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2024年5月9日更新

宜野湾市立志真志小学校の学校看護師 伊芸航さん|皆で学ぶ学校 支える看護師[共生社会支えるひと]

宜野湾市立志真志小学校で学校看護師として勤める伊芸航さん。医療的ケアが必要な児童の学校生活を支えている。その経験から、障がいの有無に関わらず同じ場所で一緒に学ぶインクルーシブ教育の大切さと、学校看護師の役割の重要性を感じていると語る。


子どもたちの成長が喜び

宜野湾市立志真志小学校
看護師 伊芸 航(わたる)さん



多様性を受け入れ力に
医療的なケアと観察を重視


新学期のスタートから1カ月。宜野湾市立志真志小学校に子どもたちの元気な声が響いている。

同校に勤める伊芸航さん(31)は、重症心身障害で医療的ケアが必要な塚本逸平さん(6)をサポートする学校看護師だ。常時、たんの吸引や胃に直接つないだ管から栄養を投与する経管栄養などのケアが必要であり、言葉による意志表示が難しい逸平さんのために、伊芸さんは表情や全身の状態を注意深く観察しながらケアを施す。

「逸平くんと関わって3年。脈や体温など数値で表せない部分を観察することで自信を持って判断できるようになりました」と笑顔を見せる。

逸平さんは教室の一番後ろの席で、特製の天板をバギーに装着し、教科書を広げ、授業を受ける。支援教師のサポートで、なぞり書きをすると「楽しい!」と笑顔が語り、休み時間に駆け寄ってくる友達には「うれしいよ!」と目を輝かせる。

「逸平くんは学校と友達が大好きなんです」と目を細める伊芸さん。「小学校では、しっかり座って授業を聞いているし、チャイムにも反応するなどすごく成長した」と喜ぶ。

「医療的ケアを提供することだけが学校看護師の仕事ではない」と強調する。例えば逸平さんの場合、「ずっと座っていると体がきついので少し抱っこしたり、横にしたり、マッサージをすると、力が抜けて楽になり、吸引の回数も減るんです。そうすることで、授業を受け、友達と過ごす時間が確実に増えます」と話す。「安全に安心して学校生活を送れるように医療的観察をすること、障がいがあってもなくても、共に学び、成長できる環境を整えることが大切な役割」と力を込める。


逸平さんは、教室の一番後ろの席で授業を受ける。写真右から、与久田順子教諭、玉城麻由子教諭、伊芸さん

同校の田中志郎校長や与久田順子教諭、玉城麻由子教諭も「全ての子どもたちが安心して学び、尊重し合える環境を作るために、学校看護師は大切な存在。逸平さんや子どもたち皆の成長を楽しみに温かく見守っていきたい」と伊芸さんに大きな信頼を寄せる。


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以前は、大学病院の集中治療室や手術を担当する看護師だった。家庭を持ち、子育てをする中で地域に目を向けるようになり、保育所で働く看護師としての道を歩み始めた。逸平さんと関わり、インクルーシブ教育(※1)の重要性を学び、大きなやりがいも感じている。周りの子どもたちも逸平さんを通じて医療的ケアに関心を持ち、「看護師になりたい」とか、「僕が医者になって逸平を治すから待ってろよ!」と言うことがある。「その言葉を聞いたときは、その場でボロ泣きしました」と伊芸さん。子どもたちが互いに支え合い、成長していく過程を間近で見ることができる、それがこの仕事の醍醐味だ。

※1 インクルーシブ教育とは
障がいの有無にかかわらず、全ての子どもが共に学ぶ仕組みのこと。互いの違いを認め合い、支援し合いながら共に学ぶことで、共生社会の実現を目指す。文科省はインクルーシブ教育システムの構築を推進しており、特別支援教育の必要な児童生徒への適切な支援の提供や、教育カリキュラムの柔軟な調整、教育施設の物理的なバリアフリー化など、多岐にわたる取り組みが含まれる。



 医療的ケア児は増加、看護師の確保が課題に 

日本では、医療技術の進歩などによって、医療的ケア児が増加。文科省によると、医療的ケア児の増加に対して学校現場で看護師の配置が追いついておらず、医療的ケア児の受け入れ態勢の整備や、看護師の確保、育成が喫緊の課題となっている。

 

沖縄では学校看護師の認知度が低く、非正規雇用という不安などから人材不足が続く。「学校看護師は今後ますます必要となる。雇用の安定と共に、看護師を育てる場でも医療的ケア児や学校看護師について、もっと学習する機会が必要」と訴える。

「教員、保護者、学校看護師それぞれが専門性を生かし、意見を出し合いながら、良い学校、良い地域を作っていきたい。インクルーシブ教育の推進に向け、とても大切な時期を迎えている」と伊芸さん。その思いを理解し、支えてくれる妻に「すごく感謝している」と話す。看護師として、親として、より良い学校や地域づくりに取り組む、その背後にまた、支える家族の姿がある。

今は、春の遠足に向けて準備をしている。「危ないからできないではなく、どうやったらできるか、という視点が大事。皆と協力し参加したい。きっと子どもたちの成長を感じられる日になるはず」。期待に胸を踊らせる。

※2 認定特定行為業務従事者とは
研修を終了し都道府県知事に認定された教員などのこと。一定条件の下、たんの吸引など五つの医療行為を実施できる。




 家族みんな笑顔の入学式 

塚本逸平さんの小学校入学式を笑顔で迎えた父親の信さん(右)と母親の奏子さん(左)。「伊芸さんは私たち家族にとって信頼できるスーパーヒーロー。医療的ケア児の未来を真剣に考えていて尊敬しています。これからも一緒に前を向いていきたいです」と感謝の思いを言葉にする。


 


プロフィル/いげい・わたる 1992年、宜野湾市出身。沖縄看護専門学校卒。琉球大学病院の心臓外科、手術室、集中治療室で勤務。2018年、呼吸療法認定士を取得。結婚、育児をきっかけに、学校看護師に。重症心身障害で医療的ケアを必要とする塚本逸平さんの保育所入所に伴い担当となり、以来、学校看護師として一緒に歩んできた。1男1女の父。


取材/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』共生社会を支えるひと
第1918号 2024年05月09日掲載

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