万一の際はどうする?|13年間の在宅介護日記

看護師で介護支援専門員の資格も持つディロング直美さんが、父親を家族で13年間在宅介護した経験をつづります。(文/ディロング直美 「家族介護のwa」代表)

緊急時の対応と延命措置

ご家族が入院し治療が終わると、退院の日が近づいてきます。喜ばしいことである一方で、退院後の生活について不安を抱える時期でもあります。

選択肢踏まえリサーチ

退院後の生活の場は、入院期間や回復状況によっていくつかの選択肢があります。まずは医師の病状説明を聞き、家族の介護力などを確認。その上で、在宅復帰や施設人所、転院などのパターンをイメージし、入院中からリサーチしておくと、退院時に慌てずに済みます。

父の場合は次々病気を発症したため、病状に合わせて転院や入所になることが多く、その都度、医師の提案や説明を聞いて、回復のめどや退院の時期を確認しました。ケースワーカーとも面談し退院先や介護認定、身体障害認定などについての説明を受け、市役所で申請。診断書などの書類作成は医療機関や主治医に依頼しました。介護保険の認定調査にも立ち会い、調査員に入院中の普段の様子や気になる点を伝えました。

並行して転院先になりそうな病院や施設を見学。主な介護者である母の年や体調を踏まえ、介護の量や家族の介護力、利用できるサービスなども考慮して、退院先を決めていきました。

父の意向を尊重し決定

誰もが、ご家族の病気の回復を望んでいますが、状態によっては入院中や救急搬送時に心臓や呼吸の状況が急変することがあります。そうしたケースに備え、病院は緊急時の対応や延命措置について、あらかじめ意思確認をします。

医師の説明を聞き、本人に確認ができる状況であれば、命の尊厳を守るためにも本人に確認して決めてください。確認できない場合は家族で話し合って決めることになります。特に救急搬送時は慌てていて、それどころではない状況だと思いますが、ケースによっては搬送後の初期治療を待つ間に決めなければならないことも。そうならないためにも、できる時に話し合い、確認しておきたいですね。

私も、父の入院後に医師から「お父さんの年齢を考えると、急変時は、呼吸確保のための気管のチューブを入れて呼吸器を付けたり、点滴、強心剤などの積極的な処置はしなくてもいいですよね?」と確認されました。父の命は私が決めることではないし決められないと思い、父に確認。母と私と3人で話し合い、積極的な救命措置は行わず、自然に逝きたいとの意向を医師に伝えました。

命を弄んではいけない

以前、私が勤めていた病院での出来事です。入院患者さんが急変。いつも面会に来られるご家族は自然のままにとの意向でしたが、後から駆けつけた一度も面会に来られていないご家族が延命措置を希望し、廊下でもめていました。

医師は家族を集めて本人の状態を説明した後、「家族でも意見の違いで本人さんの命を弄んではいけない。命には尊厳があり、もめるのは本人さんが気の毒。ちゃんと話し合って決めてください」ときっぱりと言い放たれたのが胸に刺さりました。話し合いの結果、自然のまま見守ることに。ご本人は安心されたかのように安らかに旅立たれました。

もう40年も前のことですが、その光景は今でもはっきりと覚えています。父の時もこの出来事を思い出しながら話し合ったことで、父の意向を尊重して決めることができました。

回復して転院や退院ができる方、望みかなわず旅立たれる方、どんな状況であっても命の尊厳は守られ、その人らしく生き、旅立つ権利があると思います。病んでいる人が少しでも安心して療養ができ、できるだけ本人も家族も後悔しない環境を作れるよう心掛けていきたいですね。

執筆者プロフィル

でぃろんぐ・なおみ/看護師。亡き父を13年間介護。2023年「家族介護のwa」設立。「ワクワク介護叶(かな)え隊」の翁長久仁子さんと共に介護の悩みを話し情報交換できる「介護の語り場」開催中

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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」13年間の在宅介護日記(3)
第2026号(2026年6月11日発行)から転載