「吐く」ことで生まれる余白|50代から人生を軽く 片付けコンサルタント根原典枝の人生整理術

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整理収納をサポートする根原典枝さんが、人生を軽くするための心持ちをつづるエッセー。「吐く」ことで生まれる余白について考えました。


以前、座禅の体験会に参加したときのことです。住職さんに「深呼吸してください」と言われ、私も多くの人も、吸ってから吐く呼吸をしていました。すると住職さんは、穏やかな声でこう言いました。「先に、吐いてください」 

その一言に少し驚き、ゆっくり息を吐いてみました。できるだけ長く、静かに、体の中の空気を外へ出すように。すると、吐ききった後、頑張らなくても自然にすっと空気が体に入ってきたのです。その感覚がとても印象に残りました。その時ふと気づいたのです。多くの人は私と同様に、吸うことばかりを意識しているのかもしれないと。 

物を増やす。新しい情報を取り入れる。予定を詰める。誰かの期待に応える。良かれと思って積み重ねてきたことが、知らず知らずに自分を忙しくさせ、浅い呼吸のまま余裕をなくしていたのかもしれません。気づけば暮らしに「入れること」が増え「出すこと」を後回しにしていたように思います。 

私は普段、暮らしを自分(self)、空間(space)、仕組み(system)、関係性(social)の四つでとらえています。この四つに共通しているのが、「余白」です。余白とは、何もない状態ではなく「自分で選べるゆとり」のこと。立ち止まって考えられる余裕。やらない選択ができる余裕。本当に大切なものを見極められる余裕。そんな余白があることで、暮らしはぐっと軽やかになります。

引くと自然に入ってくる

余白はどうすれば生まれるのでしょうか。そのヒントが、あのときの呼吸にありました。「まず吐くこと」。そして、吐くことと、掃くこと。どちらも「外に出す」ことで整えていく行為です。朝、玄関の扉を少し開けて空気を入れ替え、軽く玄関を掃くと、空気まで澄んで感じます。気持ちが不思議と整っていく。同じように、内側も外側も出すことで余白が生まれます。

自分(self)は、使っていない物を外に出す。いつか使うかもしれないと残していたものを見直し、今の自分に必要かどうかを問いかけてみる。 

空間(space)は、目に見える余白をつくること。使っていない物を手放し、床やテーブルに何も置かれていない場所を作ってみる。その空いたスペースが、視界だけでなく、心まで軽く軽くしてくれます 

仕組み(system)は、詰め込み過ぎた予定をゆるめる。空いている時間を埋めるのではなく、あえて何もしない時間を残してみる。 

関係性(social)は、無理なつながりから一歩引いてみる。全てに応えようとせず、自分の心地よさを大切にする距離感を選ぶ。 

どれも特別なことではありません。ほんの少し「出す」だけ。でもその小さな変化が、暮らし全体の流れを変えていきます。すると不思議なことに、空いたところに、本当に必要なものが自然と入ってきます。無理に何かを足そうとしなくても、必要なものは、静かに満ちていきます。

吐くことは、失うことでなく整えるための始まり。50代からは、足すことよりも引くことが暮らしを軽くしてくれます。これまで頑張って積み重ねてきたからこそ、これからは少しずつ手放していく。その選択が、これからの時間をより自由で、自分らしいものにしてくれるのだと思います。

忙しさの中で見失いがちな「ゆとり」を日々の中に取り戻していく。そのために、今日から小さな「吐く」を取り入れてみませんか。

執筆者プロフィル

ねはら・のりえ/1972年うるま市出身。2010年に片付け・掃除で悩む人をサポートする(株)暮らしかたらぼを設立。
電話 080(2731)8883
https://kurashikata.co.jp

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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」50代から人生を軽く(2)
第2023号(2026年5月21日発行)より転載