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2022年6月23日更新
[沖縄・シニアウェ~ブ in ほ~むぷらざ]自分で建てた家 柱に込める教訓|中村 秀雄さん(93) 南城市
このコーナーでは充実したシニアライフを送る人々を紹介します。今回は、南城市に住む中村秀雄さん(93)。築59年になる自宅は大工時代に自ら建てたもの。チャーギの柱には「代々の教えが込められている」と笑顔で語る。
19歳から約60年間、大工をしていた中村さん。築59年になる木造の自宅も自ら建築。チャーギの柱、内装に使用した杉材や真ちゅう製のくぎ、高さがある二重ガラスの欄間など、こだわりがたくさん詰まった自慢のわが家だ=南城市の自宅
沖縄戦時下、17歳だった中村さんは、通称「球部隊(たまぶたい)」と呼ばれた旧日本軍第32軍に動員され、弾薬を運ぶなど危険な役目を担った。防衛隊に動員された父は戦死。戦後は、祖父母、母、きょうだいの10人家族を支えるため、畑仕事に打ち込んだ。「育ち盛りの弟がたくさんいて、いつも食べ物が足りなかった。19歳からは農業をしながら、大工の仕事もするようになった」と話す。
きちょうめんで、材木に無駄を出さない仕事ぶりが評価と信用を集め、25歳で独立した。寝る間がないほど忙しくても、「ティーベーサ、ティーチュラサ、シクチチュラサ(手早く、きれいにやることを心掛ければ、仕上がりも内容も良い仕事となる)」をモットーにしてきた。「これだけ心掛けていれば、仕事はできる。弟子にもそう教えてきた」と語る。
コンクリート住宅が主流になると主に内装工事を担い、80歳余まで現場に携わった。
現在暮らす自宅も、59年前に中村さんが自ら建てたものだ。軒を支えるチャーギの柱には特に思い入れがある。「家を造るとき、角材は家の中で使い、軒下に使う柱はチャーギの丸太を使いなさいと言われた。軒下の柱から外は世間と考えなさい。チャーギの柱のように、角がない言動を心掛けなさいという教えが込められているんです」と語る。
壁や扉などの内装には、杉材や真ちゅう製のくぎを使用しており、今も輝きを失っていない。賞状が2段で飾ることのできる欄間は、二重ガラスが施されている。「材料も造りも珍しいので、見に来る人もいるよ」と胸を張る。
南城市玉城前川集落に祭られている「知念之殿(チネンヌトゥン)」は、戦後、米軍から資材をもらい、仲間と3人で建て直した。「ウマチーのときは門中がきて拝んでいるよ」と喜ぶ
ミニヤギと楽しく
33歳から80歳までは酪農も営んだ。3頭から始め、最盛期には40頭飼育。地域から「酪農先生」と呼ばれるほど、優等など高い評価を受ける乳用牛を次々に育て、1990年には玉城村から産業功労優良農家として表彰された。
高齢で酪農を引退した後は、10匹のミニヤギを育てている。「最初は孫と一緒に遊びながらと始めたけれど、孫は大きくなったから、ミニヤギを孫と同じようにかわいがっている」と目を細める。
93歳になった今も、毎朝3時からヤギの世話や庭の手入れをして過ごす。「ずっと働いてきたから、動いていないと調子が悪くなるわけよ」。満面の笑顔に、中村さんの充実した日々が映る。
10匹のミニヤギを飼育している中村さん。5月1日には子ヤギが生まれた(右側)。「母ヤギ(左)はまだ8カ月と若く、最初は心配したが安産で順調に育っている」と目を細める
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取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1820号 2022年6月23日紙面から掲載」