本村ひろみ
2018年1月29日更新
「もうひとつの呼吸」|本村ひろみのコラム
フリーパーソナリティーの本村ひろみさんが、暮らしを楽しむアンテナを巡らせて日々の沖縄・風景をレポートします。
fun okinawaコラム「おきなわ 暮らし散歩 Vol.39」
街歩きの取材の息抜きは本屋さんの地下にある
いつも静かな本棚のコーナー。
探しものをしているわけではなく
新刊本のタイトルを目で追ったり
画集や写真集を広げてぼんやりめくったりしているだけ。
でも料理本とか裁縫や刺しゅうの本は
ついついやる気にさせる面白さがあるので
この頃はかなりチェックしている棚のひとつ。
自分の部屋ではないけど
雰囲気は「ひとりの空間にいる時のような呼吸」ができる場所。
雑踏のなか
ひとけの多い場所を抜けて整然と並ぶ本の前で
紙の匂いに包まれる
もうひとつの呼吸
さて
ピンク色のドットが街の風景に少しずつ増え始め
今年も桜の季節がやってきました。
川沿いの桜並木
公園を縁取る桜の木々
街角のあの界隈(かいわい)
いつもの散歩道
誰もが自分だけの桜の木を持っているように
今年もまた春が巡って
「お元気でしたか?」と
蕾(つぼみ)をほころばせ
ゆっくりと笑顔のピンクが南下しています。
美しい季節の到来に深呼吸。
沖縄県立博物館・美術館が開館10周年を迎えた。
記念企画として
「邂逅(かいこう)の海 交差するリアリズム」展が2月4日まで開催されている。
県内外で活躍をされ、今回の展覧会に出展されている画家の山城えりかさんから
お手紙を頂き、先日アーティストトークショーに出かけた。
山城さんの作品は会場入ってすぐの場所
静かな弦楽器の調べがはじまるように
作品の前に静謐(せいひつ)な空間がたち現れる。
柔らかいミルクティーの色彩に
夢を見ているような表情の少女
遠い昔に見た草花にリズミカルなキノコたち
うさぎや鳥、蝶や黒猫といった動植物が
なんとも居心地良さそうにキャンバスのなかに存在している。
芥川賞作家 金原ひとみさんの文庫本『憂鬱(ゆううつ)たち』や
単行本『クラウドガール』ほか
直木賞作家の装画でも活躍している山城さん。
彼女の世界観は作品に別の呼吸を与える。
それは本の表紙の少女が
主人公から魂を吹き込まれて動き出し
想像の森の案内をしてくれるナビゲーターになったかのよう。
トークショーの最後に山城さんが言った一言が心に響いた。
「絵の中の少女には前髪を描かないんです。モナリザのように」
その言葉がずっとリフレインしている。
いくつもの時間の中で
自分だけのもうひとつの呼吸に出会うため
明日の春に出会うため
さぁ歩き始めましょう。
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おきなわ 暮らし散歩 vol.39
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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。