彩職賢美
2015年9月10日更新
[彩職賢美]D1ドライバーの笠原弓枝さん|「好き」を追求し ドリフトに情熱
車を滑らせる技術を競うドリフト。県外のサーキット場で全国大会が開かれ、車好きを中心に人気だ。そのドリフト競技で県内女性初「D1(ドリフト)ドライバー」として認定され、全国大会に出場したのが笠原弓枝さん(29)。腎臓機能障害というハンデを抱えつつ「自分の好きなことを追求したい」と、情熱を燃やしている。
障害と向き合いD1選手へ
D1ドライバー
うるま市役所 嘱託職員
笠原弓枝さん
自分の思い通りに走行できたときの爽快感は格別」と笑う「D1ドライバー」の笠原弓枝さん。
「D1ドライバー」とは、車輪を滑らせながら、コーナーを曲がるドリフト走行の迫力などを競う競技に参加できる資格を得たドライバーのこと。運転技術や地方大会の実績、交通ルールなど運転を熟知した者に与えられるライセンスだ。
笠原さんは5年前から県内外の大会に出場。経験と実績を積み重ね、ことし8月に奈良県で開かれたD1ストリートリーガル「レディースリーグ」で県内女性初の「D1ドライバー」として全国デビューを果たした。
ドリフトに興味を持ったのは、運転免許取得後の18歳。名護サーキット場でドリフトを見て、「カッコイイ」と思ったのがきっかけ。その後、走行会に参加し、「本格的に学びたい」と現在の「チームカーティス」に入った。
チーム所属後、最初に出た大会の初心者部門で優勝。それを機に技術を高め、県大会では男性相手に上位入賞するほどの実力をつけた。チームメンバーは「運転技術を学ぼうという姿勢など、車に対するストイックさには驚かされます」と評価する。
名護サーキット場やゆかり牧場など、練習場だったサーキット場が無くなった現在。「県外の大会に参加し練習時間を有効活用したり、DVDを見て勉強しています」と厳しい練習環境でも工夫を凝らしている。
一方で、チームは「公道からサーキットへ」をテーマに暴走行為の撲滅を目指し、うるま署と嘉手納署の職員と連携して定期的に「走行会及び安全運転講習会」を実施。笠原さんは、講習会の資料作りや走行会の運転を任されるなど、安全運転の啓発の支援も行っている。
ハンドルを握る笠原さん。ドリフトは、曲がっていく方向とは逆にハンドルを切り、バランスを取って車をコントロールする高度な技術が必要になる
「運転している時は嫌なことを忘れられ、ストレス発散になっています」と、明るく受け答えする笠原さん。実は、中学生のころから腎臓機能障害を抱えている。「人工透析を受けながら、日々の業務やドライバーとして活動しています」と告白。平日は、うるま市役所で嘱託職員として働き、その内の3日は業務終了後に約4時間の人工透析を受けている。
「競技は常に危険と隣り合わせなのはもちろんですが、練習をはじめ仕事や透析と時間的にハードな面もあり、周りの反対もありました。しかし、好きなことはやめたくなかった」ときっぱり。これまで体の心配をしていた両親も最近では、「頑張ってよ!」と励ましてくれるそう。「好きなことを続けられるのは親はもちろん、チームやスポンサーなどサポートしてくれる人たちのおかげ」と感謝している。
「今後は全国の実力者たちに追いつけるよう、さらに技術を磨いていきたい。そして、体の動くうちはモータースポーツを続けたい」とニッコリ。好きなことを追求する笠原さん。車への情熱は常にトップギアだ。
笠原さんのドリフトの光景=チームカーティス提供
笠原さんのハッピーの種
Q.車の運転のほかに趣味は?
ネットサーフィンが趣味かも。試合のため月1回のペースで県外遠征があります。チームの誰かが試合に出場する場合は、撮影や車の補整などそれぞれに役割があり、メンバーみんなで動かなくてはいけないのです。
そのため、航空チケットやホテル、私の人工透析のための病院予約と、チームから遠征の手配を任されています。普段から格安チケットを探すことが日課になっていますね。
Q.D1ドライバーとして意識していることは?
私に期待していただいているスポンサーの看板もあり、プレッシャーはありますが、常に「上位を目指したい」という気持ちで頑張っています。
「D1ドライバー」として初参戦した8月の大会では女性とはいえ、男性とも肩を並べるほどの実力者ばかりが参加していて、緊張しました。成績は、8人中、7位と振るわなかったのですが、実力者たちと一緒に戦うことができ、うれしかったです。コーナリングやブレーキのタイミングなど、いろいろと勉強になり、いい刺激になりました。
PROFILE
笠原弓枝(かさはら・ゆみえ)1986年生まれ、うるま市出身。2004年、運転免許取得後、名護サーキット場でドリフトに出合う。2007年、走行会に参加するようになり、ドリフトの技術を学ぶ。2010年、現在のチーム・カーティスに所属する。その後、県内外の試合に参加し、実績を積みあげ。ことし8月、県内女性初の「D1ドライバー」として全国大会に出場を果たした。
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撮影/高野生優(フォトアートたかの)・編集/安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1184>
第1469号 2015年9月10日掲載
この記事のキュレーター
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- 安里則哉
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編集者
日々、課題ばかりですが、取材ではできる限り、対象者の人間性が引き出せたらと思い、仕事に努めています。食べることが大好き。そのためダイエットにも力を入れたところですが、いまだ実現せず(笑)。