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2016年10月13日更新

[彩職賢美]ロイヤルミャンマー店主のチョ・チョ・カイさん|母国の教育を支援

ミャンマー出身のチョ・チョ・カイさん(43)。母国で小学校教師を務め、日本に留学、琉球大学でも教育学を学んだ。現在は那覇市安里で夫とミャンマー料理店を営む傍ら母国で小学校を運営する。「ミャンマーの子どもたちが日本の子どもたちのように心豊かで伸び伸び育ってほしい」。20年以上にも及ぶ軍事政権が終わり、新しいスタートを切ったミャンマー。チョ・チョ・カイさんは子どもたちに国の未来を託す。


 

ミャンマーで小学校を運営

ロイヤルミャンマー店主
愛の家小学校(ミャンマー在)校長
チョ・チョ・カイさん


那覇市安里、栄町市場に“ミャンマー”がある。「ミンガラーバー」とミャンマー語のあいさつで出迎えてくれたチョ・チョ・カイさん。夫のトウ・ヤ・ソウさんと共に営むミャンマー料理店、「ロイヤルミャンマー」では同国の家庭料理が食べられるとあり、地元だけでなく観光客や外国人にも人気。売り上げの3分の1はチョ・チョ・カイさんがミャンマーで運営する小学校の運営資金に充てられている。

チョ・チョ・カイさんはミャンマー最大の都市ヤンゴン出身。両親は教員で、自身も小学校の教師になった。初来日は2005年。国費留学生として宮城県の大学で教育学を学んだ。「日本では子どもたちに考えさせる教育を導入していた。軍事政権下では子どもたちに考えさせない、一方的に知識を詰め込む暗記型教育を導入していた。当時は当然と思っていたけど、留学し、考える教育の大切さを教えられた」。自由に発言し、楽しそうに授業に打ち込む日本の子どもたちの姿は衝撃的だった。「ミャンマーの子どもたちも日本の子どものように心豊かに勉強できたら」と願った。


帰国し、結婚。11年、琉球大学大学院に入学した。勉強とアルバイトを両立し、日本語も覚えた。研究を続けると沖縄とミャンマーの子どもたちの共通点も分かった。「貧困、共働きや一人親の寂しさで、心にも貧しさを抱えた子どもが多いのも似ていた」。さらにショックだったのは「日本では子どもが自殺すること」だ。「沖縄、母国共に子どもたちには道徳や心の豊かさを育む教育が必要」と改めて実感した。

チョ・チョ・カイさんが目指したのは日本式の教育が受けられ、貧しい家庭でも誰でも安心して通える学校を母国で作ること。「沖縄の子どもたちはエイサーで太鼓をたたいたり、三線を弾いたり、自分たちの文化をとても大切にしていた。ミャンマーの学校でも地域のことや自分たちの文化のことを教えていきたい。沖縄では本当に多くのことを学んだ」と話す。

大学院卒業後、母国での学校の設立を目標に県内の保育園で働き始めた。そんな中、「ミャンマーと行き来できる、時間に融通が利く仕事を」と考えた。

そして13年、ヤンゴン郊外に念願だった小学校「愛の家」を立ち上げた。同時に学校運営を支援するための店舗も那覇市に開いた。

市場や周囲の人たちは、初めて日本で商売をする外国人の夫婦に親身に接してくれた。「沖縄の人にはいつも助けてもらいとても感謝している。栄町市場が一番好きな場所」とほほ笑む。

そんなチョ・チョ・カイさんの原動力は「子どもたちが作る国の未来への期待」だ。「ミャンマーは民主化され、国が変わった。私たちの学校の子どもたちが社会に出ることで、考えること、発言することなど学んだことを広めていければ、国はもっと良くなっていく」と期待を込める。

いつかミャンマーと沖縄の子どもたちが国を行き来し交流を深めるのも夢だ。「ミャンマーの子どもたちや国のことをもっと沖縄で伝えていきたい」。力強いまなざしの向こうには明るい未来が見えている。

 



 

日本式の情操教育を

正式名称はミャンマー連邦共和国、首都はネピドー。東南アジアに位置し、タイ、ラオス、インド、中国などと国境を接する。2011年、20年以上続いた軍事政権に終止符が打たれ、民主化された。

チョ・チョ・カイさんが校長を務める愛の家小学校はヤンゴン郊外にあり、幼稚園から小学3年生まで80人以上が在籍する。運営は店舗の売り上げと賛同者からの支援によって賄われており、授業料は無料、ミャンマーでは珍しい給食も実施。授業の一環として音楽や折り紙、粘土など日本式の情操教育を取り入れる。それまでミャンマーにはこうした教育はなかったという。日本語の教材を翻訳するなどし、教員への指導にも力を入れる。

チョ・チョ・カイさんは母国で小学校教師として最初、地方の小学校に勤務。そこには校舎はなく、屋外で勉強を教えた。1クラス30人のはずが集まってくる児童はそれを遥かに超え、1~2歳の幼児も。「両親が共働きで見る人がいない幼い兄弟を連れてくる児童が多かった」という。義務教育が定められているが子どもは実際には大切な労働力、学校にやらない親もたくさんいる。「安心して勉強ができる環境を整えたい」。この経験が原点となっている。


ミャンマーへの窓口にミャンマーの愛の家小学校で子どもたちと。後列右から4番目がチョ・チョ・カイさん(提供)


 

ミャンマーの民族衣装「ロンジー」

チョ・チョ・カイさんが着るのは伝統的な織りのあしらわれたトップスと巻きスカートがセットになったミャンマーの民族衣装「ロンジー」。素材は普段使いできる綿やフォーマルでも着れるシルクなどさまざま。ショールとカバンを合わせればお出かけの装いにも。



 

ミャンマーへの窓口に

チョ・チョ・カイさんの夫、トウ・ヤ・ソウさんが調理を担当するミャンマー料理店「ロイヤルミャンマー」ではナマズ料理やお茶の葉を使った同国の家庭料理が食べられる。ほかにもミャンマービールや麻薬撲滅と自立支援を目的に日本のODAで開発したソバで作った焼酎も味わえる。同国の雑貨や衣類なども販売、ミャンマーを体感できる店だ。
また、「旅行や留学でミャンマーに行く人の窓口にもなっている。ミャンマーに関心がある人が数多く訪れる」という。

 

チョ・チョ・カイさんのハッピーの種

Q.尊敬する人は?

ミャンマーの指導者、アウン・サン・スーチーさんです。ミャンマーは男尊女卑が残る国だけど、最近は頑張っている女性もたくさん出てきました。
ミャンマーのいいところは仏教に熱心な国民性。各家に仏壇があり、沖縄との違いは先祖じゃなくてお釈迦さまを大事にしてるところ。毎日、花やお水を供え祈ります。また時々、瞑想をすると落ち着いて心穏やかになります。


<問い合わせ>
ロイヤルミャンマー
沖縄県那覇市安里388-5
098-884-5711



PROFILE
チョ•チョ•カイ(ちょ・ちょ・かい)1973年ビルマ連邦(当時)ヤンゴン出身。小学校の教師を約10年務めた後、2005年国費留学生として来日。宮城県仙台市の東北大学などで教育学を学ぶ。11年琉球大学大学院に入学。13年ミャンマーに「愛の家小学校」を開校、校長に。同年那覇市安里栄町市場内に「ロイヤルミャンマー」を開店した。ミャンマー学生協会会長。



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撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1231>・第1526号 2016年10月13日掲載

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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