[彩職賢美]スタートアップ企業「H2L」創業者の玉城絵美さん|ロボットハンド発明、実用化へ|fun okinawa~ほーむぷらざ~

沖縄で暮らす・食べる
遊ぶ・キレイになる。
fun okinawa 〜ほーむぷらざ〜

沖縄の魅力|スマイリー矯正歯科

わたしらしく

彩職賢美

2015年12月10日更新

[彩職賢美]スタートアップ企業「H2L」創業者の玉城絵美さん|ロボットハンド発明、実用化へ

入院中「ベッドに居ても外の世界に触れられたら」と切望した自らの体験を元に、東京大学大学院博士課程に在学中、人の手を制御する装置「ポゼストハンド」を開発した玉城絵美さん(31)。自分の思いを形にし、研究し続けている。米誌タイムの「世界の発明50」にも選ばれ、世界中から注目を集める工学博士だ。

彩職賢美

タグから記事を探す


 

ひたむきに研究 思い形に

自らの体験を元に研究開発
スタートアップ企業「H2L」創業者
早稲田大学 助教
JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)さきがけ研究員

玉城絵美さん


工学博士で、新しいビジネスモデルを開発し、急成長を目指すスタートアップ企業「H2L」創業者の玉城さん。2011年、東京大学大学院博士課程在学中に、電気刺激で人の手を制御する装置「ポゼストハンド」を開発。例えば入院患者と外にいる人の両方で同品を付けていると、病室に居ながら外のものを触った感覚を体験できるという特徴がある。

研究者向けに開発し、学会で発表するとすぐさま多くの人の目に。翌年、米誌タイムの「世界の発明50」に選ばれ、世界中で注目されるようになった。

「欲しいと思った物を得られるのが楽しい」と、研究開発の魅力を語る。開発では「機械を作る工学系の技術と、筋肉を扱う生理学系の知識が必要で困難な部分も多かった」。自身は工学系が専門で、当時は腕の筋肉や動きの仕組みについては素人。1日13時間、毎日のように研究していたとも。研究装置の試作から実用化し汎用性を広げるまでに4年を要した。

玉城さんが工学系の研究者を目指したのは、高校から大学にかけて。先天性の心臓病が悪化し入退院を繰り返した。「1日の大半をベッドの上で過ごすのは快適だけど、外に出られない辛さも。ベッドに居ても外の世界に触れられるロボットハンドがあればと、考えるようになりました」と振り返る。

商品開発を目指し、琉球大学工学部情報工学科に進学。「入院しながら勉強ができ、環境に恵まれていました。私の研究に教授が一対一でディスカッションしてくれたことも。最長11時間話したこともありました」と周りに感謝する。

大学3年時、人とコンピューターの関係を研究する「HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション)」を知った。県内にはHCIの情報がなく、東京や大阪を中心に学会に参加したり、大学や研究所に行き情報を集めた。「県外まで研究を見に行く人はほとんどいなかったのですが、どうしてロボットハンドを作りたくて」と話す。

「実は私、あまり外出が好きでなく、家にこもりたい気持ちが強いんです」と玉城さん。入院生活が続き、外出できない辛い時間は自ら描く構想に没頭。そんな生活環境も玉城さんの研究熱心な姿勢を形成した要素といえそうだ。

大学卒業後は筑波大学大学院に進み、ロボットハンドの遠隔操作について研究。その後、「腕の感触と外の世界での体験」を連動させる研究のため東京大学大学院博士課程に。「研究成果を世の中で役立てるためには製品化する必要があって」と、博士号取得後に「H2L」を設立したのは2012年。さらなる研究開発を開始した。

ことし、ポゼストハンドを一般の人にも利用してもらおうと、手軽に装着できるよう改良した「アンリミテッドハンド」=表紙で腕に装着=を開発。これまた世界中から熱い視線が。「今、力を入れているのが触感なので、今後は嗅覚とか味覚の分野も研究したい」と玉城さん。さらなる夢をつかもうとまい進し続けている。



11月20日、沖縄県立博物館・美術館で「沖縄から世界に羽ばたく」と題した講演を行った玉城さん。学生や発明家、弁理士などが参加し、真剣に耳を傾けた=編集部撮影


 

玉城さんのハッピーの種

Q.沖縄の大好きなスポットは?

沖縄で好きなスポットは海です。沖縄に帰ってきたときは、海を目にすると心落ち着きます。眺めているだけで心が無になるところがいい。 普段は、いろいろと考え事が多いので、座禅のような感じで何も考えない時間も大切だと思います。特に沖縄のいいところはサンセットが身近に見られることだと思います。
 

Q.県内の発明を志す方へ一言

県内にも発明協会を中心とする一般支援機関があると思います。そういう機関を賢く活用することも大切。自らのアイデアを特許化することで企業や産業が注目するはず。特許といっても独占するのではなく、他人に使ってもらい収入を得たり、利用者により新しい開発につながることも。それで産業が生まれるのは大切なこと。
沖縄は元気な女性たちをはじめ、模合の付き合いなど、人と交流する機会も多く、多彩なアイデアが飛び出すと思います。みんなのアイデアをどんどん発信してほしいと思います。

H2L
http://h2l.jp



PROFILE
玉城絵美(たまき・えみ)1984年生まれ、北谷町出身。「H2L 」創業者。早稲田大学助教。JSTさきがけ研究員。06年、琉球大学工学部情報工学科卒業。08年、筑波大学大学院システム情報工学研究科修士課程修了。10年、米国のディズニー研究所でインターン。11年、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。同年、東京大学総長賞を受賞し、東大大学院総合文化研究科特任研究員へ。




週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
今までの彩職賢美 一覧


撮影/高野生優(フォトアートたかの)・編集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1196>
第1482号 2015年12月10日掲載

彩職賢美

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
安里則哉

これまでに書いた記事:816

編集者
日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。

TOPへ戻る