看護師で介護支援専門員の資格も持つディロング直美さんが、父親を家族で13年間在宅介護した経験をつづります。(文/ディロング直美 「家族介護のwa」代表)
自宅復帰前の介護も大切に
急性期の治療が終わると退院の日を迎えます。退院先は患者さんの状態やご家族の介護状況によってさまざまです。脳梗塞で入院・治療した父の場合は、麻痺(まひ)がある手足や発語、飲み込みの訓練が必要でしたので、リハビリ目的で回復期病院へ転院しました。
退院予定が一変
自宅から近かったこともあって母は毎日面会へ。リハビリの様子を見学したり「ボケ防止」と言って話をしたり、音楽鑑賞が好きな父のためCDプレーヤーを持参して一緒に音楽を聴いたり。退院が近づくと、父のリハビリを担当している理学療法士と作業療法士が一緒に自宅に来て、家屋調査を行いました。外階段や室内の段差の高さや間口、浴室やトイレの状況を調べ、浴室の椅子や手すり設置の必要性など、父が生活しやすく転倒などの事故防止にもなるように、退院前に福祉用具や住宅改修の提案をしてもらいました。その時は父の機能回復が良く、準備も浴室用の椅子程度で、外階段の上り降りができるよう病院で階段を使った訓練を追加してくれていました。
退院の日を前に、父も家族も準備を整え自宅へ退院する予定でしたが、急性胆のう炎を発症したことで一変。長い入院生活と向き合うことになったのです。
本人の不安やわらげる
急性期病院へ転院し緊急手術を受け、術後に精神状態が不安定になりながらも、リハビリ目的でいったんは回復期病院へ戻る形で転院しましたが、さらに精神状態が悪化。抵抗や暴言、喫煙や帰宅の願望が強過ぎて「言う通りにしないと病院に火をつける、警察を呼べ」など脅迫するような言動でリハビリもできないので、精神を安定させることが優先と精神科病院へ転院になりました。表情も態度も別人のようになってしまった父に母はショックを受け、一時は母の体調も崩れてしまいました。
精神科病院では興奮状態が見られ、「家族に会うことで帰宅したい願望が強まり症状が悪化する可能性もある」と説明され面会は控えていましたが、病状も少しずつ改善し、徐々に家族での面会や外出ができるまでに回復しました。
父自身も病状の変化が理解できていなかったのですが、それ以上に「家族が病院にとどまらせて見捨てるんじゃないか」と不安に感じている言動もありました。父に、そうではないこと、病状が良くなったら家に帰れることを伝えるため、できる限り面会に行き、ドライブや家で食事をするなど外出も増やし、自宅退院を目指していましたが、なかなか叶いませんでした。
一緒に楽しみ連帯感
介護と聞くと、自宅でご家族のケアをすると思われがちですが、医療機関や施設への入院・入所の目的・目標をご本人とご家族で理解して、面会や外出など家族としてできる関わりを持つことも介護の一つです。
面会で話をして好きな音楽を聴けるようにしたり、病院や施設敷地内でも一緒に散歩をして外の空気に触れ、草花を見て季節を感じたり、可能なら飲み物やお菓子を一緒に食べるとちょっとしたピクニック気分になります。ご本人がいつも過ごしている病室や居室を出て少し環境を変えるだけで、気分転換になります。
わが家は面会時間を大切にし、施設のイベントには積極的に参加。一緒に楽しみ、連帯感を持てるように心がけました。自宅復帰に向け、父はリハビリ、家族は環境調整を互いに頑張ろうと意識を共有しました。
入院入所中は1人で過ごす時間が多く、ほとんどの人は家に帰れるのか不安を抱えています。1人で治療やリハビリを頑張っているご本人を置き去りにしないよう、自宅復帰前の介護も大切にしたいですね。

執筆者プロフィル

でぃろんぐ・なおみ/看護師。亡き父を13年間介護。2023年「家族介護のwa」設立。「ワクワク介護叶(かな)え隊」の翁長久仁子さんと共に介護の悩みを話し情報交換できる「介護の語り場」開催中
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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」13年間の在宅介護日記(4)
第2030号(2026年7月9日発行)から転載