彩職賢美
2016年5月26日更新
鍼灸で体整える【金城涼子さん・鍼灸師】
才色兼備『沖縄で働く女性は、強く、美しい』
中国で修行 可能性を実感
鍼灸師・金城涼子さん【ゆあん鍼灸治療院代表】
大学卒業後、鍼灸の本場である中国へ留学し、学びを深めた金城涼子さん(31)。中国で治療が難しいとされる病状の人が改善するのを見て、鍼灸の力を実感した。「鍼灸は体のバランスを整えて、患者さん自身の力を目覚めさせることが基本。治療法の一つとして、多くの人に知ってほしい」と、日々患者に向き合う。
浦添市、パイプライン沿いにある「ゆあん鍼灸治療院」。出迎える金城さんは、すっぴん。「患者さんにリラックスしてほしいので、診療中はシンプルでいたい」と笑顔。飾らない人柄が垣間見える。
治療院に入ると、中国語で書かれた証明書が目を引く。金城さんは約5年間、鍼灸の本場である中国へ留学した。「中国では、鍼灸は西洋医療と同じく治療の選択肢の一つ。日本では認知度はまだ低くて、鍼灸一本で食べていくのは厳しいけれど、師匠がさまざまな病の人を治療するのを見て、一生この道でやっていこうと思えた」と振り返る。
転機となった師匠との出会いは、鍼灸を学んでいた大学時代のこと。研修旅行の際、ルームメートが突然幻聴や幻覚を発症。コントロールが利かない状態になったときに、先輩が鍼を打ったらスッと収まった。「その先輩が師事していたのが、中国人の張士傑先生。卒業後、この人に学ぼうと決めました」と金城さん。
大学卒業後、翌日には中国へ。中国語を学んだ後、鍼灸の病院で臨床を経験し、張氏の下で2年半助手として修行を積んだ。世界各国から、脳梗塞や脳性まひ、てんかんなど、さまざまな患者が訪れた。例えば、難病指定の筋ジストロフィーの男の子が、治療を受けて歩き方が自然になっていくのを見て、「これ以上の治療は難しいとされている症状が、好転するのに驚いた」。
鍼灸の道に進んだのは、学生時代のハンドボール部での経験が元になっている。ハンドボールは体がぶつかる激しいスポーツ。ハードな練習で体を酷使し、ケガをするチームメートが多かったという。「私はケガは少なかったのですが、才能のある親友がケガに悩み、泣いていたんです。手助けできないのがもどかしかった」。
進路を考えたとき「スポーツする人を裏で支えたい」と、「スポーツ鍼灸」のある京都の大学へ。学びを深める中で、「スポーツでのケガも病気も体調不良も、治療の基本は体のバランスを整えること」と視野が広がった。
大学進学、中国留学を経て、4年前に沖縄に戻った。独立し、3年間は往診専門で施術。1年前に念願の鍼灸院を開院した。
診療では、脈や肌の状態、顔色を観察し、問診。症状に合わせてツボに鍼灸を施す。患者は女性が多く、月経不順や不妊、更年期などの相談も多い。「悩んでいる症状は同じでも、人によって適した方法が異なる。効かない場合は、反応を見ながら試行錯誤です」。その分、症状が改善した時のやりがいは大きい。「いかにその人の力を目覚めさせるか。一人ひとりに真摯に向き合いたい」。
最近印象に残っているのが、爪がはがれ、皮膚科で原因不明と診察された患者だ。爪は血行に関連すると考え、血行促進のため爪まわりに灸を施したところ、症状が改善した。「西洋医療にも東洋医療にも得意、不得意があるので、患者さんが選べたらいい。選択肢の一つとして、鍼灸を多くの人に知ってほしい」と前を向く。
小学5年生からハンドボール
小学生から大学まで、ハンドボールを続けてきた。浦添市はハンドボールの強豪校が多く、全国大会に出場することも。「私は補欠に入れるか入れないかで才能は無かったけれど、スポーツは好き」。現在は子育て中で休んでいるが、いずれ再開する予定。
中国で師匠と共に
師匠の張士傑氏=写真右=は、太谿というツボの研究と治療で有名で、中国では「張太谿」という名で通っている有名人。
張氏は80歳を超えた現在も、現場に出て診療を続けている。「西洋医療にも精通しているのですが、知らない症状に出合うと、すぐに調べる。その姿勢もすごいなと思います」
力士に惚れ惚れ
治療院には、大相撲のカレンダーが飾られている(写真)。子どものころから父と相撲を観戦し、相撲が好きだった金城さん。昨年行われた大相撲沖縄場所へも、観戦に行った。「近くで見ると、迫力がすごかった! 短い時間で勝敗が決まるのがいい」と、熱く魅力を語る。勝負以外に、力士の体つきにも注目している。「筋肉の付き方のバランスが良く、美しい体つきの人が多い」。体つきも取り組みも、今注目している力士は十両の宇良で、「夢は両国国技館での観戦」!
金城さんのハッピーの種
Q.ストレス解消法は何ですか。仕事を終えて、1歳の子どもを寝かしつけた後の発泡酒です。焼き鳥(特にモモ肉)も大好きなのですが、出産後は外出しづらくなり、あまり食べていないですね。出産後、疲れがたまりやすくなり、以前はなかった頭痛や肩こりが出てくるようになったんです。体調的にはキツイのですが、妊娠中や産後の患者さんと経験を共有でき、アドバイスできるのはうれしいです。
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ゆあん鍼灸治療院
電話:098-917-5510
浦添市宮城3-4-7-1階
PROFILE
きんじょう・りょうこ
1984年浦添市出身。鍼師、灸師。2007年明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学)を卒業後、中国の北京へ留学。北京広安門中医院鍼灸科で鍼灸治療の基礎を学び、張士傑氏の下で2年半修行と実践を積む。2011年に沖縄へ戻り、3年の往診を経て、2015年に「ゆあん鍼灸治療院」を開業。1児の母。
撮 影/比嘉秀明
編 集/栄野川里奈子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1215>・第1506号 2016年5月26日掲載