特集
2018年1月5日更新
ミラクル満載|岡田流「キッチンMAGIC」
京都生まれの岡田有里さんはキッチンを「お台所」と呼ぶ。自宅で料理教室を主宰したり、ファイナンシャルプランナーとして相談者が来宅する機会も多い。設計段階から細部にこだわり、オーダーメイドで作り上げた。デザインは(有)モブ専務取締役でインテリアプランナーの照屋涼子さん。こだわりのキッチンを作りたいと考える岡田さんと、プロの視点から理想の台所を実現した照屋さん。二人の思いが詰まった「お台所」を拝見した。
お台所 拝見
プロの技でこだわり実現
岡田さん(右)が照屋さんにプランニングを依頼した決め手は「私の思いを受け止めてくれたから」。2007年から打ち合わせを始め、途中、岡田さんの出産をはさんで引き渡しが11年。今でも照屋さんが保管しているのは、岡田さんから送られてきた手書きのファクス。10帖ほどのキッチンには皿の枚数、高さなど、細かい希望が書いてある。「思いの詰まったファクスは、心の準備をしてから見た。アイランド部分の模型を原寸で造ったのは、記憶に残る限りではここだけ」と照屋さん。
岡田さんは「私が知らない部分をプロの立場から情報提供してくれた。話の早さやきめ細やかな対応がとても良かった」と振り返る。竣工後、主宰する料理教室に照屋さんら建築に携わった関係者を招き、実際にお菓子作りを体験してもらったという。「使ってみないと分からない点があると思ったから。ライトの光で生クリームが泡立たず、ライトの位置を変更してもらった」と話す。
竣工当時から料理教室の回数や来客の数、子どもの成長など、暮らし方も変化。照屋さんは「オーダーキッチンは使い続けながら、その時の暮らしに合った形に変えるのが私たちの仕事」と話し、今後も二人の共同作業は続く。
ワンアクションで無駄なく
▲白を基調にして、床の色は落ち着いた黒。「小麦粉や砂糖などの粉が見えやすいので掃除も楽」になる。
▲竣工時の美しさも変わらない。
現在の岡田さんのキッチン。普段から物を出さずにスッキリとしている。竣工時(右)と変わったのは冷蔵庫などの家電が入ったことぐらい
写真左/グラスの収納は上の棚に。子どもの手が届かないように。扉は岡田さんの身長や腕の長さに合わせて開く角度を調整。写真中央/アイランドキッチンに開閉可能なデスクを付けた。1人で操作できるよう専用金具をドイツから取り寄せた。写真右/茶器や茶たく、茶こし、ライターなどが入った引き出し。一見すると統一感が感じられないが、「お茶を入れたいと思ったら、ここを開けるだけの「ワンアクション」で無駄な動きがなくなる。
写真左/久しぶりに岡田さん宅を訪ねた照屋さん。「ステンレスの使い込まれた感じがいい」と触れる。写真右/鍋を入れる部分は鍋底の色が付きにくいように白ではなく紫。引き出しは鍋や食器の高さに合わせて2段構造や3段にした内引き出しスタイル。
たった2品がオシャレにアレンジ
急な来客で右往左往しない方法として、岡田さんが実践しているのがさまざまなアレンジ法。作り置きの材料で、器などを変えておしゃれに変身させる。
今回、紹介するのは市販されている菓子用の動物性生クリームを泡立てるだけ。冷蔵庫で3~4日程度は保存できる上に、動物性で脂肪が多い分、溶けることがない。
生クリームをベースに手作りのラズベリージャムと市販のマロンクリームを使った2種類を用意。手作りジャムは冷凍ラズベリー100gに砂糖35gを混ぜて冷蔵庫に一晩置き、翌日、5分程度煮込む簡単クッキング。トッピングのクッキーは「人数分ない」時の隠し技で1枚を粗く砕く。「シンプルな料理でも、見た目がかわいいとメリハリのあるおもてなしになる」という。
器を変えるとさらに変身。色違いのガラスの皿や、はやりのナチュラルモダンな木皿、白い皿などで異なる雰囲気に。白く細長い皿は2枚使いで、皿の下に別の皿などを置いて乗せるとスタイリッシュになる。「そこに小皿を並べるだけでおしゃれ度がアップする」とアドバイス。
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会話が弾む器ぞろえ
「器」のそろえ方にも岡田流のこだわりがある。リーズナブルなもの、ちょっと値段が高いもの。この2種類があると便利。「英語では『アイスブレーカー』と言って場を和ませるための時間があるが、器にちょっとこだわるとその話で盛り上がる」と岡田さんは話す。
12枚の小皿(上)は季節感たっぷり。「値段が張って、季節の行事でしか使わなくても、季節感を出すことで心地よいおもてなしになる」と話す。ガラスの器は数百円で購入。「小皿におかきを入れたり、ピンクの器にチョコを入れてみるだけで話しが弾む。いつ使うんだろうと思う皿でも、その遊び心をおもてなしにして」という。
建築家の朝ごはん
器は金城さんの姉で陶芸作家の有美子さんの作品がほとんど。温かみのある作風で、優しい感触が人気だ
一級建築士の金城司さんはフェイスブックで手作りの朝ごはんを発信している。金城さんにとって朝食は一日の活力。「しっかり食べてモチベーションを上げ、夜は酒を飲みます」と笑う。時には家飲みバージョンも紹介。「いつも楽しみにしているよ」とか「いつか食べてみたい」という読者からの言葉を励みにしているようだ。
数ある料理の中から個性的な4品を紹介。右下の写真は丼物。「男の料理って感じが好き。作ってほしい」と岡田さん一押しのメニューだ。ユニークなのは左下の主食がタコ焼き。「朝からタコパ―(タコ焼きパーティー)?」と岡田さんも驚きのアイデア。おにぎりやパンと、バラエティーに富んだメニューで、お弁当も手作りする。
爽やかな笑顔で料理が似合う「建築家の朝ごはん」を参考にしてみては?
ファッション感覚で
岡田さんの器へのもう一つのこだわりは「ファッションと同じ感覚で集める」こと。年齢や状況によって自分の好きな器や自分が作る料理に合う器、憧れの器、ブームなどもあるという。食器棚を開けて、器を眺めながら「どんな料理にしようか」「テーブルセッティングはどうしようか」と考える岡田さん(写真)。
現在は器の入れ替え中。空いているスペースを確保し、「急な来客でテーブルの上に物がある場合は、空いているスペースに片づけるだけで見た目のきれいさも保てる」とアドバイス。秘密の場所を作ることもすっきり収納の秘けつなのだ。
対談
一級建築士の金城司さんと料理研究家の岡田有里さん
「新しい年に台所から幸せ広げる」
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1670号特別号・2018年1月5日紙面から掲載