旅行
2025年10月16日更新
366日かけて世界一周した沖縄のインスタグラマー 最初のメキシコで感じた、故郷と通じるもの|沖縄人の世界一周 −1−
366日かけて世界一周をした「旅する沖縄人」さんの新連載がスタート! 21カ国を巡ったその目に映るのは、色とりどりの人、街、文化。沖縄人が見た世界の魅力をたっぷりお伝えします。
沖縄人の世界一周 −1−

世界遺産に登録されている美しい都市グアナファト。毎年11月1日と2日は「死者の日」が行われる
366日かけて世界一周をした「旅する沖縄人」さんの新連載がスタート! 21カ国を巡ったその目に映るのは、色とりどりの人、街、文化。沖縄人が見た世界の魅力をたっぷりお伝えします。
世界一周の最初の目的地に選んだのはメキシコでした。ちょうど「死者の日」(11月1日、2日)が近づく時期で、街の広場や市場は色とりどりの骸骨の飾りやマリーゴールドの花でいっぱい。人々は故人を悼むというよりも、一緒に食べ、歌い、笑う準備に大忙しです。その明るさに触れた瞬間、私はふと沖縄の旧盆を思い出しました。
沖縄の旧盆もまた、先祖を迎え、家族や親族が集まって3日間をにぎやかに過ごします。最初のウンケーでご先祖を迎え、中日には親族や友人が集い、最終日のウークイではにぎやかに送り出す。夜になれば三線の音色とエイサーの太鼓が町中に響き渡り、先祖とともに踊り明かす―。死を悲しむよりも「いま共に生きている喜び」を分かち合う祭りです。
メキシコシティの市場で見かけたカラフルな砂糖菓子のドクロは、まるで「死さえも笑い飛ばす」ような陽気さを放っていました。それは沖縄の旧盆で出される重箱料理や泡盛の楽しさにも通じます。食卓を囲むことで、先祖と子孫、亡き人と生きる人との距離が自然と近づき、境界がやわらかくほどけていくように感じられるのです。

登ガイコツメイクや仮装をして、パレードに参加する人々

街中に骸骨のオブジェやマリーゴールドが飾られる
先祖と共に生きる
メキシコの中央部に位置するグアナファトの丘から見下ろすカラフルな家並みには、死者の日の灯(あか)りがともり、夜空には音楽と歌声が響いていました。その光景は、沖縄の夜道を練り歩くエイサーの行列とどこか重なります。太鼓の音が遠ざかっていくときの切なさは、メキシコで見たろうそくの炎が小さく揺れながら消えていく瞬間と同じでした。ちなみに、このグアナファトやオアハカは、映画「リメンバー・ミー」の舞台となった街でもあり、作品の世界そのままに〝死者の日〟のスピリットが息づいていました。
さらに南のサンクリストバル・デ・ラス・カサスでは、墓地に集まった家族が花びらで墓を彩り、ろうそくを灯しながら故人と過ごしていました。そこに漂っていたのは悲しみではなく、再会を喜ぶ温かな空気。まるでウークイの夜に、親族総出で先祖を見送る沖縄の旧盆のようでした。両者に共通しているのは、死を「終わり」ととらえず、「生と共にあるもの」として受け入れる視点なのだと思います。

メキシコの市場で出合った「カクテル」=写真左。トマトベースのスープに海鮮が入っていて、世界一周の中でもダントツにおいしかった
メキシコでも沖縄でも、人は皆、先祖と共に生きています。死を恐れるのではなく、受け入れ、共に笑う。そこにあるのは、生きることを祝福する温かな文化です。あなたにとって「大切な人と過ごす時間」は、どんな色や音で心に残っていますか?

旅する沖縄人さん
インスタグラム
@okinawan_travel
1977年沖縄生まれ。教員を経て独立。2023年5月から世界一周。インスタグラムで情報を発信。「夢をあきらめない40代からの世界一周のすすめ」、「EXPLORE the World 世界一周の歩き方」メキシコ編、キューバ編を電子書籍、ペーパーバックで出版
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1992号 2025年10月16日紙面掲載」
メキシコ「死者の日」と旧盆 −生と死をつなぐ祭り−

世界遺産に登録されている美しい都市グアナファト。毎年11月1日と2日は「死者の日」が行われる
366日かけて世界一周をした「旅する沖縄人」さんの新連載がスタート! 21カ国を巡ったその目に映るのは、色とりどりの人、街、文化。沖縄人が見た世界の魅力をたっぷりお伝えします。
世界一周の最初の目的地に選んだのはメキシコでした。ちょうど「死者の日」(11月1日、2日)が近づく時期で、街の広場や市場は色とりどりの骸骨の飾りやマリーゴールドの花でいっぱい。人々は故人を悼むというよりも、一緒に食べ、歌い、笑う準備に大忙しです。その明るさに触れた瞬間、私はふと沖縄の旧盆を思い出しました。
沖縄の旧盆もまた、先祖を迎え、家族や親族が集まって3日間をにぎやかに過ごします。最初のウンケーでご先祖を迎え、中日には親族や友人が集い、最終日のウークイではにぎやかに送り出す。夜になれば三線の音色とエイサーの太鼓が町中に響き渡り、先祖とともに踊り明かす―。死を悲しむよりも「いま共に生きている喜び」を分かち合う祭りです。
メキシコシティの市場で見かけたカラフルな砂糖菓子のドクロは、まるで「死さえも笑い飛ばす」ような陽気さを放っていました。それは沖縄の旧盆で出される重箱料理や泡盛の楽しさにも通じます。食卓を囲むことで、先祖と子孫、亡き人と生きる人との距離が自然と近づき、境界がやわらかくほどけていくように感じられるのです。

登ガイコツメイクや仮装をして、パレードに参加する人々

街中に骸骨のオブジェやマリーゴールドが飾られる
先祖と共に生きる
メキシコの中央部に位置するグアナファトの丘から見下ろすカラフルな家並みには、死者の日の灯(あか)りがともり、夜空には音楽と歌声が響いていました。その光景は、沖縄の夜道を練り歩くエイサーの行列とどこか重なります。太鼓の音が遠ざかっていくときの切なさは、メキシコで見たろうそくの炎が小さく揺れながら消えていく瞬間と同じでした。ちなみに、このグアナファトやオアハカは、映画「リメンバー・ミー」の舞台となった街でもあり、作品の世界そのままに〝死者の日〟のスピリットが息づいていました。
さらに南のサンクリストバル・デ・ラス・カサスでは、墓地に集まった家族が花びらで墓を彩り、ろうそくを灯しながら故人と過ごしていました。そこに漂っていたのは悲しみではなく、再会を喜ぶ温かな空気。まるでウークイの夜に、親族総出で先祖を見送る沖縄の旧盆のようでした。両者に共通しているのは、死を「終わり」ととらえず、「生と共にあるもの」として受け入れる視点なのだと思います。

メキシコの市場で出合った「カクテル」=写真左。トマトベースのスープに海鮮が入っていて、世界一周の中でもダントツにおいしかった
メキシコでも沖縄でも、人は皆、先祖と共に生きています。死を恐れるのではなく、受け入れ、共に笑う。そこにあるのは、生きることを祝福する温かな文化です。あなたにとって「大切な人と過ごす時間」は、どんな色や音で心に残っていますか?

旅する沖縄人さん
インスタグラム
@okinawan_travel
1977年沖縄生まれ。教員を経て独立。2023年5月から世界一周。インスタグラムで情報を発信。「夢をあきらめない40代からの世界一周のすすめ」、「EXPLORE the World 世界一周の歩き方」メキシコ編、キューバ編を電子書籍、ペーパーバックで出版
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1992号 2025年10月16日紙面掲載」