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2017年6月15日更新

[彩職賢美]更生保護法人がじゅまる沖縄 DV加害者更生相談室 研究員 名嘉知恵理さん|更正に向けて寄り添う

[fun okinawa・才色兼備]首里にある更生保護法人「がじゅまる沖縄」。刑務所から出所し、行き場のない人に宿泊や食事を提供し、社会復帰のための支援を行う施設だ。同施設でDV加害者更生相談室研究員として働く名嘉知恵理さんは「暴力のない社会にしていくためにも、もっとDVやいじめなどに関心を持ってほしい」との思いを胸に、相談者の気持ちに寄り添う。

彩職賢美1561号の名嘉知恵理さん
 

暴力のない社会目指して

更生保護法人がじゅまる沖縄
DV加害者更生相談室 研究員
名嘉 知恵理 
さん

「関わった人が徐々に良い方向に変わっていってくれた時にはうれしい。1人でもそういう人がいると励みになる」と名嘉さん。
今の仕事を始めるきっかけは、配偶者や恋人からの暴力「ドメスティック・バイオレンス」(DV)の被害者を支援していたころ聞いたこんな訴えだった。「加害者が変わらない限り何も変わらない」。
そのころ、県からDVの加害者対策事業を手伝ってほしいとの依頼があった。「最初は迷いましたが、相談者の子どもたちの『加害者が変われば僕たち子どもが救われるよ』との声に後押しされ引き受けることにしました」。

その際に心掛けているのが、相談者に気付きを与え、「変わりたい」という気持ちが膨らむようサポートすること。
「例えば、相談者が感情的になっている際に、自分も同じように感情的になって否定ばかりしてしまうと、相手は余計にヒートアップし、こちらから悪い態度を学んでしまう。相手のパワーに流されないようにし、こちらは声のトーンを落としてゆっくり話すなど、非暴力的な姿勢を見せることを意識します」。相談者に非暴力的な対応の心地良さを感じ「また話したい」と思ってもらうためだ。

よく耳にするのが、「どこからどこまでがDVなのか」という質問。多くの人は殴るだけが暴力で、それ以外は許されると考えがちだが、その質問は、言い方を変えると「許される暴力を探している」とも言えるそう。「許される暴力探しに必死になって相手を失うよりも、どうやったら相手の気持ちや立場に寄り添えるかを考え、それを実践した方が相手も自分も幸せになれるはず」と話す。




大学卒業後は県内の心療内科医院でカウンセリングに携わり、福祉保健所では児童相談業務に従事した。2007年からDV加害者更生相談室を構え、ことしで10年目を迎える。相談業務の他にも中学や高校で、DVやいじめなどをテーマに講演を行う。生徒たちから「相手の気持ちを考えられる人になりたい」などの言葉が上がる。その素直な言葉にも励まされる。

DV加害者更生相談業務以外にも「沖縄ダルク」や「琉球GAIA」など依存症回復施設の活動も手伝い、相談相手になっている。薬物やアルコール依存症から回復しようとしている人の中には、過去に家族を傷つけたことを後悔し、DVや家族の心情について学びたいという人も多いからだ。月に1~2回開いているDV防止講座では、彼らが講座の受講も兼ね、会場設営を手伝ってくれる。

「社会的信用をなくし、『変わるのが難しい』と言われる依存症の人たちがDV防止活動に積極的に参加している。その光景に驚く人もいる。毎年コンビニに設置するDVの相談カードも彼らが準備を手伝い、『変わりたい人』へ思いをつなげている」。このように活動に参加してもらうことで、「変わりたい」気持ちがもっと膨らみ、いつか誰かをサポートできる人になってほしいと名嘉さんは思っている。
「傷ついた人が元気を取り戻し、傷つけた人が変わりたい気持ちになるためにも、一人一人が問題に関心を持ち、出会った人に良い影響を与えられるような存在になることが大切。そういう人を増やせるように活動していきたい」と今日も相談者の悩みに寄り添う。

 

印象深いエピソード



中学校や高校で講演する機会も多い名嘉さん。「講演が終わった後に、駆け寄ってくれた子が泣きながら『自分が思っていたことを伝えてくれてありがとう』と声を掛けてくれました。その子は傷つけられた経験があって、生きているのが辛かったそう。でも、講演を聞いて『生きていて良かったと思えた。私も誰かの良い出会いの相手になりたい』と話してくれました」と印象的なエピソードを語った。

 

表彰状見て気を引き締め



2010年、「国際ソロプチミスト沖縄」より「女性を助ける女性のために」贈られるルビー賞を受賞した名嘉さん。表彰状は、いつも目に入る場所に飾っており、「加害者だけでなく女性や被害者、子どもの事も考え、思いに寄り添っていくことを心掛けよう」と気持ちを引き締めるアイテムになっているという。


 

花々に癒やされ


名嘉さんの相談室の窓からは季節のきれいな花々が眺められる。これは、同施設内で社会復帰を目指す人たちが、名嘉さんのために植えた花だそう。「少しでも気持ち良く、仕事をしてほしいという思いが伝わりうれしい」と感謝している。



名嘉さんのハッピーの種
Q.幸せを感じることは?
仕事柄、一つの相談を引きずっていては業務に支障をきたすこともあり得るので、気持ちの切り替えは大事にしています。例えば、仕事が休みでタイミングが合えば、気分転換に琉球ゴールデンキングスの試合を見に行きます。子ども連れの相談者がきたら、子どもに絵を描いてあげるのも楽しい。また、私の講演を手伝ってくれた人や依存症の支援施設などに手作りのお菓子を差し入れたりもします。手作りの品を手渡し笑顔になる人を見ると心が元気になります。




PROFILE
名嘉知恵理さん(なか・ちえり
1975年生、沖縄市出身。琉球大学法文学部卒業後、心療内科勤務を経て、2004年から沖縄県DV加害者対策事業に従事。2007年より現在の施設でDV加害者更生相談のほか、関係機関や専門機関を対象とした研修、中高生・一般県民を対象とした講演活動を行う。プライベートでも「沖縄ダルク」や「琉球GAIA」などの依存症回復施設の支援活動を手伝っている。


週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
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撮影/比嘉秀明・編集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1258>
第1561号 2017年6月15日掲載

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安里則哉

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日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。

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