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2024年8月29日更新

[沖縄スポット]歴史薫るグスク信仰残る拝所|南城市大里・西原区|シマ散策(拡大版)

今回訪ねたのは南城市大里の西原区。西原区長の平良務さん(66)と、地元のことに詳しい玉城得繁さん(93)、宮城盛時さん(84)に三山時代の島添大里グスクや拝所・ウフユーなどを案内してもらいました。琉球の歴史を感じさせる史跡など見どころがいっぱいです。

大里城趾公園の展望台からの眺め。中城湾を一望  A 
 

城趾から公園に 絆深める綱曳(ひ)き

【南城市大里西原区】

南城市の北側に位置する西原区は、標高150メートルほどの丘陵台地にある。集落の北側には、県内でも有数の規模を誇る島添大里グスクがあり、城とその周辺は公園として整備され、展望台からは中城湾が一望できる。拝所も数多くあり、綱曳(ひ)きなどの伝統行事が大事に受け継がれている。


三山統一の足掛かりの地
戦後 行楽地として賑(にぎ)わう


島添大里グスク(以下、大里城)は14世紀ごろ、島尻地域で勢力を誇っていた島添大里按司(あじ)が築いたとされる。15世紀の初めに尚巴志が攻略して、三山統一の足掛かりになった。東西200メートル、南北100メートルにわたる県内でも有数の規模を誇るグスクで、北と西側は断崖になっていて、南から東側にかけて石積みの城壁があったという。区長の平良務さんは「石垣は首里城を築城する際に持ち出され、また、戦後も近隣の道路整備の資材に使われて大部分が失われた」と説明する。グスク内には拝所が点在し、地域の信仰の対象でもある。
 
島添大里グスク内の広場。かつては行楽地として県内の学校の遠足で利用された  B 

戦後は琉球政府によって観光名所として整備され、1960~70年代には行楽地としてにぎわったという。玉城得繁さんは「県内の学校の遠足で盛んに利用された。中部から訪れる学生もいた」とふり返る。現在は大里城とその周辺が大里城址公園として整備され、パークゴルフ場や遊具がある。園の東端にあるミーグスクは大里城の出城といわれ、眺望がよく展望台が設けられている。宮城盛時さんは「東に中城湾、西に慶良間諸島が一望でき、首里城をはじめ、佐敷上グスク、中城グスク、勝連グスクが見通せる景勝地」と話す。

また、大里城の近くにあるチチンガーは正月の若水を汲むところで、水道が整備されるまでは集落の共同井戸として利用された。今も地域で大切にされている。

 
正月の若水をくむチチンガー(左)。地下にあり、岩盤を削って井泉に下りる階段(右)を設けている。岩壁には石垣を積んでいる  E 
 
グスクの奥には、按司の住居である正殿があったという。建物の柱の礎石が見つかっている  C 
 
グスク内にあるカニマン御嶽(うたき)。ほかにも拝所が点在していて聖地として信仰されている  D 
 
グスクに残っている石垣。大部分が失われている
 


綱曳きなど行事で巡る拝所
鬼ムーチーゆかりの丘陵


西原区には拝所が数多くあるが、中でも集落の中央付近にあるウフユーは祭祀の時に最初に拝む重要な拝所で、毎月旧暦の「一日十五日」のウチャトー(ヒヌカンと位牌の拝み)も欠かさず行っている。稲の収穫を感謝する六月ウマチーや豊年を祈願する綱曳き(アミシ綱)の行事の際は、ウフユーをはじめ区内19カ所の拝所を巡る。「旧暦6月の14日にウマチー綱(子ども綱曳き)、26日にアミシ綱が行われる。アミシ綱では北と南に分かれて勝負し、地域で受け継がれてきた棒術も披露される」と玉城さん。
 
集落のメインストリートである中道では、旧暦6月に綱曳きが行われる。写真提供・西原活性化協議会  F 
 
綱曳きが行われる集落のメインストリートにあたる中道には石垣が散見され、昔ながらの沖縄の集落の風情が感じられる。沖縄戦の激戦地だった本島南部。西原区も多大な被害を受けており、当時を物語る銃弾の跡が見られる塀も残っている。

集落の南西のギリムイグスクと呼ばれる丘陵には、鬼ムーチーの伝説に登場する鬼が住んでいたという言い伝えがある。「大里城が築城される以前のグスクで、玉村按司が治めていたといわれる」と宮城さん。
 
石垣に残った銃弾の痕。弾が貫通している箇所もあり激戦を物語る
 
集落の重要な拝所であるウフユー  G 
 
集落に伝わる鬼ムーチー伝説を基に、区で絵本を作成=右上。旧暦12月8日のムーチーでは子どもたちに読み聞かせをしている。写真提供・西原活性化協議会
 
鬼ムーチーの伝説に登場する鬼が住んでいたとされる丘陵・ギリムイグスク  H 
 

案内してくれたのは

左から区長の平良務さん、地元のことに詳しい玉城得繁さん、宮城盛時さん


取材/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』シマ散策 
第1934号 2024年08月29日掲載

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