彩職賢美
2020年11月12日更新
[彩職賢美] 沖縄ガールズスクエア 代表の岩渕裕子さん|女性の起業 共に模索し応援
「趣味を生かして人の役に立ちたい」「育児中に困ったことを解決したい」という思いで起業する人は多く。「起業」は自分らしく生きる選択肢の一つだと思います。仲間づくりや、実践の場を提供することに力を入れており、共に考えて模索しながらサポートするのが」私のスタイル。「一緒に未来を作っている」と感じられるのがやりがいです。
実践と気付きの場を作る
沖縄ガールズスクエア
代表
岩渕 裕子 さん
自分らしい生き方を
独自の工夫でサポート
「方向性を私が決めるのではなく、『どんな進め方があるか』『問題をどう解決できるか』、相談者に寄り添って一緒に考え、模索しています」と、はつらつとした表情で話す岩渕裕子さん(37)。実践の場やコミュニティー作りなど独自の起業サポートに力を入れている。ハンドメイド作家やカメラマンなど、今までに支援した女性は100人以上。自身も、県産野菜や果物を使ったドリンクのカフェを経営する起業家の一人でもある。
結婚や育児でライフスタイルが変化しやすい女性。「『育児中にあったら便利だと思ったものを作りたい。他にも困っている人がいるはず』と、人の役に立ちたくて起業する女性が多い。女性目線の商品やサービスが増えることは、女性ならではの悩みや課題を解決する機会が増えるということ。それがより良い社会につながると信じています」
相談者に強く伝えているのは「お金をかけずにスタートする」こと。「リスクを抑えるのはもちろん、知恵を絞って取り組むと工夫する術(すべ)が身に付く。起業後の困難に直面したとき、その術が役に立つはずです」
プライベートでは、中学生の息子の母。学校行事にも積極的に参加している。離婚後は両親に子育てを助けてもらい、「やりたい仕事に打ち込めるのは家族のおかげ」。感謝の思いを表現する。
女性の起業応援が、自身にとって「自分らしい生き方」だ。「最近は働き方を見直す人が増えた。人の役に立っていると実感しやすいのが起業の魅力で、自分らしく生きる選択肢の一つだと思う」
8年前、「起業の知識がない人の方が先入観がなくて向いている」と声をかけられて、前代表が設立した沖縄ガールズスクエアのサポーターになった。女性たちが成長する姿に刺激を受け、「一緒に未来を作っている」と実感。事業を始めるまでの過程に楽しさとやりがいを覚えた。
その後、「都市部のように情報や支援が十分ではない地域の女性をサポートしたい」と考えるように。自身のファン作りと、社会からのニーズを確認できるようクラウドファンディングを活用して八重瀬町に姉妹組織を設立。昨年には二つの組織を統合して代表に就任した。
ポリシーは「まず自分でやってみること」。事務所のテーブルやホームページ、チラシなどは手作りしており、クラウドファンディングの経験も含めてそのノウハウは相談者に惜しみなく伝える。「経験したからこそできる提案をしたい」。言葉には自然と力が入る。
代表就任を機に、食関連での起業を目指す人の実践の場として、事務所内にトライアルキッチンを設置した。「起業はやってみないと分からない。気付いた課題は開業までに解決するといい」。若い女性にも情報を届けやすいようにと、SNSを活用し、ホームページも一新。国や県から委託を受けて開催するセミナーでは、「数年以内に起業した人を中心に講師を依頼する。起業に影響する社会情勢が受講者と近い方がいいと思って」と、独自の工夫が光る。
カフェの売り上げやトライアルキッチンの利用料で施設の運営を賄い、「起業を難しく考え過ぎないでほしい」という思いで相談料は無料に。「私の生活が変化して、事業の継続を悩んだ日もある」と岩渕さん。そのたびに「相談したい」という声を聞き「必要とされている」と、自らを奮い立たせてきた。「県内各地で、起業した女性が活躍できる場が増え、より多くの人が起業を身近に感じられたら」。そう語る目には使命感が感じられた。
食関連のサポートに注力
昨年設置したトライアルキッチンは、カフェの開店を目指す女性たちが週に1度、販売予定の試作メニューを販売して課題を見つけたり、顧客作りをする場として活用されている。「食関連で起業したい人は多い一方、廃業率が高いのも現実。開業前に経験を積んでもらえるような実践の場を作ってサポートしたかった。最低限の設備や器具だけでスタートして、必要になった時に他の器具はそろえればいい。起業も同じで、アイデアは実行してこそ価値が生まれる。まずは行動あるのみです!」
◆問い合わせ先 https://www.okinawa-girls-square.com
岩渕さんのハッピーの種
Q:息子さんとの時間を大切にしているそうですね。
息子の亮樹(12)と過ごす時間は、素の自分でいられる癒やしのひととき。今年は小学校の卒業記念の旅行が中止になったので、来年改めて一緒に行きたいです。また、事務所で仕事をする姿も積極的に見せています。将来、息子が「起業も選択肢の一つ」と考えてくれたらうれしいですね。
岩渕さんに聞いた! 起業のギモン
Q:どんな事業で起業する人が多い?
A:ものづくりや飲食サービス、衣食住関連で生活に身近なテーマなどさまざまです。会社員時代の経験やスキルに関連することを始める人もいますし、全くやったことがない新しいことを始める人も多いですよ。
Q:資金はどのくらい必要?
A:事業内容や、理想とするスタイルによってさまざまで一概には言えませんが、少ない資金で始めることをおすすめしています。無料で使えるSNSを通してファンづくりをしたり、中古の家具や家電を使うのもOK。事業の見通しが立ってからお金をかけるとリスクを軽減できます。
Q:いつ、何から準備したらいい?
A:すぐに起業できる状態でなくても、できる準備はたくさんあります。例えば、ファンづくりを兼ねてSNSの使い方を覚えたり、自分がやりたいことに似ているお店にお客さんとして行ってみるのもいいでしょう。イベントに出店するなどまずは今できることを実践するのもおすすめです。また、結婚している場合は、配偶者の理解と協力が不可欠。家族への説明も準備の一つです。
プロフィル
いわぶち・ゆうこ
1983年、那覇市出身。高校卒業後は公的機関で非常勤職員として勤務した後、県外へ。24歳の時に結婚、出産。帰沖後2012年から、女性の起業支援を行う「沖縄ガールズスクエア」のサポーターとして活動。同様の活動を行う姉妹組織を2015年に立ち上げた後、二つの組織を2019年に統合。2代目の代表として活動中。八重瀬町にある事務所は、沖縄県産の野菜や果物を使ったドリンクを販売するカフェ「はたけかふぇ。」としても営業している。
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撮影/比嘉秀明 文/比嘉知可乃
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1369>
第1736号 2020年11月12日掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 比嘉知可乃
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新人プランナー(企画・編集)
1990年生まれ、うるま市出身。365日ダイエット中。
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