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2015年12月17日更新

[彩職賢美]東松照明オフィスINTER FACE 代表 東松泰子さん|夫の遺志を継ぎ技術も次世代に

日本を代表する写真家の一人、故・東松照明氏。妻の東松泰子さん(63)は、同氏の作品作りはもちろん、公私にわたり夫を支えてきた。写真のデジタル化が進むと、写真データの修正などを行う「レタッチ」を担当、作品の仕上げ作業を担ってきた。現在は夫の遺志を継ぎ、作品の出版、展示会を続ける傍ら、若手写真家の育成にも尽力を続けている。


 

写真に支えられ、動かされる

写真家・東松照明を支え、後進の育成も
東松照明オフィスINTER FACE 代表

東松泰子さん


「私はあくまでも写真家東松照明の影」と、はにかむ泰子さん。撮影同行から写真のセレクト、さらには大病を患う夫の健康管理や体のケアまでサポート。助手、妻、何役もこなし、作品作りを支えた。

東松氏との出会いは、偶然手に取った同氏の写真集「太陽の鉛筆」だ。被写体の深層に切り込み、「人間らしさ」を写し出した写真に心引かれた。写真に興味を持っていた泰子さんは、東松氏主宰の写真学校に入学し、卒業後、助手に。

写真に対して人一倍厳しく、妥協を許さない東松氏。長時間の撮影や現像は当たり前。泰子さんを支えたのは「写真」だった。「完成した作品は本当にすごかった。それを見ると私も、頑張ろうと思えた」。その生活は結婚後も変わらない。「生活の中心は写真」と笑う。

転機は、東松氏が写真をフィルムからデジタルに移行したことだ。自宅にプリンターを用意し、泰子さんはレタッチを担当することに。「パソコンも触ったことが無かった」というが、要求に応えるため、独学で必死に画像処理の方法など学んだ。

東松氏は作品のイメージを事細かに伝え、高い完成度を要求。試し焼きのプリントはいつも修正の指示で真っ赤だった。「根気のいる作業だが、要求をクリアし、オッケーが出ると、とてもうれしかった」。作品を仕上げるたび自信がついた。「少しずつ東松の作品への思いが理解できるようになった」という。レタッチの腕も上達し、「君に任せる」と、一任されるほどになった。


2010年、東松氏の病状の悪化もあり、温暖で長年関心を寄せていた沖縄に移住。

撮影や若手写真家への指導も行った。東松氏は体調が悪くても、生徒の写真のコンタクトシートを一コマずつ丁寧にチェックした。夫の体調を誰よりも心配していた泰子さんだが、真剣に写真と向き合う夫を止めることはできなかった。

12年12月、東松氏死去。悲しむ間もなく環境は一変。「東松の影にいた私が前面に出て、すべて決めなければいけなくなった」。初めてのことばかり、戸惑いを隠せなかった。疲れ果てていた泰子さんを動かしたのも「写真」だった。夫や若手の作品を前に、「前を向いていこう」と、夫の遺志を継ぎ、活動を続けた。

現在も東松氏の作品をネガからデジタルへ移行する作業や修復、写真展や写真集のための作品作りも続ける。もちろん納得できないものは世に出さない。「東松には今でも走らされっぱなし」。泰子さんは笑う。

「写真家を志す若手の育成」や「アジアとも連携し、写真文化を広げること」を趣旨とした一般社団法人「フォトネシア沖縄」の活動も引き継いだ。

さらに、県内外で写真のワークショップを企画し、レタッチを指導。技術はもちろん、東松氏の写真の作り方を伝える。泰子さんは「私のできる方法で『写真をやりたい』という人を応援していきたい」と語る。

写真家「東松照明」を支え、二人三脚で走り続けてきた泰子さん。2人が生み出した作品の数々は、世界中の人に愛され続けている。



那覇市内の事務所。東松氏の作品をレタッチし、プリントした写真をスタッフに見せる泰子さん(右)=那覇市内


 

東松さんのハッピーの種

Q.撮影の思い出はありますか?

印象に残っている作品に1990年に刊行した桜をテーマにした「さくら桜サクラ120」という写真集があります。桜は撮影できる季節も限られていることもあり、完成までに13年かかりました。事前に車で各地を回り被写体を決めておき、朝5時に起床し、撮影。昼はロケハンをし、途中に良い被写体があればまた撮影。機材も多く、ハードでしたが、やりがいはありました。
 

Q.一番好きな作品は?

一番を決めることはできません。自画自賛かもしれませんが、夫の作品はみんな良い(笑)。
ただ特に印象深いのは写真集「太陽の鉛筆」。沖縄やアジアを取り続けた作品の数々、なにより夫と出会わせてくれた思い出深い1冊です。


※東松照明写真集「新編・太陽の鉛筆」が今月刊行される。2冊組、9,000円+(税)。問い合わせ先/赤々舎 03-6380-0908
※東京・銀座にある「AKIO NAGASAWA Gallary」にて写真展も開催中。2016年1月24日まで。


東松照明オフィスINTER FACE
098-862-5588


PROFILE
東松泰子(とうまつ・やすこ)1952年、福岡県生まれ。75年に上京、写真家東松照明氏主宰の「ワークショップ写真学校」に第2期生として参加。以後アシスタントを担う。
2002年から東松氏がデジタル作品に移行すると、レタッチ作業全般を担当。千葉、長崎などでの生活を経て、10年、沖縄に移住。東松照明オフィスINTER FACE代表。一般社団法人「フォトネシア沖縄」副理事長。




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撮影/高野生優(フォトアートたかの)・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1197>
第1483号 2015年12月17日掲載

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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