市場で草木染 コーヒー店営む|彩職賢美

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笑顔が輝く親富祖愛さん(43)。4人の子を育てながら、本部町営市場で草木染の服を作り、コーヒーショップを営む。原点は自然豊かな瀬底島での祖父母との暮らしだ。米軍人の父を持ち、差別を経験。「多様性を受け入れ、おおらかに学べる場を」と、瀬底島でフリースクールの設立に奔走している。(取材/栄野川里奈子、撮影/比嘉秀明)

Ai&Daidesigns BLM COFFEE 店主、デザイナーの親富祖愛さん(43)

自然豊かな暮らしが原点

多様性を受け入れる 学びの場を瀬底島に

原点は幼少期、瀬底島での祖父母との暮らしだ。タピオカ芋を粉にする手伝いをしたり、倉庫の脱穀機で遊んだり。時計もおもちゃもなく、絵本が一冊だけ。自然と共に暮らす日々は「相当楽しかった」と振り返る。高校まで、長期の休みは祖父母の家で過ごした。

ロールモデルは、畑と商店を切り盛りし、運動会の日には校門前でかき氷を売っていたパワフルな祖母。台風の中スイカを守ろうと、4歳の親富祖さんを連れて畑へ向かう人だった。収穫したスイカはうるま市石川まで軽トラで運んで、販売した。「おばあちゃんは自然と共に生きる『昔の人』。『何でもやる精神』は、本部町営市場の雰囲気に似ている」

親富祖さんはデザインの道を志し、高校でデザインを学び、専門学校でパターン(型紙作り)を習得。高校では片道2時間のバス通学を3年間やり遂げ、専門学校では学費を工面するため県外で季節労働へ行き、卒業した行動派だ。専門学校の先生の「人はなりたいと思うようになれる」という言葉が支えになった。


31歳、3人の子育て真っ最中に、本部町営市場に店を構えた。「持続可能な暮らし」に強い関心があり、冷蔵庫のない生活や廃油で走る車など循環型の暮らしを実践していた親富祖さん。オーガニックの布を販売し、服作りの教室を開いた。盛況だったものの、採算が合わず大赤字。数百万円の蓄えを失う苦いスタートだった。

そんな中、救ってくれたのは市場のコミュニティーだ。「コーヒーを飲んでいたら、『ハイハイ』と誰かが自然に子どもを抱っこしてくれる。4人目はほぼ抱っこしていないくらい」と笑う。その雰囲気を「シーブン(おまけ)」という言葉で表す。「お肉屋さんで少しシーブンをもらって心が満たされたら、その余剰を誰かに回す。仏教の『余剰』に通じると思うんです」

市場の手作り市で服が完売したことを機に、服作りをスタート。家族で2カ月かけて全国のイベントの巡業もした。車中泊も覚悟していたが、知り合った人が「うちに泊まりなよ」と手を差し伸べてくれた。お店で接客中「滋賀のイベントに出たい」と話していたら、目の前の客がたまたまその主催者だった…という不思議な縁も。人との繋がりが、折々で親富祖さんの背中を押してきた。

現在、併設する2店舗を営む。「Ai&Daidesigns(アイ アンド ダイデザインズ)」では、深い藍色の琉球藍のピアスや鮮やかな黄色のフクギのTシャツなどオリジナルのアイテムを製作・販売。カフェラテショップ「BLM COFFEE(コーヒー)」では、市場で焙煎したコーヒーやオリジナルのドリンクを販売している。

エネルギッシュな活動の一方で、米軍人を父に持ち、幼少期から差別と向き合ってきた。見知らぬ人に「何人?」と聞かれ、無断で髪を触られる。「無自覚の小さな差別(マイクロ・アグレッション)を数え切れないほど受けてきた。私は図太いからやってこれたけど、心を病む人もいる」

その刃が、自分の子どもにも向けられた。学校生活で直面した無理解な言動。学校へ対話を求めたが理解は進まず、宜野湾市のアメラジアンスクールへ片道2時間かけて通う日々。体力も資金も限界に達したとき、「その労力を使って、自分でスクールを作ろう」と決めた。

現在、故郷の瀬底島でフリースクールを建設している。思い描くのは、自然の恵みを分かち合う、アメラジアンを始めとした多様な子どもが伸び伸び育つ学校だ。親富祖さんが作り育てるその場所は、子どもたちにとって新しい希望の拠点になるだろう。

おおらかに学ぶフリースクール

子どものころの親富祖さんと祖母=写真は親富祖さん提供

親富祖さんがフリースクールを作ろうと思ったとき、真っ先に思い浮かんだのが瀬底島での祖母との暮らしだった。ウージをもらって食べたり、海でウニを捕ってその場で割って友だちと食べたり。自然のある暮らしは、おおらかで豊かだった。

フリースクールでも、午前中は畑を耕してイモや野菜を育てて、収穫した野菜で給食を作れたらと考えている。地域の人に協力してもらい、英語やウチナーグチも学ぶ。「資本主義とは違うことを学べる場にしたい」

「すべての子に学ぶ権利がある。いろいろな子が学べるよう、フリースクールの学費は無料にしたい」と親富祖さん。さまざまな人にボランティアで講師を依頼し、カフェやコワーキングスペースを併設し、寄付を受け付けたいと考えている。「余剰のある大人」が運営や教育を支える仕組みを構想中だ。

「まずは知ることから」

親富祖さんは小学校を回り、自身の体験や差別について伝え、対話する「ヒューマンライブラリー」に参加。

2020年には冊子「BLACK LIVES MATTER PICNIC ~なぜ黒人の命は理不尽な扱いをうけ続けているのか?~」を発行した。冊子には黒人差別の歴史や当事者、パートナーなどさまざまな人のインタビューが載っている。「差別ではなく理解し合える社会になってほしい。まずは知ることから」と、自身の思いを記している。

ポールダンスで心身をメンテナンス

趣味は、1年前から始めたポールダンスだ。「自分の体を支えるのは想像以上に大変だけど、思うように動かなかった体がどんどん変わっていくのが魅力」と、那覇市の教室へ通っている。

4年前から筋トレを続けていて、運動がもたらす「心への効果」を実感している。「運動を始めて、仕事や子育てで迷ったときもすぐに判断ができるようになり、落ち込むことも減りました。効果は絶大です」。体を動かすことは、親富祖さんにとって前向きに生きるために欠かせないメンテナンスとなっている。

プロフィル

おやふそ・あい
1983年生まれ。瀬底島で幼少期を過ごし、うるま市石川で育つ。沖縄プロカッティングスクール卒業。2013年本部町営市場に「Ai&Daidesingns」22年に「BLM COFFEE」をオープン。現在、瀬底島にフリースクールを建設中。4人の子の母。


毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」彩職賢美〈1459〉
第2022号(2026年5月14日発行)より転載