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2025年2月20日更新
愛車で日本一周に挑戦へ|リッキーさん (読谷村)[人生ブラボー!⑨]
仕事の一線を退いた後も、年を重ねても、人生を生き生きと送る人たちを紹介します。今回は、定年退職後、愛車のトライクで夢だった日本一周の旅に挑戦したリッキーさん。仲間との出会い、家族の支えに感謝の思いを語ります。
リッキーさん (読谷村)
ロマンスグレーの長髪を一つにまとめ、細身の体によく似合うシャツとジーンズ姿で、九州、四国、本州を走り回った愛車のトライクにまたがるリッキーさん。思わず「かっこいいですね!」と声を掛けると照れくさそうに笑った
障がいと依存症を乗り越えて
ポリオ(小児まひ)の障がいを抱えながら、デイケア施設の専属運転手として30年間勤めたリッキーさん(69)。定年退職をした今年、愛車のトライクで日本一周の旅に挑戦。多くの人に勇気を与えている。
読谷村で生まれたが、米国人の父の顔は知らない。乳児期の高熱で手足に障がいが残り、出生や障がいを理由にいじめや差別も受けてきた。ストレスに加え、酒で手の震えが収まることもあり、いつしかアルコール依存症に。酔って妻や子に暴力を振るい、依存症の治療で入退院を繰り返した時期もある。そんな中、断酒会との出合いがリッキーさんの人生を大きく変えた。自身の体験を共有し、他人の体験を聞くことで、お酒を断つことができる会の活動の重要性を実感した。
38歳でデイケア利用者を送迎する大型バスの運転手になった。「小さなころから車やバイクが好きで、大型ダンプの運転手に憧れていた」と話すリッキーさん。「好きな運転を仕事にできたこと、断酒仲間と諦めずに支えてくれた家族の存在があったからこそ、30年勤めることができた」と笑顔で話す。
義理の息子のマッキーさん(右)は、リッキーさんの古いトライクを譲り受け、39日間、日本中を一緒に走り続けた
義理息子と二人旅へ
トライクでも通勤。三輪車の一種で安定しており、普通免許で運転可能。オートバイと異なり、ヘルメットの着用義務がなく、バランスが取りやすい。リッキーさんはそんなトライクで日本を一周する夢を抱くようになった。今年、定年退職を機に挑戦を決意。家族会議でリモートワークが可能な長女夫のマッキーさんが同行することになった。
旅は九州、四国、本州を39日間かけて回った。目的は観光でなく人だ。ネットカフェに寝泊まりしながら移動し、各地の友人や断酒会の仲間に会いに行った。皆、再会を喜び、大歓迎してくれた他、リッキーさんの挑戦は多くの人に感銘を与えた。リッキーさんに会うため、遠く離れた他県から駆けつけた夫婦や刺激を受けてカメラマンへの転身・起業を決意した人もいる。
旅はトライクの故障や予期せぬ困難にも見舞われたが、2人の絆を強める要因となった。「マッキーも僕と一緒で、食事や観光や温泉にもほぼ興味がなく、ひたすら一緒に走ってくれたのが良かった。彼のおかげで無事、沖縄に帰ってくることができた」と感謝する。「北海道に行くのは諦めてないよ」といたずらっぽく笑うリッキーさんに「今度はトライクもちゃんと整備して行こうね」とマッキーさん。
年齢や障がいを言い訳にせず、夢を追い続けるリッキーさんの笑顔が、まぶしいほどに輝く。
旅のうれしい出会い
リッキーさんとマッキーさんはトライクで沖縄と鹿児島をつなぐフェリーに乗って九州に上陸。トライクを修理しながら青森まで北上し、再び鹿児島まで南下しながら、全国の断酒会の仲間などに会い、自身の経験を語った。旅の様子はマッキーさんが撮影し、「リッキー・マッキー・トライキー」と題したSNSや動画サイトで配信している。
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取材/赤嶺初美(ライター)
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「第1932号 2024年08月15日紙面から掲載」