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2017年3月9日更新
【特集・いざ!防災】沖縄も地震が多いエリア! 独自の備えが必要
東日本大震災から6年。2016年4月には、震度7の熊本地震が発生。沖縄でも同様の地震がいつ起きてもおかしくない。いざという時のために、自分や家族を守るために備えができているか、今一度、確認してみよう!
沖縄県も地震が多いエリア! 独自の備えが必要
沖縄は他の地方と同程度に地震が多く発生、災害時には沖縄ならではの備えの必要性が指摘されている。地震・津波について沖縄気象台の担当課長に、災害時の備えについて防災士に聞いた。
1秒でも早く避難
沖縄気象台の神谷晃地震火山課長は、地震が発生し津波警報が出たら「1秒でも早く、1センチでも高い安全な場所に避難することが命を救うことになる」と話し、いち早く行動するためには「日ごろからの備えが非常に大切になる」と強調した。
室内では家具が倒れるのを防ぐための対策を取るなど揺れに対する備えをし、家の外や避難経路については危険箇所を把握。避難訓練に参加してとっさの時に正しい行動ができるようにする。訓練は、隣近所や自治会、企業、学校単位で行い、改善すべき点があれば次回につなげてほしい、とした。
県民の中には、沖縄に大きな地震・津波は来ないと思っている人がいるが、神谷課長によると、体に感じない地震を含め2016年の1年間に約1万5千回観測(図1)。日本全体でも、沖縄地方は他の地方と同程度に地震が多く発生している(図2)。過去、人命にかかわるような大きな地震・津波を体験した県民は少ないかもしれない。だが、57年前のチリ地震津波では3人の死者が出た(図3)ことを忘れてはならない。
県内市町村役場・役所の海抜は沖縄市の110.1メートルが最高で、本部町が一番低く、2.2メートル。東日本大震災では、局所的に40.1メートルの津波が確認されたという。日ごろから自分が居る場所の海抜を意識したいものだ。
【図1】2016年は約1万5000回の地震を観測
【図2】日本およびその周辺で発生した地震(2012年〜2016年)
沖縄地方は他の地方と同程度に地震が発生している
【図3】沖縄地方の被害地震(1664年〜2016年)
神谷晃さん
沖縄気象台地震火山課長
過去の大災害 人口の半数避難
水と風の備蓄を
災害時における沖縄ならではの備えとして、防災士の稲垣暁さんが挙げるのは「水と風の備蓄」だ。
まず飲料水。大人1人が1日に必要とする飲料水は通常2リットルと言われているが、「沖縄では最低3リットルは必要だろう。島国であるがゆえに、災害直後は他府県からの水の支援が望めないからだ」。
洗濯や手洗いなどの生活用水や、火災が起きた際の消火用水をいかに確保するかの問題もある。阪神大震災や熊本地震の際は地域の川や井戸の水を活用できたが、「沖縄の場合、排水で汚染されており使えない川がほとんど。救助の際は、泥や血が付くなど想像以上に手が汚れるし、高温多湿の沖縄では感染症の問題から頻繁に手を洗う必要がある。万一火災が起きても、消防車が入れない住宅密集地も多い」と指摘する。身の回りに使える川や井戸はないか、なければどうするか、家庭で、地域で、真剣に考える必要がある。家庭では普段からペットボトルや浴槽などに水をためておくことも重要だ。
また、沖縄で不可欠なのが暑さ対策。「以前、災害後の停電時を想定して地域の高齢者に避難訓練をしてもらったが、脱水症状などで厳しかった」。年間3分の1が熱帯夜になる沖縄では冷房があるのが当たり前だが、「扇子を持ち歩くなど自分で自分の体を冷やす手段、意識を持つことが重要」と説明する。
戦後の知恵に学ぶとき
さらに人口当たりの指定避難所が少ないのも問題だ。那覇市で見た場合、人口32万人に対し2016年現在、救援物資が届くなど一定の生活を確保できる指定避難所は40施設。「仮に1施設1000人入ったとしても全人口の8分の1。過去の大災害のデータを見ると、少なくとも住民の半数は避難所に行ったか、行く意思があったと考えられるため、那覇市ではほとんどの人が、車上やテント生活を強いられると予測される」と指摘する。
「復帰直後のつい40年ほど前までは、まだ電気も水道もない中で暮らしていた方々もいた。わずか40年足らずで、その記憶すら薄れていることが一番の災害リスク。戦後を生き抜いてこられた方々の知恵に学ぶとき」。家庭で、地域で、やっておくべきことを話し合い、行動に移したい。
左/熊本県益城町立益城中央小学校避難所に香川県の小学生から送られた「うちわ」。
右/沖縄の昔ながらの知恵にならい「クバオージ」を制作する沖縄国際大学の学生
壺屋のやちむん通りにある井戸「アガリヌカー」。地元住民はもちろん、観光客でも誰でも使えるようになっている
稲垣暁さん
防災士、社会福祉士。なは市民活動支援センター非常勤専門相談員
沖縄県内41市町村の役場・役所および県庁所在地がある付近の代表的な高さ
単位・メートル | 海抜一覧 |
110.1 | 沖縄市 |
99.0 | 宜野湾市 |
89.0 | 南城市 |
85.0 | 浦添市 |
73.0 | 読谷村 |
69.0 | 北中城村 |
54.0 | 金武町 |
46.0 | 八重瀬町 |
41.7 | 伊是名村 |
40.0 | 粟国村 |
33.0 | 伊江村 |
29.4 | 宜野座村 |
27.6 | 与那原町 |
27.5 | 東村 |
27.0 | 南風原町 |
23.7 | 嘉手納町 |
18.6 | 宮古島市 |
15.5 | うるま市 |
13.9 | 多良間村 |
12.5 | 南大東村 |
10.9 | 中城村 |
10.8 | 西原町 |
8.0 | 沖縄県庁 |
7.8 | 大宜味村 |
7.5 | 北大東村 |
6.9 | 恩納村 |
6.2 | 北谷町 |
6.1 | 与那国町 |
5.5 | 今帰仁村 |
5.5 | 久米島町 |
5.4 | 渡名喜村 |
5.0 | 伊平屋村 |
4.8 | 豊見城市 |
4.0 | 那覇市 |
3.7 | 名護市 |
3.6 | 糸満市 |
3.5 | 渡嘉敷村 |
3.4 | 国頭村 |
3.0 | 石垣市 |
2.5 | 竹富町 |
2.5 | 座間味村 |
2.2 | 本部町 |
※県内41市町村の役場・役所および県庁所在地の施設がある付近の代表的な高さ | |
参考:沖縄県海抜高度マップ |
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※図はすべて沖縄気象台提供 Mはマグニチュード
編集/上間昭一・徳正美
『週刊ほーむぷらざ』特集 いざ!防災
第1547号 2017年3月9日掲載