あの夏って誰の心にもある一枚の風景写真|本村ひろみさんのコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

本村ひろみ

2022年9月5日更新

あの夏って誰の心にもある一枚の風景写真|本村ひろみさんのコラム

フリーパーソナリティーの本村ひろみさんが、暮らしを楽しむアンテナを巡らせて日々の沖縄・風景をレポートします。fun okinawaコラム「おきなわ暮らし散歩 Vol.94」

迷走台風11号がこれからまさにUターンして最接近してくるという夜にこの原稿を書いている。風雨も少しつよくなってきて、窓ガラス越しに雨音が聞こえる。久しぶりにチムワサワサーする台風。
どうか大きな被害がありませんように。



旧盆終わって久しぶりの道じゅねーにワクワクしたのもつかの間、気がつけば秋の気配。ていうか、もう9月。
年をとればとるほど時間はあっという間に過ぎてゆくって昔からまわりの大人はみんな口々に言ってたけど、それは本当のことだと今更ながら思う。いや、年々確信している。一週間前のことが遠い昔のことのようだし昨日のことのようにも感じる。「あれって先週のこと?」って何度も口にしている。時間が濃縮されているのか、記憶の棚がひとつうえに上がってしまったのか。遠い昔の風景と昨日の記憶が同時に存在している。すべてが夢のよう。
椰子(ヤシ)の木ではコウモリが風に揺れていた。



「あれは去年の夏だった?それとも一昨年の夏だったかな?」
ここ数年は出来事をそんなふうに思い返すのに、10代20代の頃の夏は“あの夏”って感じでピンポイントにしっかり栞(しおり)が挟まれていて、見たものの色彩や湿度や匂いも思いだせる。あの夏にみた夕暮れ、あの夏友人と笑いあったこと、あの夏ドライブしながら聞いていた音楽…なんて考えていたら、私の頭の中にはサザンの「真夏の果実」が流れてきた。胸キュン。



2022年、私の夏の栞は間違いなくあの道じゅねーの後ろ姿。
真新しい浴衣でうれしそうに踊っていた姿がしっかりと胸に刻まれた。



先日実家に行ったら台所から甘い香りがした。テーブルにもぎたてのバンシルーが置かれていて、母がひとつ手にして、ちょうどカットしたところだった。立ち上がるジューシーな甘さ。うすピンクの実はまだ少し固そうだったけど、なんとも言えない香りを放っていた。庭のバンシルーの木の下に転がっていた2個を持って帰ってきた。タイフーンの夜、しめきった部屋のなかは熱帯の果実の香りで満たされている。
風は静かになった。いつの間にか雨も弱くなっている。
目が覚めたら台風が小さくなっていますようにと願うばかり。



さて、もうすぐやってくる9月10日は中秋の名月。

『秋雲に たなびく雲の 絶えまより もれいづる月に 影のさやけさ』
(秋風に吹かれてたなびく雲の切れ目から、もれ出てくる月の光の澄みきった美しさといったらどうだろう)
左京大夫顕輔(百人一首)

風流な9月でありますように。

本村ひろみ

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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