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精神科医の長田清さんが、人生を豊かにする心の持ち方や、職場や親子の人間関係などについてつづります。(文/長田清 長田クリニック院長)
他者の愛情に気づく
皆さんは“反省”をしますか。恐らく誰もが、日々何かしら反省していると思います。子どもの頃から悪い点や失敗を注意され、次から直すようしつけられてきました。大人になると、自分の行動や態度が正しかったか、適切だったかを見つめ直す“内省”もするようになります。
客観的に自分を振り返ることは大切です。ただ、自己流の反省ばかり続けると、自分が嫌になり、かえって落ち込んでしまうこともあります。
そこで安全に自己洞察を深める心理技法として「内観法」があります。母や父など関係の深い人物への過去の行動を、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」という三つの視点(内観三項目)から静かに振り返るのです。

してもらったこと
この三つの問いを通して自己と他者との関係を見つめ直すと、過去の記憶はまったく違う色合いを帯びてきます。「してもらったこと」がどれほど多く、「して返したこと」がどれほど少なく、「迷惑をかけたこと」がどれほど多かったか。苦しかった時期を自分の力で生きてきたと思っていたのが、振り返れば誰かしらの支えがあったのだと気づかされます。
不満だらけに思えた過去が、実は多くの愛情によって育まれていたという「おかげ」に気づく時、心には他者への感謝と、自分自身への肯定感が自然と湧いてきます。そして受け取った無償の愛のバトンを、今度は誰かへ手渡したいという、新しい生きる力が生まれてくるのです。
ある女性が“集中内観”(1週間泊まり込みで行う内観法)を終えた後、若くして亡くなった父親との思い出を語ってくれました。
学生時代、国語の成績が良いと「お父さんが国語の先生だからだね」と言われるのがとても嫌だったそうです。自分の努力が父親の手柄にすり替えられるようで、理不尽な反発を覚えていたと言います。
しかし、内観を通して、本を愛し文章を書くことが好きな自分の根っこには、幼い頃に父が整えてくれた環境と、惜しみない愛があったのだと気づきました。反発していたはずの父親こそ自分を形作った最大の「おかげ」だったと、ふに落ちたそうです。
「内観法」は過去に眠る「おかげ」を掘り起こし、自分の人生物語を豊かにしてくれます。手軽な方法としては、毎晩「今日してもらったこと」を探してノートに書き留めるだけでも十分です。自分がどれほど多くの「おかげ」に囲まれて暮らしているか、きっと驚くはずです。
“集中内観”は全国の内観研修所で受けられ、沖縄でも南城市知念の「沖縄内観研修所」で体験することができます。
前回(7月23日号)の読者の感想
◆良寛さんの俳句には、感動いたしました。どんなことが起こってもそこにいいことを見つけられるようなマインドになりたいです。成人した3人の子どもを見ていると、子どもを育てているつもりでも実は子どもたちに親として人として育てられていることに気づきました。「ありがとう」と言った数の倍以上に幸せがやってくると今なら思えます。(美しい月・61歳)
ドクトル「親のおかげを押しつけることなく、子どもの『おかげ』を感じられる日々は幸せです。良かったですね」祖父母の視点。足して二で割るバランスが大切」
◆中学生の女の子が、「あなたにとって大切な人は」という問いかけにお友達の名前を挙げ、「他に大切な人は」の問いにしばらく間をおいて「お母さん…」と話したエピソードが印象に残りました。女の子の気づきにとてもハッとさせられました。自分は自分自身の味方でいられるよう、今の幸せに目を向けることの大切さを改めて感じました。(チロ・53歳))
ドクトル「そうですね、当たり前の幸せに気づけることが自分を大切にすることになり、不満を減らし不安に強くなります」
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執筆者プロフィル

ながた・きよし/2001年に那覇市で長田クリニック(精神科)を開院。心理療法の活動に軸を置く。沖縄いのちの電話理事長。おきなわCAP代表。沖縄エッセイスト・クラブ会長。著書「ドクトルきよしの大ピンチ」ほか多数
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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」ドクトルきよしのダイヤローグ(5)
第2037号(2026年8月27日発行)より転載
