店は舞台・たのしく心地良く【比嘉直美さん・マジュン・リッカ経営】|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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彩職賢美

2016年4月28日更新

店は舞台・たのしく心地良く【比嘉直美さん・マジュン・リッカ経営】

才色兼備『沖縄で働く女性は、強く、美しい』

店は舞台 たのしく心地良く
マジュン・リッカ経営・比嘉直美さん【(株)コミューン代表取締役】




女優として、舞台やテレビドラマなど数々の作品で「沖直未」として活躍してきた比嘉直美さん(56)は2年前、読谷村に隠れ家居酒屋「マジュン・リッカ」をオープン。築61年の古民家で地元の食材を使った創作料理と、スタッフが弾く三線で客をもてなす。「来た人にホッとしてもらえたら。沖縄だからこそできる『いいあんばい』が目標です」としっとりと笑う。




上品で、柔らかな身のこなし。1981年にデビュー、テレビドラマや映画、舞台で活躍してきた。女優になったのは、偶然だ。高校卒業後、アナウンサーを志し、東京の専門学校へ進学。そのころスカウトされ、ドラマのオーディションを受ける。最終審査で生まれて初めて演技をし、「生きている」と実感。芝居のとりこになった。

主役に抜てきされ、連続ドラマでデビューした。明け方4時に撮影が終わっても、8時に再開することもある過密スケジュール。「毎日が判断と決断。度胸と、ちょっとやそっとじゃあきらめない精神が身についた」と笑う。それ以降、数々の作品に出演する。極寒の中、息が白くならないよう氷を口の中に入れて演技をしたり、虫に刺されても演技を続けたり。華やかなイメージだが、地道なことの繰り返し。移り変わりの激しい芸能界で仕事が少ない時もあったが、「小劇場でも、芝居ができることが楽しかった」。

転機が訪れたのは、50代に入ってから。40代後半に自身が病に倒れ、その後、父の死や東日本大震災を経験した。人生を見つめ直し、「新しいことを始めるなら今。故郷でやりたい」と東京を離れ、沖縄に戻ることに。料理や内装が好きだったこともあり、飲食店の経営を決めた。

「沖縄らしさ」にこだわり、店舗にする瓦屋根の古民家を求めて県内各地を回った。「私にとっての沖縄らしさは、苦しい戦後をしっかり生きてきた人たちの強さと明るさ。古民家には、そのエネルギーが残っている」と比嘉さん。読谷村の自然が残る住宅地に物件を見つけた時に、ここだと直感。「舞台をプロデュースする感覚で、一から作り上げた」。

比嘉さんにとって、店は舞台。沖縄の工芸を生かした開放的な空間、一味違う創作料理、流れるジャズ、スタッフが弾く三線、すべてが演出だ。さらりとしたもてなしも、心地良い。「過剰過ぎず、マニュアル化せず、程よい距離感で。地元の人も観光客も、ホッとできる場所にしたい」。全体へ行き届く細やかな心配りが、訪れる人を引きつける。

オープンして2年。住宅街の隠れ家的な場所にありながら、地元客や観光客が訪れ、週末は予約で埋まる人気店になった。だが、女優のころと同じで満足したことはない。「お客さまに喜んでもらうことが、エネルギーになる。反応から学んで、今日より明日、日々を積み重ねることで、根が張って育つ。本物になれば、ようやくロングランになる」。

店を切り盛りする傍ら、表現者をプロデュース。「女優時代、観客をはじめ、いろんな人に育ててもらったから」と、若手の育成に力を入れる。「沖縄の子はリズム感や表現力がすごい。芸能界で培ったつながりを生かし、興行として成り立たせたい。渡久地雅斗君という有望な若手俳優を中心にアーティストグループを結成しており、芸能プロダクションの設立に向けて動いています」。

その拠点となるのが、店だ。「人と人をつなぎ、文化の交流が生まれる場になれば」。今日も店に立ち、訪れる人を笑顔で迎える。



 

洗練された「沖縄らしさ」


築61年の古民家を改装=上写真。壁は白く塗装し、天井板や仕切りは取り払って開放的な雰囲気に=左写真。漆塗りの扉や琉球ガラスのランプなど、沖縄の工芸が温かみを添えている。


「ゆし豆腐のカプレーゼ」(写真)や、地元の都屋漁港でとれた魚を使った「すり身揚げ」などが人気。東北支援の一環で、東北直送の海産物も扱う


全面改装した店内。「床の張り替えは同級生に手伝ってもらい、リフォーム業者にも協力してもらった。いろんな人のおかげで完成しました」と比嘉さん


出演作品は300以上
比嘉さんが出演した作品や雑誌の一部=左写真。料理学院の院長を目指すドラマ「愛をひとつまみ」でデビュー以来、ドラマ、映画、舞台に出演。ドラマ「いのちの現場からIII」(1995年)、「渡る世間は鬼ばかり第3シリーズ」(1996年〜97年)、舞台「アパッチ砦の攻防」(2011年)など。


 

比嘉さんのハッピーの種

Q.趣味は何ですか?
東京にいた25年前から続けているガーデニング。植物が育っていくさまが楽しいです。お店の周囲の庭は、すべて苗木から育てました。バナナは今では背丈を超えるほどに育ち、実も取れました。他に、今一番楽しいのが食材を探している時間。沖縄は薬草が多く、珍しい野菜を見つけたときの喜びはひとしおです。

Q.思い出深い作品はありますか?
読売テレビの連続ドラマ小説「おさと」です。鯛(たい)料理の老舗店を支える女性の半生を描いた作品なのですが、これでもかこれでもかと起こる困難を乗り越えていく。何があってもめげないんです。お店では、スタッフが急に体調を崩して休んだり、食材が足りなくなることがありますが、ドラマを思い出すと「頑張ろう」と思えます。思い返せば、デビュー作品も料理学院の院長役で、そのころから料理には関心がありましたね。


マジュン・リッカ
電  話:098-989-8333
場  所:沖縄県読谷村高志保122
営業時間:18時(5月から17時半)〜23時半

PROFILE
ひが・なおみ
1959年嘉手納町出身。読谷高校を卒業。1981年にTBSの連続ドラマ「愛をひとつまみ」でデビュー。「おさと」「渡る世間は鬼ばかり」「いのちの現場からⅢ」といったテレビドラマや、映画、舞台など多くの作品に出演。2014年「マジュン・リッカ」をオープン。イベント等を企画する(株)コミューンの代表取締役。



週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
今までの彩職賢美 一覧
撮 影/比嘉秀明
編 集/栄野川里奈子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1212>・第1502号 2016年4月28日掲載

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栄野川里奈子

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編集者
おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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