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2016年11月3日更新

[彩職賢美]一般社団法人daimon代表理事 daimonCUP主宰の糸数温子さん|社会問題に先制点

11月に開催するフットサル大会「daimonCUP(ダイモンカップ)」を主宰する一般社団法人daimonの糸数温子さん(30)。教育の不平等や貧困問題などに関心があった糸数さんが多くの支援団体と当事者らをつなげたり、活動を伝えるツールとして考えたのが「フットサル」だった。イベントを楽しみながら社会問題について考えるスタイルの大会。ことし5回目を迎え、糸数さんの挑戦はなおも続く。


 

スポーツで人つなげる

一般社団法人daimon代表理事
daimonCUP主宰
糸数温子さん


5年目を迎える女子フットサル大会「daimonCUP」。高校の女子サッカーチームから地域、職場などで結成されたチームがボールを追う白熱した試合が繰り広げられる。昨年は44チームが参加、約3,500人の来場があった。

「フットサルはあくまでも企画を根付かせるためのツール」と糸数さん。大会の目的は社会問題や貧困問題について共有、その支援団体を周知することにある。

そこで女性や子どもの抱える課題解決に取り組む団体らと連携、米や古書の寄付など参加者もアクションが起こせる方法を取り入れると同時に、パフォーマンスや出店などで観戦も楽しめるよう工夫を凝らした。

さらに「社会貢献や活動をしたいと考えている人にとってきっかけになるような大会になれば」との思いも。


糸数さんの活動の背景にあるのは、高校生の頃から抱いていた「教育の不平等」に対する問題意識だ。「経済的な理由で進学の幅が限られたり、断念せざるを得ない状況、格差が身近にあった」。進学した琉球大学、同大学院では「若者の進路選択において家庭の階層が影響を及ぼすこと」をテーマに研究した。

しかし「研究のことやその課題を話すだけでは自分たちのこととしてとらえてもらえない。もっと違うアプローチから人々を巻き込む必要がある」と考えるようになった。

「やるなら楽しく」と、ヒントになったのがフットサルだった。

地域のフットサルチームに所属していた糸数さん。沖縄は女子サッカーの人口が全国で3番目に多いが、それぞれのレベルに合わせてどんな人でも楽しめるような大規模なフットサル大会は行われていなかった。「女性や母親が楽しめるイベントなら応援などで家族も一緒に参加できる。子育てなどで孤立しがちな状況も防ぐことができるのでは」と、女性を中心としたフットサル大会「daimonCUP」を立ち上げた。

そして糸数さん自身も「30歳になるまでは必死でやる期間にしよう、必ず5回やる」と覚悟を決めた。だからこそ、折れそうなときは「私がやりたいことをみんなに手伝ってもらっている、音を上げるわけにはいかない」と活を入れた。

大会を継続する中で気が付いた事がある。子どもの貧困や格差への社会の関心の変化を感じる一方で、「困りごとを抱えた人は楽しい時間を過ごすことに怯えていた」ことだ。

「特に貧困問題は経済的な課題を解決するだけでは不十分。現状から抜け出すには、成功体験や楽しかったことなどを仲間と共有したり、たくさんの経験することが必要」と訴える。「その点からもスポーツは最適。コートの中では学歴も職業も年収も関係なくなるし、楽しい時間を過ごすことで自分らしく生きるための体験ができるのも良さ」と話した。

糸数さんは「来年はこれまでの取り組みを検証する年に。スポーツを通して、社会の風潮を変え、沖縄を良くしていきたい。みんなが自分のできることを生かせる場が増えたらいい」と意気込みを新たにした。


 

生きづらさに寄り添う

本年度の大会では「誰かの生きづらさに寄り添い、応援しあうこと」を目的にした、「○△□クラス」も新設。連日ミーティングが行われている=右写真。クラスには県内外から12団体が参加予定。「生活困窮や非行、障がいなどさまざまな理由から不登校状態にある子どもたちや社会に出たけど生きづらさを感じる大人たち、そして支援団体らも参加。一緒に体を動かします」という。
糸数さんは「支援団体同士の連携作りも目指す。課題について一緒に考え、取り組んでいきたい」と話した。



2015年大会の試合の様子。白熱した試合が繰り広げられた(提供写真)



2015年大会の会場内ブースの様子。さんかく△アクションブースでは、寄付を持ち寄る来場者が集まった。ことしは米とゲームソフトの寄付を呼び掛けている(提供写真)


■女子フットサル大会「daimon Cup」2016年11月18日(金)~21日(日)11時~17時 沖縄市体育館 入場無料。当日は米やゲームの寄付を集めるブースや「NPOに参加する子どもたちが出店するフードコーナー」「沖縄ダルクのエイサーパフォーマンス」なども行われる予定。

<問い合わせ>
info@daimon-okinawa.com

 

糸数さんのハッピーの種

Q.感銘を受けた本は?

社会学者ブルデューの著書「ディスタンクシオン」です。もう一冊はタレントの遥洋子さんが社会学者の上野千鶴子さんとのやりとりを書いたエッセー「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」。
「勉強しなきゃ」という時にエンジンをかけるためにも読みます。初心に帰るためにね。
思いと行動力だけで動くのではなく、学んできたことを実践の場に持ち込み、検証し、また学び続ける中で発信することに意味があると考えています。

Q.リセット方法は?

マンガを読むこと。行き詰まった時や何か作業が終わった時など、気分転換にマンガ喫茶に行きます。一日中こもることも。何でも読みます、オールジャンル! お気に入りは「ドラゴンボール」「ぼのぼの」など。スポ根もののマンガも好きです。



PROFILE
糸数温子(いとかず・あつこ)1986年、那覇市出身。2005年琉球大学法文学部入学、07年から若者と社会の接点作り、貧困・孤立に抗する地域コミュニティー作りについて活動を開始。10年同大学大学院に進学、12年フットサル大会daimonCUPを、14年一般社団法人daimonを立ち上げ、代表理事に。現在は各地で講演や講義を行いながら子どもの居場所作り事業などにも関わる。



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撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1233>・第1529号 2016年11月3日掲載

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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