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2012年10月11日更新

台風からのメッセージ「自然の力が保つ海の環境」

海んちゅ写真家 古谷千佳子のフォトエッセー「潮だまり」vol.19

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台風からのメッセージ

自然の力が保つ海の環境



台風17号。那覇市内にある我が家では、息子と二人、一歩も外に出ずに過ごしたので安泰。集合住宅は一軒家に比べ風当たりも弱く、海の近くに暮らしていた時より、断然恐怖心も少ない。

しかし、台風が通りすぎた翌日、外に出てあぜんとした。近所の家々の屋根は飛ばされ、壁もなくなっている。点灯しない信号機や折れた街灯。行きつけの公園は「修理・点検のため立入禁止」。別の公園では、なぎ倒された木々、折れかかった枝葉が遊具に覆いかぶさり、危険区域がたくさんあった。ニュースで見たように、4トントラックも強風にあおられ横転するほどの力があったのだと、その傷跡から台風の猛威をより認識できた。

土砂崩れ、家屋の破壊、塩害など陸上の変化はニュースなどでも確認することができる。しかし、海中はどうだろう。

以前、西表島の海をダイビングしている時に目にした、巨大なサンゴの塊。「前に大きな台風があって、それで倒れたものだ」と聞いた。海中でひっくり返ったハマサンゴは、直径4〜5メートル。その上には、生後2〜3年と考えられる新しいサンゴたちが成長していた。

そこをすみ家としている小さな魚、エビ・カニ、貝類などの生物たちは、台風で倒される前、どのタイミングで何処へ避難したのだろうか? 海の中でそれを観察できる人間はいないであろうが、その前兆を見ているとしたら、それは海人(うみんちゅ)たちであろう。

「大潮の前に、深い海からリーフの上に、手をつないで上がってくるタコのカップル」という、冗談めいた話を海人オジィから聞いたことはあるが、台風前後の話にも、もっと耳を傾けねば。同時に、地道に科学的な調査を重ねている人々からの情報も必要だ。

サンゴの上を覆う赤土のような、通常の波浪では除去できないものを洗い流し、上昇しすぎた海水温度を、撹拌(かくはん)し低下させるなど、台風が接近することで海の環境が保たれ、私たちへの恵みも保たれている。

倒れたハマサンゴの年輪は正確にはわからないが、100年単位の生活圏がひっくり返され、奪われても、強かに生きる海の生き物たちのあり方に、学ぶことが多い。被害を何らかのメッセージとして捉えられる大人になってほしいと、わが子にも願う。




[文・写真]
古谷千佳子(ふるや・ちかこ)
那覇市在住。海の仕事に従事、スタジオで写真を学んだ後、海人写真家となる。海・自然と調和する人々の暮らしや伝統漁業を主に撮影する。TBS「情熱大陸」などに出演。著書に 写真集「たからのうみの、たからもの」、「脳を学ぶ2」(共著)ほか
http://www.chikakofuruya.com/

 
古谷千佳子のフォトエッセー『潮だまり』
週刊ほーむぷらざ 第1320号・2012年10月11日に掲載

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