「ちむどんどん」のことを考えると「ちむい」?|新城和博さんのコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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新城和博

2022年9月14日更新

「ちむどんどん」のことを考えると「ちむい」?|新城和博さんのコラム

ごく私的な歳時記Vol.98|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

結婚してから、NHK朝の連続テレビ小説を見る習慣がついた。それ以前は「おしん」さえも一度も見たことなかったの。で、もう20年以上は見ているわけだが、何をどう見ていたのか、という記憶は断片的だ。やはり朝ドラを強く意識して見だしたのは「ちゅらさん」以降である。そして「あまちゃん」は全身全霊をかけて見ていた。近年では「おちょやん」が最高だったと思っている。だからこそ「ちむどんどん」だって、ちゃんと「ちむぐぐる」こめて見ています。かの「純と愛」も最後まできちんと見たさいが。やはり沖縄が舞台というのはいろいろ注目してしまう。いろいろご意見あるだろうが、ドラマとして、普通に楽しんで見るようになった。えらいっ! 自分で自分を深く甘やかしたい年頃なのだ。

▲ここ最近で一番ちむどんどんしたこと

ところで「ちゅらさん」は朝ドラ以降、全国的にも多くの人が知るうちなーぐちになったと思う。県内でもっとも観光客が訪れるという「美ら海水族館」の影響もあるだろう、「ちゅら」という言葉は、まあまあ全国区といっていいだろう。

では「ちむどんどん」はこれからどうなるのだろうか。ドラマではなくて、うちなーぐちとしての将来だ。「ちゅらさん」のように全国で知られるようになるのかしら。ドラマが終わったあとの「ちむどんどん」の将来については、いろいろシワ(心配)している。このままじゃ違う意味でいろんな人のちむに刻まれるのならやだなと思う。

そもそも自分の人生のなかで、つい思わず口に出してしまったことがあるだろうか、「ちむどんどん」。そんな青春もパッションも持ち合わせていなかったような気がする。他人がリアルに言うのも聞いた覚えはない。かと言って知らなかったわけじゃないし、わざと意識して使う場合だってあった。まぁ使わなくても「ちむどんどん」状態になっていたことはある、ような気はする。口に出して「ちむどんどんするさー」と言わないだけさー、のかもしれない。


▲親戚のお盆のオードブルでちむどんどん

そのむかし。沖縄の若者たち(中高生)の間で、「ちむい」という、うちなーやまとぅぐちが使われていると知ったのは、1990年代の始めころ。当時、うちなーぐちは今後どうなるのだろうと、自分も「聞けるけどしゃべれない」世代として気になっていた。このまま絶滅していくのか、どうか。しかし若者たちは、新しい沖縄の言葉の活用形を生み出していることに感心したのだ。そういううちなーぐちスラングも歴史を作り出すことだってあるはず。

ぼくが聞いた「ちむい」は、他の人を見て、話しをきいて「かわいそう」と思ったときに使うという。つまり「ちむぐりさん」である。「心が苦しい」「かわいそう、気の毒だ」という、心の底からのシンパシーなのである。「ちむい」ということで、比較的ライトなシチュエーションでもカジュアルに「ちむい」「ちむい」と使えるのも、うむさん。

この「ちむい」はなかなかのものだ。きっとこのうちなーぐち若者言葉は、使いでがあるから、きっと生き残るに違いないと、当時、確信していた。

そして現在……みなさんのまわりに「ちむい」はいますか? 「ちむい」と口に出す人はいますか? 「ちむどんどん」が脚光をあびているなま、ぼくは静かに「ちむい」を探す旅にでようと思っています。(要するに現在調査中です。いろいろ情報集まってきました。いずれ報告します)。

9月18日は「しまくとぅばの日」。ぼくは、うちなーやまとぅぐちも、若者たちが生みだしていくうちなーぐちスラングも、新しい「しまくとぅば」だと思う。そもそもこの「しまくとぅば」も、本来は「シマ(集落)」単位で使われる言葉という意味合いが強かったそうで、沖縄諸語(沖縄のシマジマ各地で使われているさまざまな言葉)全体を「しまくとぅば」と言うのは、極めて新しいことなのである。

さて、残りあとわずかの「ちむどんどん」を見ながら、「ちむわさわさー」「ちむぐりさん」「ちむしからーさん」と、しばらくは全面的に「ちむ・ちむ」していこう。


▲石獅子を見てちむどんどん

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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