[高齢者の乳がん①]沖縄で65歳以上の患者が増加|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回から3回にわたり、増えている高齢者の乳がんにスポットを当て、ハートライフ病院乳腺外科センター長の柏葉匡寛先生に話を聞きます。

平均寿命の長さや肥満率の高さも要因/閉経以降でも油断は禁物!

Q1 高齢者に乳がんが増えている?

かつて乳がんは40代から50代にかけて多いことで知られていましたが、近年では65歳以上の高齢者の患者が増えています。全国乳がん患者登録調査報告によると、年間9万8300人が乳がんに罹患(りかん)する中、70歳以上の患者が約3万1000人で31.8%を占めています。女性ホルモンのエストロゲンにさらされる期間が長いほど乳がんを発症しやすくなるのですが、初潮年齢の低下と閉経年齢の上昇により月経のある期間が長くなってきたこと、未婚・晩婚化や少子化で月経が止まる妊娠期間が短く、授乳経験も少なくなっていることなどで、年々発症リスクが高まっています。

それら環境因子に加え沖縄女性の平均寿命は長いため、本来遺伝子異常の蓄積が原因である乳がんが高齢で増加しているわけです。また、職場検診で乳がん検診を受けていた方が、退職後に検診を受けなくなり、進行してから見つかることも多いので、シルバー世代を元気に生活されるため、ぜひ60代以降も検診を受けてほしいと思います。

Q2 沖縄県は特に増加?

沖縄県は全国と比較して60代以降の乳がん患者が特に多い状況です。特に60代から急増し、70代に大きなピークがあります。その理由としては、県内の成人女性の肥満率が全国平均を大きく上回るトップレベルであること、沖縄県の女性の平均寿命が全国平均よりも長いこと、運動習慣が乏しいことなどが考えられます。ちなみに当院の乳がん患者のうち54%が60歳以上となっていますが、乳がん発症のリスクファクターでもある糖尿病通院中や、他のがんの術後検査で乳がんが見つかり紹介されるケースが多いことも、高齢患者の多さにつながっていると思います。

特に沖縄県で増えている高齢者の乳がん

グラフは上皮内がんを含む乳がんの診断時の年齢と、人口10万人当たりの年齢階級別罹患率。全国に比べて沖縄県は60代以降の乳がん患者が特に多いことが分かります。その要因としては、女性は全国平均よりも平均寿命が長いこと、20歳以上の女性の肥満率が全国平均を大きく上回っていることなどが考えられます。

Q3 高齢だと治療が違う?

高齢であっても基本的には乳がん診療ガイドラインに基づき、乳がんのタイプやステージなどによって、手術、薬物療法、放射線療法、最近では免疫療法などを組み合わせた、もっとも効果的な標準治療を目指します。ただし、高齢の方は他の病気で治療を受けていることも多く、同じ年齢でも体力や臓器機能に個人差があるので、今後の余命を含め十分考慮する必要があります。

他県なら本人や家族が「もう高齢なので、負担の大きい手術はちょっと…」と尻込みすることもありますが、長寿県の沖縄では体力的に問題なく治療に積極的となるケースが珍しくありません。私も当院でカジマヤーを迎えた97歳の進行乳がん患者に全身麻酔下で30分程度で出血もほとんど無く全摘手術をしたことがあります。手術当日の夜にはしっかりと食事をとることができ、合併症もなくお元気に退院された姿が忘れられません。


次回は、高齢者の乳がんの治療について聞きます。

教えてくれた人

かしわば まさひろ/ハートライフ病院乳腺外科センター長
医師、医学博士。日本乳癌学会指導医。日本乳癌学会ガイドライン(薬物療法)作成委員や乳がん研究団体JBCRG理事を歴任。さまざまな抗がん剤の開発治験や標準治療の確立に携わる。モットーは「世界的な標準治療を安全かつ高いレベルで提供する」。

お問い合わせ

社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院
沖縄県中城村字伊集208
電話 098(895)3255


取材/堀基子(ライター)
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(144)
第2030号(2026年7月9日発行)から転載