彩職賢美
2016年1月21日更新
[彩職賢美]井口千秋税理士事務所・井口行政書士事務所代表の井口千秋さん|寄り添う心で税のアドバイス
税理士の井口千秋さん(40)は企業の税務コンサルティング、会計業務といった本来の仕事に加え、障がい者の雇用訓練など社会貢献にも力を注ぐ。「私は生活保護を受けて育った。だからこそ税金の意義や適正に使う大切さを伝えたい」と経験を仕事に生かす。さらに、税理士を身近に感じてもらうため、相手の心に寄り添い、税務のプロとして最善策を提案し続ける。
経験通し、税金の大切さ訴え
井口千秋税理士事務所
井口行政書士事務所代表
井口千秋さん
事務所に入るとおしゃれなバーのようなカウンターがある。デスクや法令関係書が並ぶ一般的な雰囲気はない。「税理士事務所は敷居が高いと思っている方が多い。そんなイメージを払しょくし、気軽に立ち寄れる場所にしたいから」と、一見、税理士事務所らしくないスタイルにした。
現在、確定申告シーズンで、事務所は慌しさを増す。「納税は勤労、教育と並ぶ国民の三大義務のひとつ。しっかりと内容を理解した上で、納得して払うことが大切。税金は収入のある分に応じてしか取られないのだから」。きっぱりとした口調の中に、長年のキャリアに裏打ちされた説得力が伝わる。
とはいえ、税金を「取られる」との感覚や、「少しでも納める額を減らしたい」といった声があるのも事実。企業経営者からの相談では返済計画のないまま多額の融資を受け、経営状況が悪化する場合もあるという。
「企業は『法人格』を持ち、人と同じ扱いになる。企業を作り、運営するということは自分の子どもができ、子育てすることと一緒。子どもを危険な目にあわせないためにも、そんな状況を回避するよう強く話す」という。「嘘や間違ったことが大嫌い。ダメなものはダメだとちゃんと伝える」との揺るぎない姿勢が依頼者から信頼を集める。
スタッフミーティングでは経営者の立場からシビアな話も多いというが、オープンな性格から笑いを交えながら話す井口さん(左)
税に対する強い思いの背景には足に障がいのある母、弟と生活保護、障がい者年金を受けて育ったという経験がある。「高校から大学、大学院までは奨学金と授業料免除を活用した。税金を使って来たからこそ、自分も素直に納税できる。あの体験がなかったら税理士にならなかった」と振り返る。「当時は貧しかったけれど悲壮感はなく、母から強く生きていく知恵を教わった」と語り、今は母親と暮らす。
実際に税理士を目指したのは高校時代にふと目にした女性誌がきっかけ。「自宅で稼げる職業」として挙げられ、「家にいたがりで、面倒くさがり屋だから自分にぴったり」と、目標を定め一直線。26歳で税理士資格を取得、28歳で起業した。「自分の家を建てる」との人生設計も綿密だ。学生時代から貯金を始め、起業に合わせて新築。その後離婚し、新たに現在の自社ビルで再スタートを切った。
社員は15人。「私は楽しく仕事をしたいし、自分の時間も楽しみたい。社員には休みに社用の携帯を会社に置くように勧めている」とプライベートな時間を大切にするようアドバイスする。「社員の条件は人と話すことが大好きで、コミュニケーションを取れること」とも。さり気ない会話の中から税金の話題が出る場合もあるからだ。自分の職業を生かした社会貢献活動として、障がい者の雇用訓練なども8年続けている。
働く根底にあるのは「税理士の仕事が好きだから」「人と出会えて楽しいから」との思い。「社員、仕事を依頼してくれるみんなが幸せじゃないと、私も幸せじゃない」。飾らない人柄と、真っすぐなまなざしで語る姿からは、不惑の年40歳の力強さが伝わる。
井口さんのハッピーの種
Q.事務所のトレードマークは象なんですね。実は自分で描いたんです。事務所を立ち上げるとき、大好きな犬をトレードマークとして描こうと頑張ったら、夜中に完成したのがなぜか象(笑)。直後に知り合ったインドの方から、象は商売の神様だと聞いたので、そのまま使っています。事務所内のいたるところに象の置物などがありますよ。
Q.アフター5の楽しみ方は?
お酒が大好きです。平日のほとんどが会合で埋まっていますが、時間をみつけてお酒を楽しんでいます。逆に週末は日程があまり入らないので、ジムに通って汗を流し、ごほうびにお酒を飲んじゃいますね。休暇になると、海外旅行に行くのが楽しみのひとつ。いろんな国にいきますが、西アジアから東南アジアが大好きです。年に数回は海外旅行して、リフレッシュしています。
<問い合わせ>
井口千秋税理士事務所・井口行政書士事務所
沖縄県那覇市首里汀良町1-37(地図)
098-886-8548
http://ymc.bz/
営業時間
8時30分~17時30分(土日・祝日休み)
PROFILE
井口千秋(いぐち・ちあき)1975年、中城村生まれ。西原東中、那覇西高校、琉球大学、同大学院で電子商取引法を学び、卒業後、銀行、会計事務所等で勤務。沖縄国際大学大学院で環境会計を専攻し、税理士資格を取得する。2004年に独立し、税理士事務所を立ち上げる。現在、大学での非常勤講師や沖縄税理士会国際委員会委員などを務める。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明・編集/高江洲千里
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1201>
第1488号 2016年1月21日掲載
この記事のキュレーター
- キュレーター
- ちぃちゃん
これまでに書いた記事:84
元企画・編集プランナー
身の回りの「はてな?」や「なるほど!」を追い求めながら、好奇心のアンテナを張り巡らせて日々、取材中。何でもやるからには「徹底的」に。そのための息抜きも大切に。メリハリのある暮らしと、メリハリのある仕事のこなし方ができるよう心がけています。