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彩職賢美|沖縄の輝く女性にインタビュー

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2019年1月10日更新

[彩職賢美]社会福祉法人おもと会本部 おもと会から介護を変えていくプロジェクト リーダーの金城知子さん|介護現場の意識を改革

作業療法士として、学会長を務めたり、福祉用具を考える研究会の立ち上げ、養成校での指導など、沖縄の作業療法士の育成、福祉用具事情の発展に尽力してきた金城知子さん(60)。今夏、法人において日本初のケアに関する総合施設が開設。「介護する方にもされる方にも安全で安心な、抱え上げないケアを沖縄からしっかり広めていきたい」と語る。

抱え上げない介護 沖縄から

社会福祉法人おもと会本部
おもと会から介護を変えていくプロジェクト リーダー

金城知子 さん

夕日が差し込む広間。豊見城市の特別養護老人ホームすみれで行われた介護ケアの勉強会に、おもと会の事業所に勤める介護職員が集った。

「今回は床走行リフトを実際に使ってみましょう」。金城さんが機器の使い方を一通り示すと、職員も介護する側、される側になり実際に試してみる。ベッドに横たわる人の体を大きな布状のもので包み込むようにつり上げると、機器ごとそのまま水平移動し、車椅子へと移乗する。「わあっ、軽くて楽!」「包み込まれるから安心感がある」。

職員の反応に金城さんが言葉を続ける。「抱え上げる力任せの介護って利用者にとってどうだと思う? 緊張が高くなり、拘縮が強くなる。あなたたちの体にも負担がある。それは質の良いケアとは、言えない。せっかくいい道具があるのに活用しないともったいない。今日の経験はそれぞれの現場で共有し生かして」

医療や福祉の現場では、処置、入浴介助、おむつ交換、車いすやベッドへの移乗介助など、相手を抱え上げる場面が多く見られ、腰痛を引き起こす要因とされる。腰痛が原因で離職するケースもあり、現場の人材確保という面からも対応が急がれる。

オーストラリアでは看護師の腰痛予防のため、1998年ごろから人力のみの移乗介助が禁止され、福祉用具を使った介助が義務付けされた。抱え上げない介助「ノーリフティングケア」の理念は日本でも広がり始めているが、金城さんは「働く一人一人が意識を変える必要があるが、なかなか難しい」と話す。

おもと会が県内50事業所の全職員約1900人にアンケートを実施すると、67.3%が今までに腰痛を経験したことがあると答えた。「おもと会から介護を変えていくプロジェクト」を立ち上げ、週1回、介護職員を対象に自由参加の勉強会を実施。今夏には日本初となる福祉用具機器と教育を融合させたケアの総合施設を同法人が開設する。施設ではケアに関する研修や技能実習、調査、研究、展示、体験などが行え、「ゆくゆくは、おもと会施設の患者および利用者の家族から、地域の皆さんが活用できる場にしていきたい」と意気込む。



小さなころから祖母と過ごすことが多く、自然と高齢者に寄り添い手助けするような仕事に就きたいと思うようになった。作業療法士として最初に勤務したのは療育園。

「高齢者のためにと志した道だけど、発達の遅れや障がいのある子どもたちとの関わりの中で、成長を手助けできるこの仕事にやりがいをすごく感じた」と胸を張る。結婚し夫の郷里である沖縄に移住した後は、病院で急性期患者のリハビリを担当するなど第一線で活躍。作業療法士を目指す学生への指導は15年になる。

「作業療法士は身近にいる人を助け、生活の質を上げることに直接関われる素晴らしい仕事。介護の仕事はきついなど嫌なイメージが先行しているけれど、誇りを持って長く勤められるよう、抱え上げないケアの普及がとても重要」と力を込める。

質の良いケアの提供こそが職員の健康を守り、患者や利用者にも余計な緊張を与えない。そんな「抱え上げないケア」の普及に力を注ぐ。


勉強会で使用 「床走行リフト」

金城さんが勉強会で使用していた「床走行リフト」は、利用者の身体を支えてつり上げ、ベッドや車椅子へ移乗することができるもので、歩行訓練などにも利用できる。

ゆりかごのような機器の特徴で利用者がリラックスすることから、拘縮が改善した例の報告もある。常に強い拘縮のある入居者もリフトの使用後、表情が和らぎ、体の拘縮の数値に改善が見られるとスタッフ全員から「わあっ!」と歓声と一緒に笑顔があふれた。


利用者も安心「手動式移乗リフト」

抱え上げないケアに役立つ福祉用具として金城さんが紹介したのが手動式の移乗リフト。自力で移動ができない人のために、抱き起こしたり、支える動作を介助し、そのまま移動も可能。利用者の胸部に本体を差し入れるようにし、ハンドルを引くとゆっくりと立ち上がらせることができ、利用者の快適な位置で止めることができる。

金城さんは「ベッド、車椅子、トイレへの移乗が簡単にでき、スボンの上げ下ろしにも便利。体をしっかりと支えてくれるので、利用者も安心感がある」と話す。


金城さんのハッピーの種

Q.幸せを感じる時は?
沖縄には小さなおばあちゃんがとても多いのね。そんな小さなおばあちゃんがくつろげる椅子がなかなかない。そういう椅子(写真)を作りたいと思って、仲間と一緒に取り組んでいるんです。私は得意な裁縫でシートやクッションを作っています。この試行錯誤が楽しいの。今年で定年を迎えるのですが、福祉用具の研究や、抱え上げないケアの普及に役立つことはこれからも続けていきたいと思っています。



PROFILE
きんじょう・ともこ

1958年、岡山県生まれ。作業療法士。福祉用具プランナー。結婚を機に夫の出身地・沖縄へ移住。県内病院で急性期患者のリハビリを担当。2003年、医療法人おもと会沖縄リハビリテーション福祉学院で学生の指導にあたる。08年、同学院作業療法学科学科長に就任。18年、おもと会本部に異動。おもと会から介護を変えていくプロジェクトリーダー。

週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
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撮影/比嘉秀明 文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1322>
第1641号 2019年1月10日掲載

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