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2016年1月7日更新

[彩職賢美]沖縄キリスト教短期大学 講師・美術家 佐久本邦華さん|古い紅型を研究 後世に残す意欲

県内の大学や専門学校で造形や保育美術、グラフィックなどを教える佐久本邦華さん(43)。一方で紅型の型や構図について研究、自ら作品作りを行う美術家でもある。渡英先で「紅型」の美しさを知り、帰国後、研究を始めた。沖縄の誇る「紅型」。その魅力を日々探求し続け、同時に次の世代へと継承を促すため活動を続ける。


 

本物にしかない力がある

沖縄キリスト教短期大学 講師
美術家
佐久本邦華さん


中東のモザイクタイルのような幾何学模様、沖縄にはいないトラなどの動物。これらは多種多様な柄と色使いで仕立てられた古い紅型のデザインだ。「大交易時代、沖縄がいかに多様な文化、国々と交流をしていたか紅型が表している」と説明する。

紅型を研究する佐久本さんが注目するのが紅型の型。そして繊細かつ、精巧に考えられた構図についてだ。「古い紅型の構図は左右対称になるように柄を配置。さらにダヴィンチのウィトルウィウス的人体図のように円の中にメーンとなる柄が収まるよう描かれている。これは一番美しく見えるよう計算したこと」を発見した。「琉球王朝時代の職人たちは非常に高い技術を持っていた。古い紅型は一枚の絵のようで本当に美しい」と目を細めた。

佐久本さんは琉球大学卒業後、現代美術の表現手法の一つである「空間芸術」を学ぶため渡英。そこで「沖縄のことをほとんど知らない」自分に気付かされた。仲間たちが自分の文化や歴史をふまえ、ディスカッションする中、「取り残された感じがした」という。

そんな中、ロンドンの博物館に展示されていた古い紅型の着物と出合った。書籍の表紙を飾るほど高く評価された繊細なデザインや色使い。
「私の知っている紅型とはまったく違うものだった」



沖縄キリスト教短期大学の授業で保育科の学生らを指導する佐久本さん(写真中央)=西原町


帰国後、空間芸術の創作活動や学校で美術を教える一方、紅型の研究も始めた。しかし「廃藩置県や沖縄戦で喪失、元々付いていた『カタチキ』という名すらも廃れてしまっていた。研究者も資料も少なかった」。現存する資料や文献を基に掘り起こし、裏を取りながら調査を続けた。「本物には本物にしかない力がある。本物を伝えなきゃ」との思いを抱いた。

研究成果は、兄で沖縄国際大学の又吉光邦教授と共に2006年「紅型に秘められた祈り」として出版。育児と両立しての執筆だったが佐久本さんの思いをくんだ家族は協力的だった。紅型に関する論文を3本、書籍を3冊発表。15年には研究を英訳した「UNTOLD WISHES OF KATACHIKI TEXTILE」を出版した。

研究成果をデザインに反映しカタチにするため、自ら染めた風呂敷や絵画などの作品も制作。4人の子育てをしながら意欲的に活動を続けている。

教員としても沖縄を強く意識。特に保育を学ぶ学生たちには「草花など、身近にある素材を使った遊びを子どもたちに指導すること」を提案する。「子どものころから自然に触れることで故郷に関心を持つことができるのでは。今の遊びは地域と切り離されているような気がする」と話す。

その背景にあるのは海外で感じた疎外感。「ルーツを知らなければ根無し草になってしまう」と訴える。「日本本土とは違う沖縄独自の文化の継承の必要もある。現在はあいまいになってきている」と危機感を募らせる。佐久本さんは言う。「伝統的な文化は、財産。沖縄にしかない素晴らしいものがあることを知ってほしい」と。

 

佐久本さんのハッピーの種

Q.家ではどんなお母さんですか?

怖いお母さんですよ(笑)。子どもは女の子3人、男の子1人の4人。子どもたちも絵を描くことが好きです。紙とペンがあれば自由に何か描いてます。
子どもたちはみな工作が大好き。牛乳パックなどを使って毎日何かしら作って自宅で飾って遊んでいます。子どもの成長を作品で感じられるのがうれしい半面、どんどん増えていくので、家も広くないしお母さんとしては複雑な気持ちです。

Q.お休みの日は何してますか?

子どもたちが小さいころは公園巡りをよくしていました。おにぎりやお菓子、飲み物を持って遊びに行きます。子どもたちは遊具で遊び、私は近くのベンチに座ってひたすら本を読む、そんな休日でした。
今は上のお姉ちゃんたちは部活もあるので、みんな連れて遊びに行くことはほとんどありません。

「UNTOLD WISHES OF KATACHIKI TEXTILE」
<書籍に関する問い合わせ>
沖縄教版
098-868-4170
 


PROFILE
佐久本邦華(さくもと・くにか)1972年、沖縄市生まれ。97年、琉球大学教育学部研究科修了。2000年チェルシーカレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(イギリス)修了。94年、沖縄芸術祭県知事賞、2012年沖展浦添市長賞など受賞。ほか個展やグループ展、出版など精力的に活動を続けている。県立芸術大学や沖縄情報経理専門学校などでも非常勤講師を務める。3女1男の母。



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撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1199>
第1486号 2016年1月7日掲載

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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