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2016年8月4日更新

[彩職賢美]認定作業療法士・中野小織さん|認知症の悩み軽減

北中城村にある北中城若松病院の作業療法士として、認知症リハビリテーションを通し認知症に関する支援を行う中野小織さん(48)。その傍ら「認知症の人と家族の会」のメンバーとしても活動。「認知症を正しく知ってもらいたい、当事者や介護家族が気軽に集え、悩みを打ち明けられる場を増やしたい」と励む日々だ。

当事者や家族支え和む場を


「認知症は見た目では分かりづらい病気」と中野さん。発症すると、脳の機能的障害で記憶障害が起こり、生活に支障をきたす。本人が初めに気付くが、どうしていいか分からず、受診につながらない場合は治療が遅れ、生活への支障も広がる。周囲の対応も重要で、言葉かけひとつで本人の不安が増し、家族中が混乱することも多い。


「リハビリは本人の意欲が大事。本人の気持ちが乗らないと何のためのリハビリか分からなくなる」。庭いじりが好きな人なら一緒にリハビリを兼ねて畑作業をするなど、いかに本人の興味を引き出すかを常に考えている。進行した中等度や重度の人は日常生活で介助が必要で、生活リハビリや家族への介護指導の支援も行う。

業務以外に4年前から、「認知症の人と家族の会」の世話人としても活動。64歳以下で発症する、若年性認知症の支援にも力を入れている。近年、診断技術が進み、早くから診断名が明らかになる人が増えてきたという。「働き盛りの年齢で診断名が付き、職場の理解がないと離職する人も。経済的な悩みに加え心までも追いつめられる現状は深刻」。専門外の相談でも行政や他職種へつなげる役割も担う。

「自分にしてもらいたいことは、他人にもしてあげたい」と笑顔。相談者の不安が取り除かれ、表情が和らぐとホッとするし、やりがいだとも。当事者からは「家族会とつながり、何かあったら相談できるので安心」との声もあり、心の支えになっている。



もともと事務職に就いていたが、専門的な知識を得て、長年働ける仕事がしたいと、作業療法士を目指すことに。資格取得後は、総合病院で脳卒中で倒れた人を支援する急性期のリハビリを担当。心身の機能向上を目指す回復期、退院後の在宅生活を支える訪問リハビリにも携わった。複数の病院で経験を積み、2011年に北中城若松病院に就職。同院が力を入れていた認知症の支援に携わるようになった。

「認知症の人と家族の会」に関わるようになったきっかけは、身近な人に発症の恐れが出たこと。当時、必死で支援について調べると、本土に比べ沖縄は情報も支援機関も不足していることに気付いた。縁あって家族会につながり「病気を抱えても、笑顔でいられる支援作りをしたい」と活動に取り組んだ。

家族会で初めて開いた集いでは、「県内では若年性認知症についてハンドブックもなく、介護保険を受けられない人の対応や経済的支援など、分からないことが多くショックを受けた」と話す。「相談者の悩みを少しでも解消したい」と、県外で開かれる勉強会にも参加。医療費助成制度の活用や就労支援窓口など、相談者と支援機関をつなぐ。「認知症を正しく知ってほしい」と講演やイベントの企画・運営も行う。

昨年、認知症の症状や当事者の生活支援などについて記載される「若年性認知症支援ハンドブック」の作成に携わった。ことしは、当事者もその他の人も一緒にタスキをつなぎ、触れあうことで認知症について考える「RUN伴」の実行委員長としても活動。「11月には、全国でつながれたタスキが沖縄に。コースに関わる市町村の協力を得て、地域の方と盛り上げたい」と当事者や家族の思いを背にまい進する。
 
 


家族会で悩み共有、相談

7月に沖縄県若年性認知症支援推進事業の一環として開かれた「若年性認知症本人交流会・介護家族交流会」でスタッフを務めた中野さん。交流会で意識するのは、黒子役に徹すること。「本人と家族が楽しめればそれが一番。参加者が楽しむためのイベントを考える時はとても楽しい」と目を輝かせる。家族会での夏祭りは金魚すくいも実施。いつでも参加者が楽しめるようにと、金魚すくいセット一式を個人で購入したとか。

※写真/参加者同士で悩みを相談し合う場面も見られ、その相談に耳を傾ける中野さん=北中城若松病院で



「RUN伴」で認知症を理解

認知症の人や家族、支援者、一般の人たちがリレーをしてゴールを目指す「RUN伴」の参加者を募集中。北海道をスタートし、沖縄がゴール。6500kmをタスキでつなぐ。11月26日(土)にタスキが沖縄にわたり、県内の12市町村を走る。参加申し込みは2016年10月20日(木)まで。HP参照。
http://www.sportsentry.ne.jp/event/t/65711

「RUN伴」の参加者を呼びかけるポスター|沖縄
※「RUN伴」の参加者を呼びかけるポスター


支援や相談窓口 一冊に

「若年性認知症支援ハンドブック」は、若年性認知症の経済的支援や生活支援、相談機関などが分かりやすくまとめられている。「認知症の人と家族の会」をはじめ、県や障害者職業センター、認知症患者医療センターなどで構成されるワーキングメンバーで作成。若年性認知症のバイブル的な冊子だ。

若年性認知症支援ハンドブック|沖縄
 

中野さんのハッピーの種

Q.趣味は?

趣味は筋トレです。昨年の夏からジムに通い、忙しいときをのぞき、週に2回ほどトレーニングをしています。主にランニングマシーンを活用しているのですが、何も考えず無の状態になれるので嫌なことも忘れられます(笑)。
心身ともに健康じゃないと、人の話を聞けないですからね。




[info]
認知症カフェも
北中城若松病院では、認知症に悩む人たちが気軽に集い、話し合える場を提供しようと「認知症カフェ」を開催。毎月第二土曜日の10時から16時まで、参加者同士がコーヒーを飲みながら情報交換をするなど、交流が行われている。参加希望者は下記へ。

<問い合わせ先>
北中城若松病院「認知症カフェ」
098-935-2277


認定作業療法士の中野小織さん|funokinawa

PROFILE
中野小織(なかの・さおり)1968年那覇市出身。北中城若松病院、認知症リハビリ課主任。認定作業療法士、若年認知症専門員。1999年沖縄リハビリテーション学院卒業。作業療法士免許取得後、県内の病院で急性期、回復期、訪問リハビリなどを経験。2011年から北中城若松病院に勤務。2012年、認知症の人と家族の会沖縄県支部の世話人に。「RUN伴」の沖縄実行委員長として現在、企画運営を進めている。



週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
今までの彩職賢美 一覧


撮 影/比嘉秀明
編 集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1223>
第1516号 2016年8月4日掲載

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安里則哉

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編集者
日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。

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