沖縄の女性フラワーアーティスト、伝統と革新で日本の美を継ぐ|彩職賢美

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「日本の伝統の中にある美しさを、現代の感性で表現し、次世代へつないでいきたい」。20代から続ける生け花をベースに、花で記憶に残る空間演出を手掛ける宮平亜矢子さん。伝統と革新をテーマに現在、力を入れているのが、しめ縄を用いたアート作品「KA-DOH JAPAN」。新しい日本のスタイルを、沖縄から世界へ発信している。(文/比嘉千賀子・ライター、撮影/比嘉秀明、撮影協力/観宝堂 THE PARKSIDE GALLERY)

株式会社アイテラス 代表取締役 フラワーアーティストの宮平亜矢子さん

花で心に残る空間と人生を

受け入れ、創造し、つなぐ 挑戦を楽しみ世界を翔る

「心が動く瞬間を大切に、花で記憶に残る空間を生み出していきたい」と語る宮平さん。花を通して空間だけでなく、触れる人の心と人生に新しい物語を紡ぎ出す。それが伝統と革新に軸足を置く、創作活動の原点だ。

二十歳の時、「日本の伝統を伝える人になりたい」という思いから門をたたいた華道の世界。生け花に沖縄の花々をふんだんに取り入れ、南国ならではの豊かな色彩と造形美が調和する「琉球スタイル」のフラワーデザインを確立。沖縄の自然にインスピレーションを得て創り出す優美な世界観が国内外のラグジュアリーブランドやホテルの目にとまり、空間演出やプレスイベントを数多く手掛けている。

仕事でもプライベートでも、選択の基準は「大変そうだけど、ワクワクすること」。ハイレベルな世界に飛び込むチャレンジを繰り返し、花と空間演出の可能性を探求するなかで、伝統と革新を強く意識するようになった。「現代の暮らしに合う新しい形にできたら、もっと長く、大切に使っていただけるのでは」と、心ひかれたのがしめ縄だった。

人との縁、神様とのつながりを結び、空間を清め、心を整えるものとして、古来から受け継がれてきたしめ縄と、上質なアーティフィシャルフラワーを使ったアート作品「KA-DOH JAPAN」を発表。2024年の東京インターナショナル・ギフト・ショーへの出展をきっかけに注目され、全国で展覧会を行う。日本酒の瓶を華やげる飾りに、天国へ旅立ったペットを供養する贈り物や企業の周年を祝う記念の品にと、さまざまな贈る思いを満たす創作を続ける。11月にはニューヨークで開かれる展覧会にも出展。海外展開への新たな一歩を踏み出した。


大学卒業後、宅建士の資格を取得し、家業である不動産業に携わった。生け花をきっかけに表現することへの興味が深まり、カメラや絵画、水墨画、心理学などを学んだ。「新しい世界を知ること、そこで出会う先輩方との交流が、たくさんの気付きを与えてくれました」

2011年、「花の力で、人生にかけがえのない瞬間を」をコンセプトに起業。女性向けのイベントを開催し、ブログでは日々の暮らしや花のある生活を発信。順調ではあったが「花を通じて伝えたい思いを、より自分らしく表現したい」との思いが深まり、ブランディングを学んだ。言葉や写真、発信のあり方を見つめ直し、沖縄で育まれた感性に、都会的な美意識を重ねた世界観を形にしていった。企業に向けても、花による空間演出の魅力を伝えるようになり「自分の感性を大切にしながら、花でできる表現を広げてきました」。その歩みとブレない姿勢が、活動の幅を広げるきっかけになった。

仕事も生きることも全て、まずは現状や相手を受け入れて、クリエイトすることが前提。受け入れる心を持てたのは、先天性の遺伝子疾患のある息子の子育てがきっかけだ。「戸惑った時期もありました。でも、全てを受け入れると決めたら、物事をいろいろな視点や角度から見られるようになった。息子たちのおかげで、二十歳の時になりたかった、住む場所、立場、状況にとらわれず、“どこにでもいける人”に近づけたかな」と感謝する。

12月には沖縄で初めての展示会「継華(けいか)」を開く。「伝統を守るだけでなく、今の感性を重ね、花と思いをつなぎ、日本の美を未来へつなぐという思いを、作品と空間を通じて感じていただければ」。挑戦を楽しみ、世界を翔(かけ)る姿から目が離せない。

一貫性、五感を満たすことへのこだわり

「何事も、こだわり抜くことが大事」と話す宮平さん。KA-DOH JAPANでは、作品を収める箱、説明書の一枚一枚まで、デザインや質感にとことんこだわっている。

花と縄をモチーフにしたブランドロゴと文字がゴールドで型押しされた貼箱=写真=は、「2年前にインターナショナル・ギフト・ショーに出展したときに、伝統と革新をテーマにしたブースで出合ったお箱です。作り手は創業70年の有田の老舗企業で、同じ思いとデザイン性の高さに共鳴。すぐにお声を掛けてお箱作りを依頼しました」と笑う。その道のプロの手を借り、入り口から出口まで一貫したブランディングを欠かさない。

宮平さん提供

KA-DOHを伝えるためのプロモーションビデオも撮影。日本の伝統音楽にギターを加えて新しい音楽を作り、次世代へ継承する試みを行っている音楽プロデューサーの渥美幸裕さんに、KA-DOH JAPANをイメージしたオリジナル楽曲の制作を依頼した。

2026年12月12~13日に沖縄県那覇市の観宝堂THE PARKSIDE GALLERYで開く展示会に向けて、オリジナルの香り作りも進行中。「五感に訴えかけ、帰った後も記憶や余韻が残る展示会を目指しています」。

音楽やアートで美の基準高める

「美しい物に触れることは、自分の中にある『美の基準』を育てること。花から少し離れて音楽やアートに触れ、心が動く時間を持つことを大切にしています」と宮平さん。以前、ジャズシンガーの与世山澄子さんのボイストレーニングを、4年間受けていたそう。「歌だけでなく、先生のたたずまいや表現に触れることも、私にとって大切な学びの時間でした。優れた人や空間から受け取った感動を、いつか自分の手を通して、新たな作品へと昇華していければ」

仕事とは違う、好きな表現に触れる時間が、また花を創る際のアイデアや喜びにつながっているよう。

旅先で出合ったエスパシオ ナゴヤキャッスルのアートな空間(宮平さん提供)

プロフィル

みやひら・あやこ
1971年生まれ、沖縄市出身。20代で花の世界に入り、生け花に南国の花々の色彩と造形の美しさを融合させた「琉球スタイル」のフラワーデザインを確立。2011年、株式会社アイテラスを設立。国内外のラグジュアリーブランドやホテルの空間演出等を多数手掛ける。24年、日本の伝統美をしめ縄と現代的な感性で表現した「KA−DOH JAPAN」を発表。伝統的かつ革新的な創作を手掛ける。

■株式会社アイテラス
https://ai-terrace.com


毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」彩職賢美〈1467〉
第2046号(2026年10月29日発行)より転載