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2013年3月14日更新
原点「自然とともに繋がる命」
海んちゅ写真家 古谷千佳子のフォトエッセー「潮だまり」vol.24
原点
自然とともに繋がる命
憧れの海人オジィの生年祝いを撮影させてもらった2001年。そのころの私は「ひもじくないか?」とオジィの捕ってきた海の幸をおかずに、おなかいっぱいご飯を食べさせてもらっていた。
そのオジィの85のお祝いが旧正月明けに浜比嘉島であった。過ぎてしまえば、あっという間の12年。その間、海人オジィには海のいろんなことを教わってきた。変貌する海や自然、そして人との別れと出会い。以前よりぐんと数を増したオジィの孫やひ孫たちと、同世代の私の息子も連れてお祝いの席に座らせていただいた。
戦中戦後の苦しみや悲しみを乗り越え、海人として、一家の大黒柱として、精いっぱい暮らしてきた海人オジィの懐は深く温かく、夜遅くまで来客が訪れ、長寿にあやかり、三線に合わせて踊り明かした。
自然は常に変わり続ける。生々流転する中で、人はさまざまな生き物を食べものとしていただき、生きている。人間が環境の一部なのだ。そういった人と自然の関係など、海人オジィを通して人間の生きる原点を教えてもらっている。
海の生き物も、ほかの生物を食べて生きている。漁業資源の枯渇は、磯場やイノーなどの環境破壊と直接的につながっている。素潜りで海に入るという原初的な漁法は、限られた資源との向き合い方を私に考えさせるきっかけとなっている。
人間中心でない考えで、自然のことを考えていかないと、私たちは生きていくことができないのだ。 人間は死んだら終わりではなく、子ども、孫、ひ孫と繋がっていく。子供たちの未来は、これからの暮らしのあり方にかかっている。祖先崇拝の沖縄で、それを教えてもらった。そして、子育てをしていく中で、まだまだ学び続けています。
「潮だまり」も今回が最終回。長期にわたり応援して下さいました読者の皆様、本当にありがとうございました。私は写真家として、シンプルで大切な「原点」を伝え続けたいと思っております。また、どこかでお会いしましょう!
[文・写真]
古谷千佳子(ふるや・ちかこ)
那覇市在住。海の仕事に従事、スタジオで写真を学んだ後、海人写真家となる。海・自然と調和する人々の暮らしや伝統漁業を主に撮影する。TBS「情熱大陸」などに出演。著書に 写真集「たからのうみの、たからもの」、「脳を学ぶ2」(共著)ほか
http://www.chikakofuruya.com/
古谷千佳子のフォトエッセー『潮だまり』・この連載は今回で終了します。
週刊ほーむぷらざ 第1341号・2013年3月14日に掲載