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2021年3月4日更新
[3月8日は国際女性デー]住まいの工夫で夫や子どもと家事シェア
総務省の調査によると、6歳未満の子どもがいる家庭の夫の家事・育児時間は1日1時間余り。家族と家事をシェアしたいのに、「物の置き場や手順を教えるのが面倒」「気付けば私だけバタバタ」という女性も多いはず!今週は3月8日の国際女性デーにちなみ、家族の家事参加や子どもの自立を促す住まいづくりのヒントを紹介。「手間を減らし、家族が使いやすいサイズを考慮するのがポイント」と話す建築士の末松渚さんが手掛けた住宅には、参考にしたくなる工夫が満載です!
家事シェア促す住まいのヒント!
手間減らしサイズも考慮
どこに何があるか全員が把握
共に留学経験があるSさん夫妻。「ホームステイ先のようにオンオフが切り替えられ、家族が心ゆくまでくつろげるように」と新築した。テラスを囲むリゾート風の平屋は、漆喰(しっくい)壁に夫妻の好きなインテリアが映えるゆったりとした空間と、公私を分けた造りが特徴。「片付けの悩みも一気に解決しました!」とSさん。開放的なテラスやLDKでホームパーティーも楽しむ
S邸平面図
ポイントはキッチンからL字につながる北側のプライベートスペースと裏動線=ピンク線。「疲れて何もしたくない日や急な来客時は、引き戸を閉めれば、洗濯や片付けの途中でも気にせずくつろげますよ」と末松さん
カウンター下に棚 扉なしでも気にならない
家族がくつろぐカウンター下に棚を造り付け。扉がないので中が一目で分かる上、必要な物もサッと取り出しサッと収納。ダイニング側からは気にならず、スッキリした印象が保てる
子どもも自分で片付け
Sさんは、夫と子ども2人の4人家族。共働きということもあり、「食事は誰がと決まっているわけじゃなく、一人が動き出したら自然と手伝う感じです。夫は結婚当初からキッチンに立ってくれていますし、今では子どもたちも作るので、疲れて休んでいても何も言われないのがいいですね」とSさん。仕事でSさんが不在でも家事が滞りなく回るのは、「どこに何があるか全員が把握している」から。そのために必要なこととして設計を手掛けた末松渚さんは、「使う場所に使う物が収まっていること、手間なく物が出し入れできること、中が見えても気にならないよう収納の向きや配置を工夫すること」と説明する。
例えばSさん宅なら、家族がくつろぐカウンター下にネット用のモデムやパソコン、お茶セットが収まる棚を造り付け=ポイント❶。置きっ放しになりがちなランドセルや上着類は、帰宅後リビングへ行く途中にある収納=❷=に「置くだけ」。どちらもわざわざ片付けに行く必要がなく、扉がなくても気にならない。
特にSさんが喜んだのは、「洗濯物を畳む」という苦手な家事のハードルが下がったこと。「誰も畳まないので以前は山積みでしたが、今は乾燥機から取り出してカゴに仕分けたら=❸、後は各自にお任せ。一人分だと気分的にも楽なので隙間時間に片付けられるし、面倒ならそのままにしておける。娘は自分で畳むようになりました!」
洗濯後はカゴに仕分け!
家事室。洗濯が終わったら乾燥機から取り出して棚に置いた各自のカゴに仕分けるだけ。ピンクで囲んだ部分は、ドライヤーや化粧品類の収納棚。写真右手に向いているため、扉なしでも中が見えない
移動しながら置くだけ 自分の物は自分で管理
子ども室前の廊下にあるウオークスルークローゼット。夫婦、長女、長男用があり、写真は長男のスペース。衣類、学用品、宝物までが収まる。「以前は玄関にランドセルを置きっぱなしだった息子も、自分で片付けるようになりました」とSさん
キッチンは高さ&ゆとりが鍵
海外で暮らした経験から「家族や友人たちとキッチンを囲んでにぎやかに楽しみたい」と新築した伊波さん一家。庭や空が見える開放的なアイランドキッチンを中心に据えた。研究関連の職に就き、海外の仲間とリモートで打ち合わせをすることも多い克典さんのため、時間を気にせず仕事ができ、オンオフが切り替えやすい居室配置になっている
伊波邸平面図
キッチンが玄関正面にあり「オープン過ぎない? と言われますが、収納もたっぷりあるので気にならない」とあかねさん。ダイニングで使うものはカウンターの前面に、子どものおもちゃ類はリビングの収納に片付けられる。洗濯乾燥機や家事台、クローゼットは裏手にまとまり一連の作業もスムーズ
キッチンは特等席に 機能性もくつろぎも
庭も家族の顔も見える「特等席」に据えたキッチンは、みんなで囲めるアイランド型。カウンターと収納の間もゆとりがあり、大勢で作業をしてもスムーズだ。オープンでも雑多な印象にならないよう、収納は、手持ちの家電やゴミ箱まで収められ、好きな食器類も映える飾り棚兼用にし白で統一。機能とくつろぎ感を両立した
使いやすく居心地よく
家族の家事参加を促すなら、みんなが使いやすいサイズ感を考慮するのもポイント。代表的なのがキッチンだ。「特に調理台と後ろの収納の間が狭いと窮屈で、自然と家族も寄りつかなくなる。通常より20~30センチ広めに取るだけで人がすれ違いやすくなるし、キッチンを軸に回遊できれば使い勝手もグンとアップします」と末松さん。そんなキッチンを、家の中心に据えたのが伊波さん宅=❹。アイランド型のキッチンは、妻のあかねさんだけでなく夫の克典さんや上の息子たちも使いやすい高さを考慮した。あかねさんは「息子たちも自分でご飯を作りますし、私が下の子を迎えに行っている間に夫が片付けてくれるので、すぐ食事が作れる」と笑顔。克典さんは「パスタは僕が担当。先日も僕が麺を打ち、妻がソースを作ってくれました」と顔をほころばせる。
家族が集うLDKを庭が見える特等席にしつらえ、そのLDKに面して子ども室や裁縫室=❻=を配したことも、家族の会話や家事参加を促すのに一役買っている。
自身も3人の子を育てる末松さん。「作業や移動の手間を省き、使う人が使いやすく楽しくなるように工夫することで、自然と散らかりにく、家事も分担しやすくなります。わが家は夫が洗濯担当ですが、『洗濯だけじゃなく、趣味の物が飾れたり、合間に好きなことができるといいなぁ』とリクエストされたばかり(笑)。困った時は家族の行動をよく観察したり、プロに相談して」と話した。
コンロの背後に食品庫 閉じれば「白い壁」
ストック品や調味料が収まる食品庫。コンロの真後ろにあるが、閉じればそれとは気づかない。「中が把握できるよう、入れる物に応じて奥行きを調整するのが大事」と末松さん
だんらんも趣味も思う存分!
あかねさんの裁縫室。ダイニング横にあり、趣味を楽しみながら家族を近くに感じられるため、会話も弾み、キッチンに立つ子どもたちも見守りやすい
末松渚さん (有)武一建設
温かみのあるスペイン漆喰&曲線を生かしたデザインと、効率的な家事動線、ラクにキレイが保てる収納計画が人気。共働きで育ち盛りの子3人を育てる自身の経験を生かした提案で、子育て世代を中心に幅広い層の住まいを手掛ける。
◆(有)武一建設 ☎098・965・3001
撮影/比嘉秀明 文/徳正美
『週刊ほ〜むぷらざ』住まいの工夫で夫や子どもと家事シェア
第1752号 2021年3月4日掲載