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2024年8月15日更新

[旧盆特集]料理に込めた 祖霊への敬意

ことしは8月16日(金)から18日(日)の3日間が旧盆にあたります。旧盆に供える料理や過ごし方について、松本料理学院学院長の松本嘉代子さんに教えてもらいました。旧盆のいわれや料理に込められた意味を知って、祖先をもてなす際の参考にしてみては。

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行事料理を供え 祖霊をもてなす

沖縄の盆(シチグヮチ)は島固有の祖先崇拝の念から、祖霊を歓待し、加護を求めるという趣旨で営まれているようです。盆の3日間、ウンケージューシー(ショーガージューシー)をはじめとする祖霊への料理は朝昼晩の三度、欠かさず供えられます。また、もてなすのに欠かせない重詰め料理も供え方に決まりごとがあるようです。


教えてくれたのは

松本料理学院
学院長 松本嘉代子



もとは祖霊に豊作願う行事
盆は、旧暦7月に行われる祖霊祭で、十三日のウンケー(精霊迎え)から始まって、十五日(地域によっては十六日)のウークイ(精霊送り)で終わるまでの3日間、沖縄の各地域で盛大に営まれます。

沖縄本島では盆のことをシチグヮチ(七月)と言い、「シチグヮチ・ショーグヮチ(七月・正月)」という言葉もあるほど、深く民間の年中行事に定着している大きな祭りで、八重山や与那国などではソーロン(精霊)とも呼ばれているようです。盆は、正確にはうらぼんえ(孟蘭盆会)と言い、インド語のウランバナ(非常な苦しみの意)が語源とされています。この時期は、ちょうど第一期の稲の収穫が終わって、次の農耕に移る農事準備の期間にあたっており、その時期最初の満月の日(7月15日の中元節)に祖霊を招き、前半期の豊作を感謝すると共に、次期の農作の加護を求めたものでした。

このように元来は、農耕儀礼として十五日の中元節が営まれていたのですが、のちに盆行事が流入することによって、仏教的要素の強い行事に変わっていったものです。しかし、沖縄ではそれが必ずしも仏教行事であるという観念はなく、主に島固有の祖先崇拝の念から、祖霊を歓待し、加護を求めるという趣旨で営まれているようです。その日は、親戚や知人が集まって祖霊を供養するため、来客の多い家庭では非常に忙しい時期となります。





旧盆の風景。家族や親戚が集まって祖霊を供養する(沖縄市)

ショーガージューシー供え邪気払い
ウンケーから盆行事は始まります。仏壇は明るいうちに拭き清めて、生花やちょうちんなどを飾って盆祭りの準備を整えます。かつては、農村地域では、ムシナ(六品)と称するアダンの実、クニーブ(九年母)、白ちがー(小判餅)、メーガー(みょうが)、クーガー(なしかずら)、サトウキビなどの供物が、祖霊の食物として供えられていたようです。食生活が豊かになった現在では、スイカ、パイン、バナナ、ミカン、リンゴ、マンゴーなどに代わるようになりました。

ショーガージューシーがつきもので、夕方にソーローメーシ(精霊箸:メドハギの茎で作った箸)=下写真参照=とともに供えられます。しょうがを入れるのは、その強いにおいから邪気払いの食品とされ、祖霊と一緒にやって来るチガリムン(餓鬼)にその膳を食べられないようにするためです。

お供えがすんだら、門前まで祖霊を迎えに行きます。「ウートートゥ シチグヮチ ヤイビークトゥ メンソーレ(ご先祖様、七月(盆)が来ましたから、どうぞおいでください)」と言い、合掌して祖霊を招き入れます。

メドハギの茎の部分はウンケーの時に精霊箸として使われる。葉の部分も祖霊が家にあがる時に足を洗うために使うものとして用意する地域もある

 


ウンケーに供えるジューシー=手前=と、ナカビーに供えるソーメンと団子=左奥

朝昼晩 欠かさず料理供え
中日は、特別に決まった儀礼はありませんが、祖霊への料理は朝昼晩の三度、欠かさず供えられます。朝は主におかゆ、豆腐のみそ汁、冬瓜に白ごま酢をかけた酢の物などが作られます。また昼には砂糖団子(サーターダーグ)と冷やしそうめんが、ほとんどの家庭で供えられます。ソーメンを供えるのは本土の盆行事の影響で、ちょうど本土では盆の頃がソーメンの原料である麦の収穫期にあたっていたため仏前に供えられたものでした。夕食には、白ご飯、豆腐やしいたけのみそ汁、切り干し大根・昆布・冬瓜・豚肉・豆腐などの煮メ物、きゅうりとタコの酢の物、ゴーヤーの地漬けなどが出されます。

最近では、亡くなった人の好んだ料理を作って供える所もありますので、盆料理も各家庭によって若干違いがあるようです。


 

仏壇に供えた料理を器に取り下げ


精霊送りをするまでの様子(金武町)

紙銭を焼き、祖霊を送る
十五日にも盆料理は供えられますが、朝昼の献立は、十四日の料理とだいたい同じもので、夕食には小豆ご飯と小煮などの豚汁に、きゅうりやもやしの酢の物がよく作られています。一般的には、沖縄本島の盆料理は、豚肉をふんだんに使った献立になっていますが、八重山ではそれが精進料理に徹しており、高膳に9品が配膳されて供えられているようです。

自家での精霊送りがあるため、昼のうちに本家や門中などを訪ねて一族の祖霊供養を済ませておきます。精霊送りは夜遅くから行われます。早く済ますと後生(祖霊)を追い立てる意味にとられ、非礼だと考えられるからです。

全員が仏壇を拝んでからウチカビ(紙銭)を焼き、御三味=下写真、生花や線香、ソーローメーシ(精霊箸)などを器に入れて取り下げます。これをまとめて門前に運んで、「ウートウトゥ マタ ヤーヌン メンソーレ(また来年もいらっしゃってください)」と言い、合掌して精霊送りをします。
 
 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 
〈重詰め料理の供え方〉


仏壇に向かって左側に配置
通常の盆の場合、重箱に詰める料理「御三味(うさんみ)」は、赤カマボコや結び昆布=上写真左=などを入れ、見た目に美しく、もてなしの心を込める。内容や飾り方は地域や家庭によって異なるが、重箱に詰める際は仏壇側に肉、手前に昆布がくるようにする。供える際は、仏壇に向かって餅を右側に、重詰め料理を左側に供える。


〈新盆の供え方〉


無彩色に統一
家族が亡くなって初めて迎えるミーボン(新盆)の重詰め料理は、死者の冥福を祈るための料理。白かまぼこ、色抜きしたゴボウ、ケーシクーブ(返し昆布)=上写真左、ダイコンなどで全体的に無彩色に統一、味も淡泊に仕上げる。重箱も黒色で無地が好ましい。

※写真はすべて、松本嘉代子著「沖縄の行事と食~伝統のならわし・重詰め料理〜」より

取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」
第1932号 2024年08月15日紙面から掲載

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