「子どもが希望する進学をかなえてあげたい。でも、自分たちの老後資金の準備が思うように進まず、不安です」。これは、私がマネー相談でよく耳にする声です。(文/岡田有里・ファイナンシャルプランナー)
お金の流れを見直そう
子どもが高校生になると進学先が具体的に見え始め、教育費への関心は一気に高まります。一方で、物価上昇で生活費が家計を圧迫し、「老後の準備まで手が回らない」と感じている方も少なくありません。子どもの将来を応援したいという親心は自然なものです。しかし、その思いが強いからこそ自分たちの老後資金を後回しにしてしまうご家庭も見受けられます。
見通しにくい老後資金
教育資金と老後資金は、どちらも人生に欠かせない大切なお金ですが、両者には異なる特徴があります。教育資金の特徴は、進学時期、金額をある程度見通せることです。また、進学先の選択や授業料減免制度、奨学金、教育ローンなど、自己資金以外の選択肢もあります。
一方、老後資金は少し性質が異なります。退職後の生活は何年続くのか、医療費や介護費がどの程度必要になるのか、誰にも正確には分かりません。つまり、老後資金は「終わりが見えない支出」なのです。教育費には卒業という区切りがありますが、老後の暮らしには明確な終わりがありません。
時代の流れで親世代の年齢の変化もあります。例えば、50代後半~60代で子どもが独立する場合、教育費が落ち着く頃には退職が目前というケースも少なくありません。「教育費が終わってから老後資金を準備しよう」と考えても、その頃には十分な時間を確保できない可能性があります。だからこそ、教育費と老後資金を対立して考えるのではなく、家計全体の中で両立させる視点が大切になります。
お金の流れを見える化
その第一歩としておすすめしたいのが、お金の流れを「見える化」することです。教育費、住宅ローン、老後資金を一枚の紙に書き出し、子どもの進学・卒業予定、住宅ローンの完済時期、自身の退職予定、公的年金の受給開始時期などを時系列で並べてみてください=下表。将来のお金の流れが整理されると、「何となく不安」という気持ちが、「いつ、何を準備すればよいのか」という具体的な課題へと変わっていきます。次にすることは、「ねんきん定期便」で将来受け取る見込みの公的年金額の確認です。

このようにして、老後生活で見込まれる資金不足を確認して早めに準備を始めることが安心につながります。例えば、NISAを活用した長期・積み立て・分散による資産形成は選択肢の一つなので、家計に無理のない範囲で、長く続けられる仕組みを作って地道に取り組みましょう。
小さな準備が未来の安心に
「自分たちの老後資金を優先するのは、気が引ける」と話す方もいらっしゃいます。もちろん、子どもの学びを支えることは親の大切な役割です。しかし、自分たちの老後資金を準備することは決して親の責任を後回しにすることではありません。老後資金が不足すれば、老後に生活費や介護などで子どもに負担をかける可能性があります。自分たちの生活基盤を整えておくことは、結果として子どもの人生を守ることにもつながるのです。
子どもの未来を応援することと自分たちの老後を守ることは決して相反するものではなく、どちらも家族が安心して暮らすための大切な土台です。教育費について考える時間に、ご自身の老後について考える時間も少し加えてみてください。
未来に向けた小さな準備の積み重ねが、10年後、20年後の安心につながります。そんな視点で、ぜひ1度、ご家庭のお金の流れを見直してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィル

おかだ・ゆり/ファイナンシャルアライアンス(株)沖縄支店所属。外資系企業をへて沖縄へ。女性のマネー知識の底上げをライフワークに活動
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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」マネーのヒント!(29)
第2034号(2026年8月6日発行)より転載
