精神科医の長田清さん(77)は、気持ちを前向きにするこつとして「未来に対して良い期待を持つ『楽観性』が大切で、それは趣味や楽しみ、家族・友人との交流によって生まれるポジティブな感情によって強まります。また、自分も含めて物事を俯瞰(ふかん)的に見ることで、ネガティブに捉え過ぎずに気持ちが楽になります」とアドバイスする。(池原拓)
※当記事は、「週刊ほ〜むぷらざ」第2003号(2026年1月1日発行)の掲載記事を再構成したものです。年齢は取材当時。
長田クリニック院長・精神科医の長田清さん

ながた・きよし/2001年に那覇市で長田クリニック(精神科)を開院。心理療法の活動に軸を置く。沖縄いのちの電話理事長。おきなわCAP代表。沖縄エッセイスト・クラブ会長。著書「ドクトルきよしの大ピンチ」ほか多数
不安や落ち込みといったネガティブな感情は、物事はうまくいかないだろうと考えがちになる心の「悲観性」によって生まれるという。こうした心の働きには、周囲への警戒を促したり、無理をし過ぎないようにブレーキをかけたりするという生存のための役割がある。
長田さんは「例えば、抑うつは倦怠感や食欲不振を引き起こして、強制的に休養を取らせようとしているのです。一方、未来に対して良い期待を持つ『楽観性』は、喜びや楽しみ、安らぎ、愛、友情、希望、感動といったポジティブな感情を引き出し、好奇心を持って物事に挑戦する気持ちにさせてくれます」と説明する。
どちらも生きる上では大切な心の働きだが、生存のための役割がある悲観性は楽観性よりも強く出やすいため、意識的にポジティブな感情を多く味わうことでバランスをとる必要がある。
「好きなことを楽しみ、家族や友人との交流で愛や友情を育むこと。興味関心がある新しいことへの挑戦。あるいはドラマや映画、マンガ、アニメといったフィクションへの感情移入であっても、心に良い影響を与えてくれます」
俯瞰で自分を観察
物事がうまく行かずに落ち込んでいる時は、その原因を突き詰めて改善しようとするのではなく、うまく行くための課題として考えましょうと長田さんは呼び掛ける。「例えば、人前で緊張して上がってしまう人は、『緊張をしない』ようにするのではなく、課題として『人前でもリラックスする』方法を考えましょう」
また、自分も含めて物事を全体的に俯瞰して見ることで、自分の思考や行動を客観的に観察する(メタ認知)ことができ、ネガティブに捉え過ぎず気持ちが楽になる。長田さんは著書のエッセーで日常の出来事をユーモアを交えてつづっているが、これもメタ認知につながっている。「私の場合は思わぬ失敗や間違いを自虐ネタとして面白がって、話のネタになると考えることで、自分を客観的に見ることにつながっています。そんな風にある出来事の登場人物の1人として自分を観察するのも一つの方法だと思います」
感謝の気持ちで心身が安定
人は社会の中でそれぞれの役割を担っている多くの見知らぬ人たちによって支えられて生かされている。社会全体や周りの人たちに「おかげさまです」と感謝の気持ちを持つことで、気楽に生きることができると長田さんは説く。「感謝の気持ちを持つと、脳内で心身を安定させる神経伝達物質の分泌が促されます」
また、相手から受けた恩は直接返すのではなく、ほかの誰かに親切にすることで返してもいいという。「そうして『恩送り』をすることで、感謝の気持ちは社会を循環していきます。その循環の中に自分がいると感じることが社会の中で生きているという安心感につながります」
内観療法を活用

気持ちを前向きにするために日常生活でできることとして長田さんが勧めるのが「内観療法」という心理療法を活用した方法。これは、毎日小さなノートに「良かったこと(五つ以上)」「人からしてもらったこと」「人にして返したこと」「迷惑をかけたこと」を書き留めるというもの。
長田さんは「良かったことを書くのはポジティブな見方を習慣付けるためです。してもらったことや迷惑をかけたことは、社会の中で自分が生かされていることを自覚し、感謝の気持ちにつながるからです」と話す。
