脚でおこなっている
 

人も植物も元気になれる庭を

造園家、葉棚達也さん(44)の家は、すぐそばから見ても全貌がよく分からない。所狭しと置かれた鉢植え植物に外観が覆い隠されているからだ。

「以前はもっとありました。屋根の上にも置いていて、水やりだけで2時間かかっていました」

交通量の多い国道が目と鼻の先、という立地にもかかわらず、街中で見かけるのはまれな珍種の野鳥も訪れる葉棚邸の前庭。そこは、研究熱心な葉棚さんの“実験”の場でもある。

「いろんな植物を集めて、沖縄の気候風土に合うか合わないかを確かめる実験をしています。たとえば乾燥に強いアガベを排水のよい配合土と沖縄の普通の土とに植えて比べてみたり」

実験の結果、沖縄の土でもよく育つことが分かった。しかも子株の付きは配合土よりいい。

「実体験を通してそうした知識を身につけていくのが楽しい」

少年のような好奇心が葉棚さんの目に輝いた。


植物に覆われた自宅。宜野湾市に見つけた築50年超の元事務所を住宅仕様にセルフリノベーションした


自宅だけでなく首里のヤードにも植物をストックしている。顧客のさまざまな好みに応えられるよう2カ所合わせて50種類以上を置いている
 

20代はサーフィンに熱中

30歳で植物の仕事を始める以前、葉棚さんの人生はサーフィンを中心に回っていた。当時は神戸に住んでいて、週末のたびに四国や日本海側まで波乗りに出かけた。仕事は、波乗りの費用を稼ぐ手段と割り切っていた。

妻の由真さん(49)と出会ったのもサーフィンを通じてだった。「僕は脳みそが筋肉でできているタイプの人間」と話す葉棚さんの目に、芸大出身で自然や美への感受性が豊かな由真さんは最初、不思議な人として映った。例えばある日、年季が入った愛車に二人で乗っていて雨が降ってきた。ボロボロの天井に雨音がボトボトーッと響いて、葉棚さんはバツが悪く感じたが、由真さんは「この雨の音、気持ちいい」とうれしそうに言った。

「この人みたいな人に会ったことがなかったです。『自然は先生やで』が口ぐせでした」


うるま市の宿泊施設での施工例。元は駐車場だった場所(上)を石積みで区切り、ウッドデッキを敷いた上でナツメヤシやオリーブなど海辺のリゾートらしい軽やかで清涼感のある植物をあしらった。「造園は独学ですが、サーフィンで培った地形や風を読む力が役立っています」。美的センス抜群の由真さんが修景デザインの方向性を示してくれることも多い(写真は葉棚さん提供)
 

たじろいだ植物の威力

しかしそういう葉棚さんも、自然を愛でる心をもともと持っていた。花が好きで、神戸にいた頃はJリーガー御用達でもある一軒の花屋によく足を運んだ。

「こんな顔をしていますが、昔から花や植物っていいなと思っていたんです。植物のある空間にいるとなぜか気持ちよかった」

だから、波乗りできる海のそばに暮らしたくて沖縄に移住してからは「好きな仕事をしよう」と花屋で働いた。「どうせなら沖縄一の店で」と高級ホテルのフラワーディスプレーも手がける那覇の有名店に雇ってもらった。

「仕事は厳しかったです。早めに出勤しようと朝6時半に店に行ったら、他の人はもうバタバタと働いていて焦ったり(笑)」

店には2年半勤めて33歳で独立した。観葉植物の威力を思い知らされるこんな体験をしたこともあって、花ではなく観葉植物の販売を専門にした。

「当時住んでいた部屋を由真さんが模様替えして最後にグリーンを置いたんです。そしたらそのままでも居心地がいい部屋がまた一段と気持ちよくなった。外になんぼでもある植物を家の中に置いただけでこんなことになるんやってビビりました(笑)」
 

沖縄の花木や石など、島の素材を中心に造園したい気持ちが強まっているという。読谷村の新築住宅では、琉球石灰岩を使って琉球式の“石庭”をつくった(写真は葉棚さん提供)
 

植物は「生きてなんぼ」

葉棚さんの観葉植物は売れた。鉢の色を万人受けする白に統一したことも奏功した。白い鉢、イコール、葉棚さんというイメージが広まって、白い鉢物を見た人はそうでなくても葉棚さんの商品と思うまでになった。

しかし当の葉棚さんは、本来大地に根を張って生きる植物をインテリアのように室内に置くことにためらいも感じていた。

「植物は正直だから、室内に置いて一年もすると大体は弱ってしまう。弱った植物からは人の気持ちも離れてしまいます」

「植物は元気に生きてなんぼや」。そう思う気持ちが強まって、数年前から庭木の植栽の仕事に力を入れ始めた。「植物がお客さんの暮らしにちゃんと役に立っとんな」と思えることが増えた。

「穴を掘って木を植えて、をひたすら繰り返す植栽の仕事は体力的にしんどいです。腰も痛めますしね。でもお客さんが喜んでくれるので頑張れる」

「庭に木を植えてから子どもが木登りするようになりました」。「庭でバーベキューする楽しみを覚えました」。「島バナナやアセロラがたくさん取れました」―。葉棚さんが木を植えるたびに喜ぶ声が増えていく。


以前インテリアメーカーでカーペットのデザインや内装コーディネートの仕事をしていた由真さんの美意識がつまったハイセンスな室内
 

 


もらいものを生かし、美しく住まう

葉棚さんは妻の由真さんのことを「この人、天才じゃないか」と思ったことがある。

まだ花屋に勤めていた頃の話だ。毎晩疲れて帰宅すると、部屋の中が少しずつ「いい感じに」変化していた。由真さんが壁紙や障子を張り替えたり、タイルカーペットを敷いたり、コツコツと模様替えしていたのだ。

「どれも人からもらったものばかりなのに、由真さんがコーディネートすると全部がうまくハマって、見たことのないええ感じになるんです。取材させてと某媒体にお願いされたこともあります」

雑誌の1ページを眺めているような今の家のインテリアも、もらいものと由真さんが手作りしたものばかりで構成されている。

「昔の同僚がくれたタイルカーペットや旅のおみやげにともらったクッションカバーや廃棄処分になる予定だったのを譲ってもらった棚など、自分のもとに自然と集まってきたものにちょこっと工夫を加えて置いただけです」

由真さんはそう謙遜して、「ここの居心地が良いとしたら、それはいつも開け放している窓からいい風が流れて来るから」と付け加えた。「自然が先生」が口癖の由真さんらしい言葉だった。


由真さんの父のカメラや母の花器、イタリアに二人で旅した時に拾った「彫刻みたいに形がかっこいい」松ぼっくり、ドイツの友人がくれたリンゴの木の輪切り。「これもいただきもの」というダイニングの棚は二人のいわば思い出のアルバム

文・写真 馬渕和香(ライター)


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1741号・2019年5月17日紙面から掲載

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