「それでも変わらないもの」|本村ひろみのコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

本村ひろみ

2018年10月3日更新

「それでも変わらないもの」|本村ひろみのコラム

フリーパーソナリティーの本村ひろみさんが、暮らしを楽しむアンテナを巡らせて日々の沖縄・風景をレポートします。fun okinawaコラム「おきなわ暮らし散歩 Vol.47」

 

台風接近の蒸し暑い台所で栗の皮を黙々とむいた。
利平栗という大きな栗を60個ほど
ラジオを聞きながら50分くらいゆでて
そのあと少し冷まして軟らかくなった栗のとがった部分からむいていく。
コロンとした丸い三角の形が崩れないように
今夜は栗ごはん!
実家にもおすそ分けで持っていこう。





 
夜半過ぎから窓をたたく風と雨。
大型台風で庭の木々がビュンビュンと音をたててしなっている。




どこからか聞こえてくるゴーンとかガーンとかいう金属音
突然鳴り響く携帯電話からの避難勧告
子供の頃はただ楽しかった台風も大人になると心配ばかり
実家のあたりは浸水していないかな
宮古島の義母はひとりで大丈夫かな
いつも遊びにくる近所の猫たちはちゃんと避難しているかな
 
「おおきな被害もなく無事に過ぎていきますよう」
ほんと、ただ祈るだけ


 
気がつけば、外は静かで少し明るくなって子供の声も聞こえる。
台風の目のなか
母に電話をしたら倒れた草木を片付けていると言う
またすぐに吹き返しがくるよ、と言ってものんきにハイハイ大丈夫という返事
窓の外、スズメが鳴いている


台風で閉ざされていた世界がいきなり動き出したので
なんだかラジオのボリュームを大きくしたら
土曜の午後の番組で
岡田奈々のヒット曲「青春の坂道」が流れてきた
「このレコード持っていたよー」とラジオのむこうでおしゃべりしている2人に合いの手をいれる。いつだってラジオは話し相手。
 

しばらくすると、あたりは急激な暴風雨に包まれた
けーしかじ(返し風)はさらに荒れ狂う
庭にある背の高いヤシの木が心配だ
風の音を怖がって猫も小さく丸くなっている
誰もが不安な夜、ラジオから静かに台風情報が流れている
 
今年は台風やゲリラ豪雨、地震に竜巻と
生活が天候に振り回された
週末ごとにやってくる台風にジリジリして
天気予報と空を交互にながめる
手のひらで世界が身近に感じられる時代になっても
天気は変えられない。
すべてを無に帰す自然をまえに
せつない感情しか湧いてこない、と思っていたら
鳥の鳴き声を聞いた。
花の匂いがする
台風のあとの北風にのって季節が立ち上がっていた
赤やオレンジの秋色をたずさえて




 
10月は各地で豊年祭が行われる
秋の祭りは風情がある
収穫に感謝し新しい年の五穀豊穣を祈る
どんなに生活様式は変わっても
それでも変わらないものがある。

 


そんなことを考えながらホクホクする栗ごはんをいただいた。
食欲の秋、到来。



 

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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