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新城和博

2023年9月14日更新

九月には帰らない―いろいろあった夏|新城和博さんのコラム

ごく私的な歳時記Vol.109|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、これまでの概ね30年を振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

今年の夏は……いろいろあった。

八月の初めに沖縄に長期滞在した台風を、ウマンチュのみなさん憶えてますか。思わぬ方向からVターンしてきた台風に、正直ぼくたちは油断していたと思う。長期停電、断水、食品不足と、いつもなら、どーんとこい台風、ビールは買ったぞなどと軽口叩いていたぼくも、台風ウイークの最後にはしゅんとしてしまいました。


失われた一週間の後に月日の感覚、曜日の感覚がずれてしまい、周りでは、火曜日なのに木曜日っぽい、水曜日なのに金曜日っぽいヒトが続出していた。曜日が個人の感覚で決まるのなら、世の中少しは面白くなるかしら……。そんな愚にも付かないことを考えているうちに、友達の少ないぼくが珍しく同級生主催のパーティっぽい飲み会に誘われ、ひょこひょこ出席したら、知らないヒトが多くて緊張しつつ飲み続けて、だんだん楽しくなって酔っ払ってしまい、自宅に帰る途中に転んでしまったらしく、翌朝「なにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した」(「変身」カフカ)……のではなく、鎖骨を骨折していたことを発見したのでありました。芋虫のようにゴロゴロすることもできない肩のハレ。それが旧盆の一週間ほど前のこと。骨折の痛みより以上にぽっきり折れたココロが痛かった。
 

▲お盆でも実家近所をさんぽ もとさしみ屋



四年ぶりに今年は昔のお盆のように親戚まわりをするつもりだったので、鎖骨骨折しつつも交通法規をちゃんと遵守して安全運転で、那覇、西海岸南部広域に散らばる父方の親戚すじに、お盆のウートートーを決行、なんとか御先祖孝行してきた。お中元は鰹節セットで軽くしてもらったのだ。



久々にまわった親戚の様子はいろいろ変わっていた。コロナ禍前よりよりご高齢になったおじさん、入院中、デイサービス中のおばあさん、そしてお亡くなりになったおじいさん……。もう昔話をしてくれることもなくなった……その分、世代交代もしていて、娘、息子さんたちが仏壇の周りがさっぱりとバリアフリーに改築していたりと、いろいろ変化している。飾り付けされたお盆のトートーメーを前にして、僕たち世代(還暦前後)も、親の介護や、その後のことを見据えなければならないというフェーズに直面しているのだ……。


▲骨折しても、もちは用意します


お盆の翌日に予定してた数年ぶりの大学の同級生の飲み会は、さすがに自分を信じることができずに出席を断念した。ちょぃと一杯のつもりで……が怖かったのだ。その他、楽しみにしていたいろいろなことを自粛中です。

そして九月。曜日の感覚は調整されつつあるが、「いろいろあった」はまだまだ続いている。ぼくが言うのもなんだけど、くれぐれも足元の段差と手元の盃にはお気を付けください。
 

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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