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2019年12月31日更新

首里城から末吉宮へ 歴史ある初詣コース|地元の宝ありんくりん・新春特別編[9]

執筆:竹内章祝
新年を迎えると、寺社へ初詣に行く方も大勢いると思います。そこで今回は初詣のコースとして、琉球王朝時代から残る首里の参詣道をご紹介します。

 参詣道の地図 

出発は「首里城」から!

県民のみならず、日本中が大きなショックを受けた首里城の火災から2カ月が経過しました。現在は再建に向けて着実に前進しています。そこで、あえて首里城を出発地とし、琉球国王も通った首里城~末吉宮に至る「いにしえの参詣道」のご紹介をします。


①首里城~龍潭池

守礼門から県立芸術大学に向けて走る首里城の側道から左手の公園に入り、龍潭池に向かいます。両側に池が見えてきたところで左側の階段を下りると、龍潭池ほとりの遊歩道へ。アヒルや池を泳ぐ魚、亀のかわいい姿が確認できます(王朝時代のルートは池の対岸ですが、現在通行止め)。
 
龍潭池の散策路

②中城御殿

龍潭池を抜け、車道に出ると目の前には立派な石積みが広がっています。中城御殿(うどぅん)という王子様の邸宅跡です。その脇道は、沖縄の怖い民話としても有名な「耳切り坊主」(※1)の舞台となった場所でもあります。

※1 妖術使いの悪僧、黒金座主(くろがねざしゅ)と王子が囲碁で勝負。僧が術をかけようとした瞬間、王子が僧の耳を切り落とし成敗する。その後、王子の家の前に耳切り坊主の霊が現れ、男児の早死にが続き、「大きい女の子が生まれた」と偽り、たたりを避けた。

中城御殿の石積みの端にある路地が耳切り坊主の出現場所


③王朝時代のメイン道路

耳切り坊主の一本道を進むと、道は長い下り坂となり、途中に拝所や湧水を利用した井戸(安谷川・あだにがー)などの史跡が点在します。道が細いわりに交通量が多いので、注意が必要です。

下り坂の途中にある安谷川嶽。周辺の町並みも趣があり美しい

 
④儀保交差点から末吉町へ

道はやがて県道28号線と合流し、モノレールが走る儀保交差点方面に進みます。交差点を渡って末吉交番前を通り過ぎ、安謝川に掛かる太平橋を渡った次の路地を左折します。


⑤「万歳敵討」ゆえんの山

左折後、すぐ右側に人ひとりが通れる程度の細い上り坂が現れます。何とこの道こそ、国王も歩いた末吉宮への参詣道です。また登り始めてすぐ右側に見えてくる小山は、組踊「万歳敵討(ばんざいてきうち)」(※2)に登場する悪役が住んでいた高平良山(たかでーらやま)です。

※2 傲慢(ごうまん)な高平良は、大謝名の名馬を欲しがったが断られたことに腹を立て、彼を殺害する。大謝名の息子たちは時をうかがい、高平良に近づき父のあだを打った。
 
首里平良と末吉を結ぶ王国時代の旧道登り口。右の山が組踊「万歳敵討」の舞台となった高平良山

 
⑥貴重な石畳道

やがて道は石畳へと変わります。石畳は琉球王朝時代のもので一部は沖縄戦の際に滑りやすく危険だと日本軍に撤去されたといわれます。周囲には王族が眠る末吉陵(すえよしりょう)や、王朝時代に大改革を推進した政治家、羽地朝秀などの墓も点在しています。

さらに石畳道を先へ進むと周囲の風景はガラッと変わり、都会の喧騒(けんそう)がうそのような静寂に包まれます。思わず深い山奥に迷い込んでしまったのでは…と錯覚してしまうほど神秘的で、紀伊山地の霊場や熊野古道をほうふつとさせます。自然が持つパワーに畏敬の念を抱かずにはいられません。
 

王国時代から残る石畳道。周囲には王族や政治家の墓が点在している

 
⑦万寿寺跡と「執心鐘入」

しばらく森の一本道を進み、三差路を通り過ぎると、すぐ右側に石積みが見えてきます。石積みは万寿寺(まんじゅじ)(遍照寺・へんしょうじ)の跡で、組踊「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」(※3)の主人公の中城若松が、鬼と化した女性に追われて逃げ込んだ鐘があった場所です。

※3 美少年の中城若松が首里王府へ向かう途中、立ち寄った家で女に執拗(しつよう)に迫られ、危険を感じて逃げ出した。女は必死に若松を追いかけ、執念ゆえ、女の顔はいつしか鬼の形相に。命からがら彼は万寿寺の鐘に身を隠し、寺の僧たちがお経を唱えて鬼女を無力にし、追い払った。

組踊の「執心鐘入」の舞台となった万寿寺跡。中城若松は、この寺の鐘に身を隠したという

 
⑧琉球八社の「末吉宮」

先ほどの三差路を曲がり、しばらく坂を上がると、自然と調和した佇(たたず)まいの由緒ある末吉宮が忽然(こつぜん)と頭上に現れます。その姿は重厚さと神秘に満ちあふれており、ただただ圧倒されます。

末吉宮は琉球王朝時代に公営管理された琉球八社の一つで、夢で熊野権現のメッセージを受けた和尚によって築かれた沖縄を代表する神社です。琉球国王がどのような心境で参詣道を歩き、末吉宮で祈りをささげたのか想像が膨らみます。
 
荘厳な佇まいの末吉宮

末吉公園。末吉宮の下には公園が作られており、家族で訪れても楽しめる
 
今回は初詣コースとして「首里城~末吉宮」の歴史の道を紹介しました。首里城の復興再建祈願と神秘的な参詣道散策、重厚な末吉宮参拝で、一年のスタートを切ってみてはいかがでしょうか。縁起の良い一年になりそうですね。

所要時間は30~40分程度。道中は起伏も多く、天候によっては石畳道など滑りやすくなる場所もあり注意が必要。複数名での参詣がお勧め。往路はモノレールの利用も可能です(「市立病院前」駅)。


参考文献/琉球古道 上里隆史、富山義則著 河出書房新社 2012年/沖縄の神社 加治順人著 ひるぎ社 2000年/琉球仏教史の研究 知名定寛著 榕樹書林 2008年


執筆者

たけうち・あきのり
末期の沖縄病に感染した東京下町出身の人情派! 韓国や戦中のユーゴスラビアなど20年近くを海外で過ごし、沖縄に移住。沖縄地域通訳ガイド(韓国語)、通訳案内士養成研修講師など。
 

毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1692号 2020年1月2日紙面から掲載」

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