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2016年7月7日更新

[彩職賢美]結い帯師・我喜屋梨枝子さん|帯をインテリアに

才色兼備『沖縄で働く女性は、強く、美しい』

柔軟な発想で着物身近に



着物の販売はもちろん、着付け教室、琉装体験なども展開している我喜屋梨枝子さん(63)。中でも力を入れているのが、帯結びの美しさを生かし、色鮮やかなインテリアとして提案する「結い帯」だ。一方で、着物を着る機会を増やしたいと、イベントも開催。着物を楽しめるのはもちろん、地域の活性化にもつながっている。

着物に身を包むと、女性は女性らしく、男性は男性らしい所作を自然と意識できるようになる。近年は、若い人たちがおしゃれで取り入れるのも見受けられます。自分なりの楽しみ方を見付けてほしい」と我喜屋さん。日本の伝統文化の着物をより身近なものにしたいと奮闘中だ。

着物の魅力を伝える一方で、力を入れているのが、「結い帯」。結い帯とは、カラフルな帯を花やリボンなどの形に仕立て、室内に飾るインテリアタペストリー。外国や米軍基地内では、タペストリーを飾る文化があり、それを日本の帯で作ってみようと、外国人で同店の初代店主が考案。その品を我喜屋さんが多彩にアレンジし制作、販売しているものだ。 

「結び、絆、つながり」という意味を込め、すぐにほどけてしまわないよう、帯にハサミを入れることなく一本でさまざまなデザインに結び上げる。「結い帯も人と同じ。人の表情や言葉、しぐさの違いで相手に物事の伝わり方が変わるように、帯も結び方や大きさ、素材、模様など、一つでも変わると、その作品の持つ表情はさまざまに変わります」と説明する。

「気持ちに迷いや嫌な思いがあるときは、明日納品だとしても帯は触らない」と我喜屋さん。帯と向き合うときは、妥協は一切なし。結びのバランスが悪ければ何度でも結び直し、模様の配置が悪ければデザインを変更することも。顧客から持ち込まれた形見分けのような帯なら、なおさら。「染みがあっても故人の歴史になるので、隠さず結ぶことを考えます」と家族の気持ちも大事にしている。中には、「形見の品に息吹が感じられる」と涙を流す人も。「喜んでもらえ、結い帯師冥利に尽きます」と、励みになっている。


もともと、父親が設立した老人ホームで園長として働いていた我喜屋さんだったが、姉を子宮がんで亡くした後、自らも乳がんを発症。手術や、抗がん剤治療を乗り越え職場に復帰したが、体調を考え退職。その後、親しくしていた和物装飾品や着物を扱う店の店主から、「店を継いでほしい」と依頼され、引き受けたのが57歳のとき。「琉舞の経験があり、着物が好きで着付けの師範の資格も取得していたので、運命を感じた」と振り返る。2010年、沖縄市中央で店を開始した。

もっと季節に応じた和装の楽しみ方を提案したいと、3年前から地域の人たちに協力を依頼し、「浴衣deビアガーデン」を実施。約30人収容の沖縄市の会場は、ほぼ満員。参加者からは「洋服と違ったおしゃれが楽しめテンションが上がる」「新鮮な気持ちになれた」との声も。那覇市や名護市からの来客者もあり、地元の活性化にもつながっているようだ。

目指すのは、「地域の人が気軽に訪れる『街のサロン』」。物腰柔らかで親しみやすい我喜屋さんの店舗には、近所の人たちが「ゆんたくしに来た」「お裾分け持って来たよ」と、気軽に訪れる光景も。地域柄、外国人の常連客もおり、中には着物で来店する人もいる。「生かされた体、今の自分の好きな仕事を追及し、何かしら地域に還元していけたら」とニッコリ。多くの人とつないできた絆を大事に、今日も帯を結び続けている。

 

着物を着てビアガーデンへ

6月25日に沖縄市の中の町ビアガーデンで開催した「浴衣deビアガーデン」では、多くの男女が浴衣で飲食を楽しんだ。 「お祭り気分で楽しめるのが、いいですね。例えば、カップルであればお互いが浴衣を着ることで、違った魅力を発見したり、ゆったりめに着るなど自分でアレンジして楽しむのもいいと思います。夏場のうちは、月に一度のペースで浴衣を着て楽しめるイベントを開催したい」と我喜屋さん。次回は7月27日(水)に「浴衣deランチ」を予定している。


ビルの屋上で開催されたイベントには男女が浴衣姿で訪れ、飲食を楽しんだ。浴衣にハットを合わせたり、帯の部分に扇子をしのばせたりと独自のスタイルを楽しんだ=同店提供/写真
 

多彩なデザインの結い帯

店頭に飾られている新作で、掛け軸風の結い帯。きらびやかな帯の質感がゴージャスな印象に/写真

花をモチーフにした作品が主流で、帯の表と裏の色をうまく組み合わせたり、何度も折り重ねることで立体的に仕上げる/写真

「オブジェとして楽しむだけでなく、結婚式のウエルカムボードに添えるのもいいかも」。普段から常に結い帯のことを考えているという我喜屋さん。県内外からの発注はもちろん、自分の店に飾る商品を含めると年間に200本以上は作成しているという。「仕上がった結い帯をラッピングする際は、娘を嫁に出すような心境になるんです。『大切にしてもらってね』と、心の中でつぶやいてます」。
 

我喜屋さんのハッピーの種

Q.外国人客もよく訪れるのですね

アメリカをはじめ、中国、フィリピン、インドなど、多くの外国人の方が訪れます。意外に着物に対していろいろと勉強していて、感心します。中には日本の文化に習い、故郷にいる母親の88歳のお祝いに着物を送ってあげたいと、商品を購入しにくる方もいます。外国の方々にも興味をもってもらえて、私もうれしい。

 

帯と着物の店「我喜屋」

沖縄県沖縄市中央1-33-15
098-939-3696
AM11:00〜PM7:00
日曜定休 
ホームページ :http://yuiobi.com/
フェイスブック:www.facebook.com/gakiya.yuiobi



PROFILE
我喜屋梨枝子(がきや・りえこ)
1952年、今帰仁村出身。高校卒業後、一度は大阪で働いた後、帰沖。父が設立した老人ホームに就職。経理担当を経て、2代目園長に就任。勤務中、乳がんを発症。治療後、一時は仕事に復帰するも体調を考え退職。2010年、沖縄市に同店をオープンした。着物関連商品の販売をはじめ、着付け教室、琉装体験なども展開。現在、結い帯の制作・販売に力を注ぐ。



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撮 影/比嘉秀明
編 集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1220>・第1512号 2016年7月7日掲載

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安里則哉

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日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。

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