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2018年8月16日更新

[彩職賢美]琉球大学 理学部教授の伊澤雅子さん|イリオモテヤマネコ研究

小さなころから生き物に囲まれ、ファーブル昆虫記に深く感動した少女は、動物の研究者になった。伊澤雅子さん(63)。37年、イリオモテヤマネコの生態を研究している。動物の行動は予測がつかず空振りも多いが、「この動物が、こんな行動をするんだ!」という意外な発見が、すべての原動力だ。


 

意外な発見が原動力に

琉球大学 理学部教授
伊澤雅子 さん

研究を始めたのは大学時代、当時女性が現場に出て研究するのは珍しかった。周囲はすべて男性で、同じテントに寝泊まりし、トイレは山中。観察に支障がないよう、日焼け止めも虫よけも使わずに滞在し続ける。それでも、「大変なことはなかった。周囲の方が気を使っていたはず」。言葉の端々に、飾り気のない人柄が垣間見える。
学生時代、没頭したのが野良ネコの研究だ。「ほ乳類の中で、最も単独性が強いのがネコ。一匹で生き抜くために、どんなルールがあるのかネコ社会を知りたい」と、街中の野良ネコを調査して歩いた。
その関連で大学院時代、世紀の発見と言われたイリオモテヤマネコの研究チームの一員に。当時、生態は謎に包まれていた。「超有名な絶滅危惧種。最初はプレッシャーだったけれど、初めて現地でイリオモテヤマネコに遭遇した時に、普通に生きている動物だ、と肩の力が抜けた」。
研究は、生態を把握するために発信機を付けるところからスタート。「わなをどこに置くか。えさに何を入れるか」、試行錯誤してかご型のわなを設置。半年後、初めて捕獲に成功した。それから37年、毎年発信機をつけ、研究を続けてきた。食性(食べ物)の幅広さや湿地や水辺を好むことなど、他地域のヤマネコとは異なる生態が分かってきた。
現在、生存するイリオモテヤマネコは100~150頭と推測される。「小さな島で、それぞれの動物の数は少ない。それでも、西表島に手つかずの自然が残っていて多様な動物がいたから、それらを食べて生き残れた。観光との両立は難しい面もあるが、自然を残すことは必要」。
自身を「いいかげん」という意外な言葉で表した伊澤さん。イリオモテヤマネコから学んだことでもあるという。「20万年前に中国大陸から渡り、海水面が上がり島に取り残された。島で生き延びたのは、こだわらずにいろんなエサを食べてきたから。計画通りに進まない動物の研究も、柔軟でないと続かない」。

動物への関心が芽生えたのは、幼いころ。家には、鶏、犬、小鳥、亀、金魚とたくさんの生き物がいた。
小学生の時、ファーブル昆虫記に夢中になった。「ふんころがしが子孫を残すために、こんなに考えているんだ!」と感動。青虫やオタマジャクシを捕まえては育て、動物の毛のキューティクルの観察にハマる。夏休みの自由研究に没頭し、自然と動物学者を夢見るようになった。
九州大学大学院を修了後、博物館学芸員を経て琉球大学へ。学生らとともに、イリオモテヤマネコのほか、クビワオオコウモリ、ツシマヤマネコなど希少種の研究に携わってきた。「クビワオオコウモリは花粉を媒介し、森林の保全に役立っている。1種でも絶滅すると、全体のバランスが崩れる」と、保全の必要性を説く。
今年、琉球大学で初めての女性学部長に就任。研究や県自然環境保全審議会の委員の活動が評価され、「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰を受賞した。
「動物の生態や貴重さをデータで積み重ねることが、保全につながる。沖縄は希少種の宝庫で、生態が分かっていない動物は、まだまだ多い。カメラを設置しての自動撮影やフンの解析など、新たな技術で分かることが増えてきている」。探究心は、止まらない。




念願のアフリカへ

大学院時代、高校生のころから夢だったアフリカへ。エチオピアで、半年草食獣の研究をした。「アフリカはスケールが大き過ぎて、別格。生きて動き回っている動物の迫力がすごかった」。サバンナの妖精と呼ばれるディクディク(写真上)の研究をした。


(写真は伊澤さん提供)


身近な動物も面白い
学生や、出前講座で子どもたちに関わる際に、伊澤さんが重視しているのが、本物を見せること。「できれば生きている動物、難しければ剥製や標本。本物を見ると、感じることが違う」。
「街中を飛んでいるクビワオオコウモリは、実は希少種なんです。沖縄は、島ごとに環境も動物も異なる豊かな土地。ぜひ、身近な動物に目を向けてみて」と話す。


絵本を出版 海外でも!

伊澤さんは野良ネコを追った「ノラネコの研究」の絵本を出版した。身近だが、意外と知らない野良ネコの生態と、気付かれないよう1日中野良ネコを追いかけ続ける伊澤さんの様子がユーモアを交えてつづられている。韓国、フランス、中国などでも出版されている。



伊澤さんのハッピーの種

Q.休日は、何をしている?
映画を見るのが趣味。現実離れした洋画、中でもスターウォーズシリーズの大ファン! 最初の公開は1977年、当時は迫力もストーリーも画期的で「面白い!」と、5回くらい見ました。基本的に、映画は映画館で観ています。読書も好きなので、ロード・オブ・ザ・リングを映画で見たときに、映像でここまで再現できるのかと驚きました。映画の世界観を感じられるものに惹かれます。


(写真は伊澤さん提供)




PROFILE
いざわ・まさこ
1954年福岡県出身。1984年九州大学大学院修了。北九州市立自然史博物館学芸員を経て、91年琉球大学理学部助教授、のちに教授になる。2018年、理学部長に就任。琉球大学初の女性学部長。研究や県自然環境保全審議会の委員などの活動が評価され、平成30年度「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰を受賞した。




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今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明・編集/栄野川里奈子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1308>
第1621号 2018年8月16日掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
栄野川里奈子

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編集者
おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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