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金城真知子

2016年7月20日更新

マースデー(塩代)|金城真知子のコラム

「沖縄で、暮らす・はぐくむ Vol.21」
沖縄で暮らす3児のワーキングママとして、家族の日常を綴っていく。

金城真知子

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今日は首里出身の私の祖母の話。
私の…と言っても、正式には夫の母方のおばあちゃんで、90歳を過ぎた今でも、すごく品があってすてきな女性である。

初めての子を身ごもったころ、しばらくの間、おばあちゃんの実家に住まわせてもらっていた事もあって、いつも気遣ってくれる優しいおばあちゃん。3人目が産まれてからはあいさつに行けずにいる私のために、つえを突きながら小さなアパートに駆けつけてくれた。
その時は「赤ちゃんがもう少し大きくなってから、『佳き日を選んで』私の家にいらっしゃいね」と言葉を添えて帰って行った。

それから慌ただしい毎日に流され、気が付けばもう娘は生後9か月。体格も立派に育ってきたというのに、うっかり物の私は、おばあちゃんの家に娘を連れて行く事をすっかり忘れてしまっていた。

仕事のため、夫のお義母さんに赤ちゃんを預かってもらった日。
お義母さんが「今日は、首里のばーちゃんの家にも連れて行ったからさ~」と、私にお祝い袋を「はい」と。そこには、首里のおばあちゃんのシッカリした文字で、「ハチアッチー」「マースデー(塩代)」と記されていた。



ちなみに「マースデー(塩代)」というのは、赤ちゃんへのご祝儀。もともとは、塩の持つ魔よけに加え、生活必需品という意味合いから、一生食いっぱぐれないようにという願いを込めて、出産祝いやハチアッチーの時に、赤ちゃんの額に塩を乗せるという風習があったそうだ。それが、塩の代わりに「塩代にしてね~」とご祝儀を渡すように。これが「マースデー」のいわれである。

さらに言うと、赤ちゃんを実家に連れていき、トートーメー(仏壇)のご先祖さまに手を合わせる「ハチアッチー」は、生後1カ月ごろに行うのが習わしなのに…、首里のおじいちゃんやご先祖さまには、こんなにもご報告が遅くなってしまった。それもハチアッチーに母親が不在というありさま。
おばあちゃんの手書きの文字を見ながら、いろいろな場所で「家族が大事~!」なんて言っている自分自身に、「はぁ~」とため息が出てきた。ごめんね、おばあちゃん。


 

『真綿に包まれた優しい言葉』

首里のおばあちゃんは、折に触れて、私にたくさんの沖縄の宝物たちを教えてくれる。
妊娠後期で、おなかが大きくなったときは「妊婦がね~、手を高く上げるとへその緒が絡みやすいって聞いた事あるから、洗濯干しは誰かに任せて、あんたは休みなさい」と。
赤ちゃんが産まれてからは、
「ま~くま~く寝んとーんや~」(おいしいモノを食べている時のように、幸せそうに眠っているね~)、「上手に育てているね」とか、「赤ちゃんはね、ヤナムン(悪い霊)を見やすいから、枕元に小さいハサミを置いておくといいんだよ~」とか…。
会いに行く度に、優しい言葉をプレゼントしてくれる。
現代において、おばあちゃんが言っている内容が事実に合っているとかどうかなんてことじゃなくて、「相手を気遣う気持ち」がすごく優しくて温かい。首里のおばあちゃんは、いつでも言葉を真綿に包んで優しく手渡してくれる…、そんなイメージだ。

久しぶりに、おばあちゃんに会いたくなっちゃった。
ちょっと時間ができて、急に連絡したら、「今日は、お迎えの準備ができていないから、また今度ね~」なんて、身なりを気にする品のあるおばあちゃん。
逆に予定を立て会いに行くと、足が痛いはずなのにお菓子やジュースを大量に買い込んでもてなしてくれるものだから、どっちがいいのか分からなくなってしまうのだが…。
でも、やっぱり会いに行こう!
おばあちゃんの真綿の言葉を、受け取りに。

 


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フリーパーソナリティー
沖縄県南城市出身。琉球大学卒業。
ラジオパーソナリティー・ウェディング司会者・スマイルトレーナー®
FM沖縄『ちゅら玉・浪漫紀行』ではライター兼ナレーターを担当。
沖縄の自然や習慣・格言などを題材にウチナーグチを交えて紹介。
本コラムでは、沖縄で暮らす3児のワーキングママとして、家族の日常を綴っていく。

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