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2019年4月4日更新

[彩職賢美]車いす陸上選手の喜納翼さん|競技が広げた私の世界

バスケットボール部だった大学1年の春に自主トレーニング中の事故で車いす生活になりました。「下を向いてばかりもいられない、前向きに」と考え始めた時、出合ったのが車いす陸上でした。2016年の初のフルマラソンで優勝することができ、改めて周りの人の支えの大きさを実感。好きなことを続けられる喜びや周りの期待に応えたいとの思いも強くなりました。車いす陸上は私の世界を広げてくれたのですーー。

2020東京パラ五輪目指す

車いす陸上選手
喜納翼 さん

世界選手権で結果を残し パラリンピックの弾みに

車いす陸上を始めてことしで6年目を迎える喜納さん。ロードレースでは、次々と自ら掲げる目標タイムをクリアし、有望視されているトップアスリートだ。

車いす陸上とは、車いすに乗って行う陸上競技のこと。投てきなどのフィールド競技から、400メートル・800メートルなどのタイムを競うトラック競技、公道などを走る車いすマラソンといったロードレース競技まで多岐にわたる。喜納さんはロードレース競技を得意としている。

「競技用の車いす『レーサー』に乗ると体が地面に近い分、体感速度が速く感じられる。その爽快感は格別なんです」と競技の魅力を語る。レースは自転車競技のように連なって走るが、前の選手について風をよけながら体力を温存するなど、隣の選手との駆け引きするのがおもしろいとも。

「最初、車いす陸上は孤独な競技だと思っていました。しかし、コーチをはじめ、練習の時に一緒に走ってくれるメンバーや先輩、レーサーのメンテナンスを行うチームメートなど、みんなが徹底的に競技に関わってくれ、心強いです」。チーム競技だと実感。周りの人たちの協力に感謝している。

「世界を広げてくれたのも陸上」という。「競技を通して県外・国外の選手と試合ができることはもちろん、県外で活躍する県出身のプロスポーツ選手と対談させてもらったり、講演会に呼んでもらったりと多彩な体験ができました。これからもあらゆることにチャレンジしたい」と好きなことを続けられる喜びをかみしめている。


小学校4年生でバスケットボールを始め、中学・高校と県代表に選ばれるほどの実力者だった喜納さん。大学1年のときに自主トレーニング中の事故で下肢完全まひとなり、車いす生活に。「けがをしたときは『何であんなことを』と後悔もしましたが、家族や友人の励ましの言葉に助けられました。昔から楽観的な性格の私は、『どうにかなる。もっとやるべきことがあるはず』とすぐに気持ちを切り替えることができました」と振り返る。

車いす陸上との出合いは、車いすバスケの見学に訪れたときに声を掛けられたのがきっかけ。「体力アップのためと車いすバスケを見学していた時、現コーチの下地隆之さんに勧められて。ゼロから競技を始めるのは一緒。バスケにこだわらず陸上をやってみようと思いました」。

2013年から競技を始めた。持ち前の負けん気の強さでめきめき上達。173センチと長身で、腕が長く、車輪をこぐ際に腕が遠くまで届くため、スピードが出やすいのも強さの秘訣だ。

2015年、大分国際車いすマラソン・ハーフの部で3位入賞。翌年、同大会のフルマラソンに初挑戦し、全国規模の大会では初優勝を果たした。「優勝後は友人から多くの祝福を受け、親からも喜びのメールがたくさん入っていました。結果を残せたことがとてもうれしかった」と話す。

昨年開かれた同大会では、自己ベストを更新し、2度目の頂点へ。ことし4月28日にイギリスで開かれる「WPA(世界パラ陸上競技連盟)マラソン世界選手権大会」への出場も決まった。「大会のたびに思い知らされるのがコース取りの未熟さ。そこを上達させ、苦手な上りを克服したい。思い切ったコーナリングなど体の使い方も重視したい」と課題の改善に余念がない。

「応援してくれるみんなの期待に応えたい。世界選手権で結果を残し、2020年東京パラリンピックの弾みにしたい」と目標に向かい走り続ける。


雨の日は室内でトレーニング

喜納さん提供

大会前は持久力アップを中心に練習に励み、多い時で月に800キロほど走るという喜納さん。雨で屋外練習ができないときは、室内でひたすら走り続ける練習をしている。週に5日は練習に励む喜納さん。「練習時でも試合さながらに、相手が前を走っている様子や、上り下りの坂道をイメージしたりして、こいでいるんです。天候に左右されることなく練習できる恵まれた環境がうれしい」とコーチやチームメートなど周りの人たちのサポートに感謝している。


大分国際車いすマラソンでV2

喜納さん提供

昨年の大分国際車いすマラソンでは、自己最速タイム3時間36分36秒で優勝し、V2を果たした喜納さん。

「そのレースは、順位にこだわらず、目標タイムを意識して走っていました。いい結果が出たのは、力まずにレースに集中できたからだと思います」と話す。コースの途中でペースを落とそうか迷う中、コーチの「そのまま行け!」の声に奮闘。ペースを保ち独走ができたのはコーチのおかげと勝因を語る。


喜納さんのパワーの種
Q.休日の楽しみは?
休みの日は豊見城市に住む、1歳のおいっ子のところに行って、一緒に遊ぶのが楽しみ。遊んでいるだけで、癒やされるので、いい息抜きになっています。
また、県外、国外の大会に行く前の休日にはチームメートの親が営む店で大好きな沖縄そばを食べることも楽しみの一つ。もちろん沖縄に戻ってきたときも、そのお店でそばを食べることが多く「地元に帰ってきたなあ」って心が落ち着くんです。

Q.レースはとても過酷なのでは?
月一回くらいのペースで試合があるのですが、県内では大会がなく、全て県外、海外で開かれていて、試合前は体調を整えることが大変。レースではロードを走る場合、平坦で30キロのスピードが出て、下り坂では50~60キロは出るので、見た目以上にレーサーの制御が大変。手のひらでつかんでこいでいるイメージがあると思いますが、つかむ暇がないくらいタイヤが高速回転しているので、グローブをつけ、ハンドルをたたくように回しているのです。グローブの上からでも衝撃が強く、指の関節部にペンだこのように膨らみができているんです(笑)。




プロフィル
きな・つばさ

1990年うるま市出身。小学4年からバスケットボールを始め、具志川東中学2年、コザ高校3年時には県代表メンバーに選出。沖国大1年時の運動中の事故で車いす生活に。2013年に車いす陸上を始め、15年の大分国際車いすマラソン・ハーフの部で3位、16年には同大会のフルマラソンで初優勝を果たした。17年の東京マラソンは車いすの部女子で5位入賞。


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撮影/比嘉秀明 編集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1331>
第1653号 2019年4月4日掲載

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安里則哉

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日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。

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