彩職賢美
2019年1月31日更新
[彩職賢美]宮里豆腐ドーナツ店店長の宮里詩織さん|ドーナツで増やす笑顔
ことしで開業5年目を迎える沖縄市高原の「宮里豆腐ドーナツ店」。店長の宮里詩織さん(34)は夫の作る豆腐から出るおからと豆乳を使って焼きドーナツを作る。試行錯誤して作り上げた品は、素材や配合にもこだわった自信作だ。「多くの人に味わってもらい、笑顔を増やしたい」とドーナツ作りに精を出す。
主婦の感覚も商品に反映
宮里豆腐ドーナツ店
店長
宮里詩織 さん
店内に入るとほんのり甘い香りが漂い、商品の陳列台には12種類の焼きドーナツが並ぶ。
「いらっしゃいませ」と優しく迎える宮里さんは、「おからを使ったドーナツって体に良さそう」「初めて食べた」といったお客の声を直接聞けるのを楽しみにしている。「興味を持ってもらえることがうれしいし、作ってよかったと励みにもなるんです」と話す。
常に心掛けていることは、毎日変わらない味を提供すること。「生地作りは失敗できないので緊張します。焦らず、平常心が保てるよう『こうやって、ああやって…』と口にし、頭の中で手順を確認しながら進めています」。それと、「楽しみに待っている人たちがいる」と、お客の顔を思い浮かべることも大事にしている。
ドーナツ作りで特にこだわるのが食感。「おからと豆乳、小麦粉が主な材料ですが、1グラム単位で分量を変えながら、どれが最もいい食感になるかを研究しました。おからは水分を含みやすいので、納得いく食感を出すための水分バランスがとても大変でした」。試食を繰り返し、夫や息子の「パサパサしてる」「甘すぎでは」といった声を参考に修正していった。
半年間の試行錯誤を繰り返し、優しい甘さでしっとりした試作品が完成したのが5年前。半年後には店をオープンした。「家族や友人らは、『おいしい』といってくれたのですが、不安でした」。オープン前の夜はプレッシャーと不安で涙が止まらなかったという。「本当に『これが完成だ』と思えたのは、リピーターとして来てくださったお客さまが『おいしかったよ』と声を掛けてくれたとき。初めて、『このドーナツは認められたんだ』と思えたんです」と振り返る。
宮里さんはこれまでお菓子屋で働いた経験はなかったが、スイーツが大好きで、「いずれ街の小さなお菓子屋をしたい」と漠然と考えていた。
そんな中、夫の一言が転機に。「夫が豆腐屋さんになりたいと言ったのです。豆腐店から機械を譲ってもらえたこともあり、やるなら今だって」。豆腐店について夫と話し合う中で、2人で別のこともできないかと検討。豆腐の製造工程で出るおからに目を付けた。「多量に出るおからは栄養も豊富なのに捨てるのはもったいない、何かに生かせないかと考える中、当時ドーナツづくりにハマっていたこともあり、ドーナツに入れたらと思いついたんです」と宮里さん。
最初は揚げドーナツにも挑戦したが、夫から「焼く方が揚げるよりもヘルシーなのでは」とアドバイスを受けた。さらに時間がたってもベトベトせず、一定の味を保てるところも焼きドーナツのメリットだった。
素材へのこだわりにも、主婦感覚が反映されている。「砂糖には宮崎産の三温糖や沖縄産の粉末黒糖、バターは北海道産無塩バター、国内大豆を使った自家製のおからと豆乳に県産卵などを使っています。例えば、家で子どもに手作りおやつを作る際、安全を考えできる限り無添加の素材を使うと思います。それと一緒でお客さまにも安心して食べてほしくって」。
そんなドーナツへの思いが実を結び、口コミを中心に集客につながった。
「今は焼きドーナツがメインですが、今後は豆腐を使ったお菓子の商品展開を目指しています。商品を通して、多くの人の笑顔も増やしていけるとうれしい」と力を込める。
那覇市に2号店オープン
宮里さん提供
2018年2月、沖縄市の高原本店に続き、那覇市真嘉比に2号店「おもろまち駅前店」をオープンした。「高原本店を立ち上げたときから、次は那覇市内に出店したいと目標をもって頑張ってきたので、実現できてうれしい」と話す。
同店舗でも高原本店同様に豆腐やおからなども扱っている。時には「おからサラダにして食べたらおいしかったよ」や「おからをご飯代わりに、カレーをかけて食べるのもいいよ」など、お客が会話も楽しむ光景も。豆腐やドーナツはコープおきなわや、りうぼうでも販売している。現在、両店舗では2月14日のバレンタインデーに向けた商品を検討中だという。
週に1度は英会話教室
宮里さん提供
2017年から週に一度、英会話教室に通っている宮里さん。「地域柄、外国人のお客さまもよくいらっしゃるのですが、コミュニケーション不足を感じて、通うようになりました」と話す。
そんな努力もあり、外国人のお客も増えた。「もっとスムーズに会話できるように継続していきたい」と自分磨きにも力を入れている。
◆問い合わせ先
宮里豆腐ドーナツ店 高原本店
098‐930‐3160
大城さんのハッピーの種
宮里さん提供
Q.休日の過ごし方は?
店をオープンしてから、子どもと遊ぶ時間が減っているので、休みの日はできるだけ子どもと一緒に過ごすことを心掛けています。
最近は、子どもとカラオケやボーリングへ行って遊ぶのにはまっています(笑)。息抜きになるのはもちろん、子どもの成長が感じられたり、普段ではなかなかできない会話を楽しめる時間にもなっているんです。
PROFILE
みやざと・しおり
1984年、沖縄市出身。高校卒業後、飲食店や古本店、コールセンターなどで働いた後、2008年に結婚し、専業主婦に。夫の豆腐店開業を機に、2014年、豆乳やおからを活用した焼きドーナツを提供する「宮里豆腐ドーナツ店」をオープン。2018年、2号店のおもろまち駅前店を開店。11歳になる息子の母。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明 編集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1324>
第1644号 2019年1月31日掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 安里則哉
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編集者
日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。