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2011年9月8日更新

暖を取る「荒い海に柔らかな身体」

海んちゅ写真家 古谷千佳子のフォトエッセー「潮だまり」vol.06




暖を取る

荒い海に柔らかな身体



早朝、海女の集落へ足を運ぶ。あたり一面が白く煙り、懐かしいような薪(まき)の匂いがしたら、その日は出漁だ。

ここの海女は、今でも海に潜る前と後に薪を燃やして暖を取る。その様子を見て、海女の漁場は夏でもよっぽど水温が低いのではないかと心配していたが、そんなことはない。ウエットスーツを着ていれば、寒がりの私でも気持ち良いと感じる水温だ。

それなのに、大汗をかくほど火にあたるのは何故だろう?

鳥羽・志摩の海は、リーフに囲まれた沖縄の海と違い、外海からのうねりが直接入ってくる。また栄養分豊富な海は透明度が悪く、ひどい時には伸ばした腕の先が見えないくらいだ。

透明度の高い沖縄の海中で海人(うみんちゅ)が水平に泳ぐのとは異なり、海女たちは身体(からだ)を丸めてクルンと回転し、海底をめがけ垂直に一気に沈んでいく。

狙ったアワビに手を伸ばした瞬間、うねりにグワンと右に5〜6メートルも飛ばされ、次の波では、左に飛ばされ、1カ所にとどまることが容易でない。

時には海藻にしがみつき、時には流されながら獲物を採り続ける。
目の前に現れた岩をかわし、流されても逆らうことなく海に身体を委ねて…。

「柔らかい身体でないと、海女には向いておらへん。柔軟性が大事やわ!」と、早くから男海女(おとこあま)を受け入れ、育て、男と女の海女をうまくまとめているベテラン海女が言う。

海女の仕事は身体が硬くては仕事にならない。だから、暑い日であっても、身体の芯から温めて、柔らかくするのだと。そう言って、私の目の前に立ちあがった海女は、腰を折り曲げ、両手をペタンと床につけてみせてくれた。

柔軟性があるということが、この海で潜るために欠かせない条件なのだ。これもきっと女が潜る理由の一つなのだろう。

陸の上から、あるいは船の上から撮影しているだけでは分からないことがあるが、海女と同じスタイルで一緒に潜ることで、心身で感じながら深く理解できる。

「五感を使う重要性」をあらためて思う。




[文・写真]
古谷千佳子(ふるや・ちかこ)
那覇市在住。海の仕事に従事、スタジオで写真を学んだ後、海人写真家となる。海・自然と調和する人々の暮らしや伝統漁業を主に撮影する。TBS「情熱大陸」などに出演。著書に 写真集「たからのうみの、たからもの」、「脳を学ぶ2」(共著)ほか
http://www.chikakofuruya.com/​
 
古谷千佳子のフォトエッセー『潮だまり』
週刊ほーむぷらざ 第1263号・2011年9月8日に掲載

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